ウィトゲンシュタイン的日々

日常生活での出来事、登山・本などについての雑感。

『骨は語る 徳川将軍・大名家の人びと』 鈴木尚 ~日本人の小進化を見る~

2008-07-15 21:36:19 | 

6月9日、寛永寺谷中徳川家近世墓所調査団の中間報告が出たことをきっかけに
1957年に行われた、増上寺徳川将軍墓改葬の後
調査団の一員が本を出していたことを思い出し
早速ネットで探して購入した。
それが、『骨は語る 徳川将軍・大名家の人びと』である。
平易とはいえ、考古学と歴史学と解剖学と人類学を合わせたような内容であるため
のっけから頭蓋骨のオンパレード。
徐々に徳川将軍家の墓地発掘の模様と、発掘された遺体写真や頭蓋骨
個体として特徴があった人物の体の器官などの写真
そして、頭蓋骨を基にして復元された頭部や横顔の線画が掲載されている。
理科室にあった人体模型を「不気味~」と思っている方
テレビに映し出される手術映像を直視できない方
たとえ学術目的にせよ墓を暴くなんてとんでもないと思っている方には
あまりお奨めできない本であるが。
ただし、ぴすけと一緒に「人体の不思議展」に行き
人体標本の輪切りをしげしげと眺めたり、標本に触れてみたりした方は
興味を持って読んでいただけること、間違いなしだ。
ましてやこの本の登場人物は、徳川秀忠・家継・家宣・家重・家慶・家茂といった
江戸幕府の将軍を始め
将軍御台所(「おだいどころ」でない。「みだいどころ」と読み、征夷大将軍の正妻の呼称)
将軍生母や側室、戦国大名として名の知れた伊達政宗など
いわゆる歴史上の「有名人物」である。
遺体の状況から、残された肖像画がかなり真実を伝えていたことや
史料に残されていない更なる真実が浮かび上がる。
御台所や将軍生母と比べ、側室の埋葬の仕方の隔たりに愕然とする。
武士といえども、江戸時代後期になれば貴族化し
現代人もびっくりするほどの骨格的な進化(退化)を遂げた将軍家や大名たち。
公家から将軍家に嫁いできた女性たちも、現代女性が驚くほどの美貌の持ち主だ。
庶民とは隔絶した場所でかなりの速度で進んでいた日本人の小進化を
写真で辿れるところは、本書の醍醐味である。


そもそもぴすけは幼いとき、旧東京国立博物館の一角にあった
ミイラと首狩り族が狩った首級の展示に魅せられ
親におねだりしては「それを」見学することを目的に
たびたび国立博物館に足を運んだ。
いつか機会があったら、自分でミイラを作ってみようと思い描きながら…
さすがにミイラを作る機会にも恵まれず
長じてからは、死体に何か人工的な操作をすることは犯罪だとわかったので
その情熱を学問で生かそうと思い、歴史の道…しかも考古学へと進路を決めた。
ところが、不思議なもので、いろいろなことを学ぶうち進路は変わり
歴史地理学、しかも山岳信仰を専攻。
それでも、やはり「骨フェチ」は衰えていなかった。


第14代将軍徳川家茂の頭蓋骨についたままの艶やかな髷
第12代将軍徳川家慶の側室・殊妙院の屍臘化した左足
第13代将軍徳川家定の最初の御台所・天親院の均整の取れた頭蓋骨は
何度見ても溜息が出るほど美しい。



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