ウィトゲンシュタイン的日々

日常生活での出来事、登山・本などについての雑感。

荻野寿美子『私がタバコをやめた理由(ワケ) ―タバコ百害問答―』

2016-09-09 08:11:00 | 

長引く体調不良のなか、細々と本の出版に関する作業は続けていた。
心身症と診断されて、医師から負担を軽くするように言われ
本の出版と10月の任務(?)を残し、ほかの活動は全て皆さんのご厚意に甘えて
お休みさせてもらうことにした。
そしてやっと、あけび書房から『私がタバコをやめた理由(ワケ) ―タバコ百害問答―』を
出版する運びとなり、間もなく我が家に出来たてほやほやの本が届くことになっている。
発売は9月23日(金)、全国の大手書店・ネット書店にて
Amazonでは、予約注文を受付中である。
あけび書房のホームページにも掲載され、「はじめに」と「おわりに」を読むことができる。
本を書いた経緯や本の内容については、ブログ「喫煙を考える」でどうぞ。


こちらでは、 この本を書くにあたって直面した、さまざまな出来事を思い返してみたい。
本書は、10名の元喫煙者の方々のインタビューを軸に
ぴすけと元喫煙者のダーリンがキーワードを拾い上げて、対話形式で話を進める内容である。
ぴすけは生まれてこの方、人のタバコの煙を吸わされたことはあるが
自分でタバコを吸ったことがない非喫煙者。
親は選べないので、父が喫煙者だったことは不幸なことだが
友達は選べるので、友達は皆非喫煙者。
さあ、元喫煙者の方に話を聞こうという段になって、周りに元喫煙者が少ないことに気づく。
そこで、元同僚や知人、知人の知人、親戚などのつてを頼ってなんとか10人の方にお願いし
その10人の方が快くインタビューを引き受けてくださって、本書を書くことができた。
10人の元喫煙者の皆さん、ありがとうございました
10人の方々のお話はとても面白く、最初はお話をなるべく載せたい、削りたくない、と思っていたし
ぴすけとダーリンの問答部分も、盛りだくさんと言えば聞こえがいいが、書きたいことを書いていたので
全てを書き上げた時には、膨大な量になってしまった。
あけび書房からのアドバイスで、どこをどう削り、何を残し、かつ主張すべきことは主張する
削った後でもきちんと読者に理解してもらえるようにする作業は、大変いい勉強になった。


ただ、最大の難関を迎えてしまったのが5月下旬。
それは、私とダーリンの対話で、どちらがどちらか区別がつきにくいので
ぴすけの話し言葉を、女性言葉に変えてはどうかと、あけび書房から注文がついた時だった。
もちろん、本文中には

ダーリン えーっ!じゃあそれは嘘だったの?
ぴすけ そうなんだよ。今はそれが科学的・医学的に証明されてきているんだね。

というように、発言者が冒頭に記されており、どちらの発言かわかるようにはなっている。
ただ、質問や説明が長文になると、二人の話し言葉に性差が感じられないどころか
ダーリンの発言がむしろかわいらしく、ぴすけの発言に女性性が皆無ということで
どちらが発言しているかがわかりにくく、読者が混乱するのではないかということらしい。
出版社としては、読者のことを第一に考えての注文であり、言われていることもわかる。
例えば、芝居や洋画の吹き替えなどは、顕著に女性には女性言葉が
男性には男性言葉が割り当てられる傾向にあり、それがまた一つの魅力にもなっている。

ダーリン なんだって!じゃあそれは嘘だったっていうのか?
ぴすけ そうなの。今はそれが科学的・医学的に証明されてきているのよ。

てな具合である。
これがとてつもなく難しかった。
言われていることもわかるし、どうすりゃいいのかもわかっている。
でも、いざ書き換えようとすると、手は震えるわ、体が拒絶反応を起こすわで結局断念。
そりゃそうだ。
ぴすけは小さい時から自分に女性性を持たせるような生き方をしてこなかったし
ましてや話し言葉に女らしさを感じさせるような話し方はしてこなかったのだから。
女を装えと言われても、遊びでならできるのかもしれないが
自分の著作で自分が話す言葉を、女が話しているようには書けないのである。
実際にぴすけの発言を女言葉に書き換えたとしよう。
ぴすけを知っている人が読んだら、「誰?これ。別人じゃん」であり
ぴすけを知らない人が読んで、とても女らしい人だと思って
後々に会うことでもあったら「何?これ。別人じゃん」となること、間違いないのである。
あけび書房には事情を話し、女性言葉への書き換えが出版の条件なら
今回はあきらめるということまで伝えたのだった。
あけび書房もこれには驚いたらしく、そこまで無理強いはできないということになり
ダーリンはそのままかわいらしく、ぴすけは普段のままで押し通すことになった。
見かけが女性でも、身体的機能が女性でも、中身が女性であるとは限らないのだ。
この女言葉書き換え事件で、ぴすけは自分が使う言葉にたいして
これほどまでに譲れないものがあることを思い知ったし
心身の不調の一因が、身体的性別と中身の不一致にあるのかもしれないとも思ったのだった。


そんなこんなでなんとか出版までこぎつけた『私がタバコをやめた理由(ワケ) ―タバコ百害問答―』。
この記事で裏話を仕入れた皆さんは、きっと面白く読めると思うので、どうかご一読ください。



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14 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
別人にならなくて (ぽぴ)
2016-09-14 07:40:07
良かったですね。
せっかく、命すり減らす思いで書いてる本です。「別人じゃん」なんてもったいない、身体が拒否したんでしょうね。書くときだからこそ切り分けて別人になりきる、という書き方もあると思うけれど、ぴすけさんの場合は、自分の言葉で自分として書きたいわけで。しかもリアルな掛け合いトーク本なら、なおさらですね。

ぴすけさんが雄々しいのも地、ダーリンが可愛いのも地、それがありのままなんだからそれでいいと思います。読者が冒頭混乱しようが、置いてけぼりになろうが構いません。
それにすぐ慣れますよ。可愛らしい方がダーリン、でしょ?(^q^)
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家での実態が明るみに (ぴすけ)
2016-09-14 22:14:08
ぽぴさん、そうなんです、かわいい方がダーリンです。
私はどこに行っても基本的に変わらないのですが、ダーリンはおうちモードと仕事モードが切り替わります。
しかもその変化たるや、180度違うパターンに。
この本を読んで、仕事モードのダーリンしか知らない人は、それこそ「誰?これ。別人じゃん」となります

『タバコに奪われた命』の時は、母に「これじゃあ家のことが全部よそ様にわかってしまうじゃないの」と言われ、苦笑せざるを得ませんでしたが、『私がタバコをやめた理由』も、結局は赤裸々な夫婦の会話の暴露本
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なるほどなるほど (芝刈り爺さん)
2016-09-17 10:29:12
女性言葉、、、たしかにねえ、、、貴様テメェーーなんて言葉は、女性ならずとも聞きたくはないし、いい女子高生が使って、教室で床にあぐらかいてるとね、、、もんくいうわたしですが。
この本の対話、お二人のイメージもあるからでしょうか、また、お一人は、アドバイサー、、という感じですから、訂正されなくともいいし、訂正なしでよかったと思います。まあどっちが男で女でも変わらないしね、、煙草の害は。
ということで私も本はアマゾンで注文しました。アマゾン以外はなんか、まだ取り扱っていない、、とかいってきたので。巨大企業アマゾンは、、ちょっと、苦手ですが、その割によく使ってしまうのです。

別件ですが、体調いかがですか、何のコメントもなく失礼しました。私自身が強烈、、というかしつこい腰痛に5月頃から悩み始め、山にも行けず、初老のウツ状態でした(です、、かな)。大好きな山だっただけにですね。
まあ整体などに通って、ぼちぼちにはなってきています。何よりこうして言葉になり始めてますからね。言葉は偉大です、、、徐々に復活しますね。お互いに自分を大切にして時には無理もしましょう!!!
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山に行けなくて (ぴすけ)
2016-09-18 11:09:56
芝刈り爺さん、山に行けないのは欲求不満が溜まりますね。
腰がお悪いのかなというのは、ダーリンがFacebookで芝刈り爺さんの記事が更新されなくて心配していたところに、最近どなたかへのコメントに「腰が悪い」ということを書かれていて知りました。
腰が痛いのも大変ですが、それに伴い気力が萎えるのもつらいですよね。
私の母も3月に腰痛が出て、一時は食事もいい加減になってしまうくらい、気力が湧かない時がありました。
どうかお大事になさってください。

私も6月初めに安達太良に行って以来、全然山に行っていません。
というか、体力だけでなく気力も低下してしまったため、山に行こうという気持ちにすらなりませんでした。
やっとここにきて少し復調。
お天気次第ですが、来週あたり吾妻でのんびりして来ようと思っています

新刊は、体調不良もあって、細々とというか、遅々として進まない時もありましたが、やっと日の目を見ました。
話し言葉も、吾妻小舎で熊爺に「ぴーちゃんは女の姿をしているから女だと思っていたけれど、話す言葉は女じゃないし、考えていることは男らしい。私は一緒にいた7か月間、カルチャーショックの連続でした」と、小舎を下りる最後の日に言われたり、ほかにも何人かの方に「男らしい」と言われたことがありますが、気にしていませんでした。
今回、まざまざと思い知らされた、というか、自覚に至りました。
なにはともあれ本が出て、肩の荷が一つおりましたが、肩の荷は10月までいくつかまだ乗ったままなんです。
これが厄介で…
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一山越えてまた、、 (芝刈り爺さん)
2016-09-18 17:42:02
10月もなんかあるんですね。講演会みたいなものでしょうかね。まあなんとか乗り切って、、11月の晩秋の紅葉狩りでも楽しみにして、日々をしのいでいきましょうね。
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日本禁煙学会学術総会 (ぴすけ)
2016-09-18 20:58:40
芝刈り爺さん、日本禁煙学会の学術総会が10月29日・30日で日本橋で開催され、そこでいくつかお役を仰せつかっています。
それがまさに「仰せつかって」いる状態そのもので、自発的な行動ではないため、いろいろと荷が重い状態が続いています。
私も、11月になったら、「バンバン山に行くぞ~」「仏像観て歩きするぞ~」と、今からそれだけを楽しみに、なんとか乗り切ろうと思っています。
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面白い (芝刈り爺さん)
2016-09-22 17:52:47
と言っては失礼ですが、今日アマゾンから本が来て読み始めました。お二人の会話がいいですね。ボケとツッコミのようで。まだ読み始めですが、また感想を書きます。図書館にもリクエストして、見ようと思います。タバコ愛好家は頑固だから、、、読むといいけれど。元愛好家が、納得納得と読んでくれるだけでもいいですよね。
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面白いだなんて (ぴすけ)
2016-09-22 20:37:52
芝刈り爺さん、面白いだなんて、私にとっては最大級の賛辞です。
ありがとうございます。

私は、見放しているわけではありませんが、喫煙者にはあまり期待できないと思っていて、むしろ8割の非喫煙者にいろいろと知ってほしいと思っています。
選挙の時の無党派層ではありませんが、非喫煙者のなかにはタバコを自分とは関係のないことと思っていたり、「何もそんなに目くじらを立てなくても」と思っている人が一定数いるように思います。
そうした人がタバコの真実を知って、タバコが抱える問題に目覚めたら、禁煙はかなり推進されることでしょう。
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ほんとほんと (芝刈り爺さん)
2016-09-23 08:36:07
喫煙者は、確信犯。でも大好きなソクラテス先生に言わせれば、行動できないことはわかっていないこと、、わかっていれば、行動できる(やめられる)、ですよね。現にみんな、、、いざとなると、命を思って、タバコを辞めるんですから。だから私なんぞ、街で煙草の煙を嗅ぐと、、イラッとします。そうですね、非喫煙者の、非喫煙に対する思いを、強めるためには絶好の一冊です。今日の授業は嫌煙権。参考図書で紹介します。偏向教育とは言われないでしょう。いくら最近の歪んだ政権でもです。
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わかっていると言いながら (ぴすけ)
2016-09-23 18:09:34
芝刈り爺さん、よく喫煙者の方は、タバコについて「わかっているけれどやめられない」と言います。
でも、わかっているならやめられるはず。
自力が無理なら、今は禁煙外来に行くという方法もあります。
それでもやめないのは、やはりわかっていないのです。
わかっているはずのタバコ病遺族でさえ、わかっていない人もいて、過去にこんな記事を書いていますので、お時間のある時にご覧ください。

「わかっているならタバコをやめて」
http://blog.goo.ne.jp/kituenwokangaeru/e/1445947432587eed5fa74903b2ae4716?fm=entry_awc
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