ウィトゲンシュタイン的日々

日常生活での出来事、登山・本などについての雑感。

ラクダ山から一切経山へ ~復活したオールドルートを歩く~

2017-07-13 23:58:35 | 登山(東北南部)

このコースは、吾妻小舎オフィシャルブログ『吾妻山便り』
概略をご紹介したのだが、こちらはその饒舌版


6月25日(日)に、2013年にお世話になったAさんがいらして
ラクダ山コースのことで盛り上がり、26日(月)はお客様もいないので
管理人の高橋さんの許しが出て
Aさんがラクダ山コースを案内してくれることになった
ところが、高橋さん、「じゃあ、俺は家に帰るから」と言って
15時過ぎに私を一人留守番に残して、自宅へと帰って行った。

エエーッ
勝手知ったるとはいえ、一人で留守番ですか~

しかも、2013年の時は自分の車があったけれど、今回は電車で来ているし
平日にバスは運行されていない。
私のケイタイの通信会社は、吾妻小舎の場所では電波が不安定。
さて、なにかあったら、どうするよ
まあ、私が良いと言ったからそうなったのだが
雨がそぼ降る薄暗い日に、一人で小屋番をするのはけっこうすごいぞ。
もうこうなりゃ仕事仕事
高橋さんがいない間に、台所の掃除と調理用具の除菌・漂白や
個室の掃除や、物置にある寝具の整理や、本棚の整理もしてしまえ。
さすがに最も陽の長い季節とはいえ、雨のせいで18時ごろには暗くなり
ランタンをつけて晩ご飯を食べたら、することはないので20時に就寝


26日(月)は、天の恩恵かと言っても良いくらいの上天気だった。
8時25分、Aさんと吾妻小舎を出発。

10時40分、浄土平駐車場の公衆トイレ脇にある微温湯登山道へ。
涅槃坂のカーブに出たら、磐梯吾妻スカイラインをかもしか沢まで歩く。

9時20分、かもしか沢登山口から、沢を巻くようにして登る。
1時間前は雲一つない空だったのに、登り始めると下から霧が上がってきた。
それがぴすけにとっては、恐怖心が薄れる一助になり、良かったのかもしれない。
稜線に出るまで、滑りやすくザレたかなりの急傾斜で、落石の危険もある。
前日の雨が足場を留め易くしてくれていたものの、下りだったら一気にザーッと滑りそうだ。
恐々振り返ると、今来た道は霧の彼方、奈落へと落ち込んでいるようにさえ見える。

「大丈夫ですか、ぴすけさん。歩けそうですか?」
「はい。私は登りならどなんな場所でも登ります。
  でも、ここを戻ることは怖くてできないので、なんとしても登りますっ

歩いて感じた教訓1
下りが苦手な方は、一切経山からラクダ山経由でかもしか沢には下りないように。


Aさんがつけた赤いリボンを目印にルートをとりながら、9時37分、稜線に乗る。
ここから一つ瘤を越えて、2つめに見える瘤がラクダ山の山頂である。

眼下に伸びる磐梯吾妻スカイラインを眺めながら、暫し休憩。
稜線に出ても、瘤を越えて行くのでアップダウンの繰り返し。
ザレた急傾斜も相変わらずで、道幅は有るのでナイフリッジと言うほどではないが
片側がスッパリ切れ落ちていたり、両側が絶壁になっている箇所も通過する。
急斜面を登っている途中でAさんが

「ぴすけさん、そこで方向転換できますか?」
エッエエーッこ、こ、ここで右折するんですか?で、できませんっ

だらしないぴすけのために、Aさんは足場を作ってくれた。

歩いて感じた教訓その2
登りが得意でも、ルートが判然としない箇所や思いもよらぬ方向への進行があり
全くルートを知らないで入山するにはかなり高リスク。
このルートでの入山には、地元山岳会などに事前に相談し、情報収集を。


10時29分、ラクダ山山頂に到着。
霧が晴れていれば、ここからラクダ山の急斜面と
磐梯吾妻スカイラインの直線箇所が吾妻小富士の裾野に延びている様子が目の前に見えたはずだが
すべては霧の中で、怖がりのぴすけとしても、少々残念な気持ち。

ラクダ山山頂を越えて、さらにもう一つ先の瘤に、動物のような形の岩がある。
この岩の間にある穴からは、霧がなければ吾妻小富士が見えるのだ。
この岩、下から見ると…

矢印部分は下から見ても、穴が見える。
ここを拡大すると…

なんとなく、動物のような形の岩と、穴の位置がおわかりになるだろうか。

11時23分、第1の樹林帯を抜け、来た道を振り返る。

歩いて感じた教訓その3
ラクダ山コースは、一切経山に至るまで2箇所の樹林帯を通過する。
そこはクマの生息域で、複数での行動、クマ鈴の携行、クマよけスプレーの携行を。


11時42分、一瞬晴れた霧の間から、吾妻小富士の噴火口と浄土平が見えた。
第2の樹林帯を抜けて、傾斜が緩んだのと同時に、見慣れた一切経山山頂部の砂礫地が現れた。

ポン
ロープを跨いで出た場所は、一切経山山頂の一等三角点の前だった。
ちょうど12時。
Aさんが気を遣ってくださったおかげで、疲れも全くなく、安全に登ることができた。

ドーン
噴火警戒レベルが2になってから一切経山には登っていないので
3年ぶりに見る五色沼ということになる。
いや~、いつ見ても美しい
しかし、山頂は風が強く、水面にも波が立っている。

「ぴすけさん、風の吹きつけない、私の特等席にご案内しますよ」

Aさんの後についていくと、風の影響を受けないうえに
そこで昼寝かビバーク、いや、『岳』の三歩のように住まいにできそうな場所があるではないか。

「ここでお昼にしましょう」

Aさんはお湯を沸かして味噌汁を作ってくれた。
いつも友人と山に行く時は、ぴすけが味噌汁を用意しているので
この日は珍しくご馳走される立場になったわけだ。

「山で飲む味噌汁は格別ですね。私、味噌汁大好きなんです」
「私もいつも、山では味噌汁を作って飲んでいるんですよ」


昼にはすっかり霧も晴れて、雄大な景色を眺めながらのお昼は、とても楽しい時間だった。

「今日はね、晴れたら高橋さんもゆっくり上がって来るそうなので
  16時までに小舎に帰れば大丈夫ですから、ぐるっと姥ヶ原も1周して帰りましょう

疲れがないので、歩く気満々
もう、すっかりルンルン気分

この吾妻小富士の見え方は、酸ヶ平からのルートにはない景色。

鎌沼の向こうに見えるはずの磐梯山は、残念ながら雲の中。

チングルマの咲く姥ヶ原をぐるりと回り、姥神様にご挨拶をしてから浄土平を目指す。

沢沿いは気温が低いのだろう。
まだミネザクラが咲いていた。

蓬莱山の斜面を、浄土平に向けて下る。
吾妻小舎に帰ったのは、計ったかのように16時だった。

こちらがAさんが作ってくれた、この日の歩行記録。
ラクダ山~一切経山間のルートが国土地理院地図の点線と異なるのは
国土地理院地図のルートどおりに歩いた場合、急斜面のトラバースとなり
滑落の危険性がかなり高くなるので、Aさんが回避ルートを案内してくださった。
Aさんは、日本山岳会福島支部や吾妻山の会などとともに
失われかけたオールドルートのラクダ山コース復活にご尽力された方で
このルートを熟知されているため、ぴすけも安心して後をついていくだけだった。
Aさん、ご案内してくださり、ありがとうございました
とても楽しく、忘れられない1日となりました



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2 コメント

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Unknown (ちい)
2017-07-23 14:18:15
ぴすけさん、こんにちは。
先日吾妻小舎でお世話になった春日部のちいです!
ノーマルルートでしたが、一切経山から念願の魔女の瞳を見ることができ、感動でした。
こちらのコースも景色が素敵ですね!難しそうですが(;^_^A
また紅葉の時期に遊びに行きたいと思いま~す。
返信する
秋もまた素晴らしい (ぴすけ)
2017-07-26 16:58:43
ちいさん、ようこそ、当ブログへ。
先日は吾妻小舎でお話しできて、大変楽しい時間をいただきました。
ありがとうございました。

秋は、五色沼周辺の紅葉が浄土平が色づく時期よりずっと早いので、ビジターセンターのブログ等をチェックされると良いと思います。
紅葉は、日照だけでなく、雨量と風の影響も強く受けるので、台風の直撃がないと良いのですが…。
高橋さんも、皆さんのお越しをお待ちしていることと思います。
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