道草あつめ

日常思いついた由無し事を、気ままに拾い集めています。

映画「タイタニック」雑感

2010-08-09 23:06:06 | 趣味愛好
昨日、初めて映画「タイタニック」を見た。公開が1997年だから、世間の流行から13年遅れである。
そもそも当時の私には映画を見るという習慣がなかったのと、広告を見ただけでは単純なラブストーリーにしか思われず、そういったものには興味が無かった。

知人曰く、「プリ男はあの映画で主演を張ったがために、恋愛キャラクターのイメージが定着してしまって、以後だいぶ苦労した」と。
私が以前にディカプリオを見たのは、「ディパーテッド」という映画である。そこでの彼の演技は、潜入捜査官の葛藤を生々しく伝えて来るもので、内面の表現が実に優れている。それに較べると、確かに「タイタニック」のディカプリオは、少し平板な感じを受ける。

しかし、またその知人の曰く、「『タイタニック』は、とにかく映像が凄い。内装も凝っているし、CGも迫力がある。『スター・ウォーズ』と同じ理由で、見るべきだ」と。
なるほど、そういえば「スター・ウォーズ」もシリーズ中の一作しか見たことがないが、映像は確かに良かった。ストーリーを楽しむというよりは、映像にかけた手間を味わうべき映画というものは、確かに存在する。


と、このような理由で「タイタニック」を見てみたのだが、確かに映像は圧巻であった。
加えて、沈没を目前にした人々の描写が、なかなか優れている。必死に逃げ惑う乗客達、死後の幸いを説く牧師、誰も聴いていないのに演奏を続けるカルテット(「弾いている方が体が温まるさ」「夕食の時だって誰も我々の演奏を聴いていないだろう」という彼らのセリフは気が利いている)。
中でも、救命艇に群がる男達を押し止め、女子供を優先して救命艇に乗せようとする乗組員達については考えさせられる。四半世紀前のノルマントン号事件は例として不適切かもしれないが、少なくとも私が乗組員だったら、まず自分達のボートを確保するだろう。しかし、彼らは女子供を乗せ、そこに最低限の船員を乗船させた後は、自分たちは沈み行くタイタニック号に残った。貧富の別に拘らず、賄賂も受け取らず(受け取っても使い途が無かろう)、とにかく女子供を助けるという目的を設けて、それのみをルールとして行動した。
その目的自体の意味についてというよりも、極限状態で一つの規律を定め、それを全ての乗組員が共有・遵守し、尊厳を保ったということについて、深く考えさせられる。



ところで、映画の中ではほとんど触れられていなかったが、実際のタイタニック号沈没事件には、かなりの数の要因が絡んでいる。船内で火災が起きて船体が弱体化している状態で出航していたこと、見張り用双眼鏡を紛失した状態で航海を進めたこと、先行する船からの流氷群の警告を見過ごしていたこと。このうちの一つでも欠けていれば、これほどの大事故にはならなかったかもしれない。
また、そもそも救命艇の数が不十分であったこと、初航海のためか乗組員が未熟で救命艇の扱いに不手際があったこと、最も近くに停泊していた船舶の通信士が睡眠中で救援信号が届かなかったこと等、被害を拡大した要因も多くあった。
不沈船と雖も、人為ミスが連鎖すれば、大惨事となるのである。


では、当時同じく不沈船と呼ばれていた、姉妹船オリンピック号はどうだったのであろうか。聞くところによると、タイタニック号と同じ頃に、やはり事故を起こしているらしい。
そこで調べてみると、オリンピック号は、1911年に軍艦と衝突している。タイタニック号沈没の前年である。やはり危なっかしいな……と思ったのだが、客船なのに軍艦と衝突して沈まなかったというのは、相当頑丈なのではあるまいか。

更に調べてみると、このオリンピック号、処女航海で沈没したタイタニック号とは対照的で、1935年まで24年間、延べ500回もの大西洋横断を行ったという長寿ぶりである。
しかも、第一次大戦中には、なんと、Uボートを一隻沈めている。しかも、体当たりによって真っ二つにしたという。
Uボートというのはドイツ軍の用いた潜水艦で、一次大戦中に数百隻用いられ、数々の軍艦と数千隻もの商船を沈めた。そのUボートを、商船であるオリンピック号が撃沈したというのだから、凄まじい。
以前、youtubeで、カバがどどどどどと突撃して、その巨体によってチーターを倒す映像を見たことがあったが、ちょうどあんな感じであろうか。


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