道草あつめ

日常思いついた由無し事を、気ままに拾い集めています。

「そして誰も知らなくなった」

2010-08-20 11:34:22 | 社会一般
不明100歳以上、二百数十人 警察届け、わずか49人(産経新聞) - goo ニュース
リュックに母の骨?男性が保管 大田区の104歳女性か(朝日新聞) - goo ニュース


最初に「都内最高齢の男性が白骨で見つかる」「孫には“即身成仏”と説明」というニュースを見たとき、その猟奇性から、巣鴨事件を連想した。
そして、「誰も知らない」のように映画化されるのだろうな、くらいにしか思っていなかった。

しかし、調査・報道が進むに連れ、それは巣鴨事件のように一件のみの特異な出来事ではなく、かなり多く起こっている事態だということが分かって来た。

よくよく考えてみれば、死亡届を出さずに遺体を保管しているというのは、まだマシな方である。家の中で生者が死体と同居しているというのは凄まじい状況で、古来タブーとされている。また、それで年金をせしめていたというのも、せこくはある。しかし、少なくとも死ぬまでは家族と一緒に生活していたということだし、年金詐取だって必要にかられて行ったことかもしれない。
むしろ、一人で暮らしている家の中で孤独死したという方が少し悲惨だが、それも家族に居場所は知れていたのだし、まがりなりにも文明的な生活ではあっただろう。

今回の行方不明者の中で最も数が多く、そして最も悲惨なのが、恐らくホームレスとなって死んでいった人達なのではないだろうか。渋谷にも新宿にも、そして八王子にだって、老人のホームレスはいる。
家族が「○○年前から弟の所で暮らしているものだと思っていた」「住所登録が姉のところだからずっとそこに住んでいると思っていた」と思っていたり、あるいはホームレスになっていたことは薄々感づいていても引き取る気はないからそのままにされていたり、そもそも身寄りが一人もいなかったり。
ホームレスとして生きていけるのは80歳が限界で、それを越えると体力がついていかないという。今回の行方不明者は、恐らくほとんど生き延びていないだろう。


この一連の事態で、最も猟奇的なのは、これほどの人間が文字通り「野垂れ死に」したであろうことを、これだけ放送される前まで、我々が普段全く実感していなかったことではないだろうか。
定職についていない自分にその資格があるかは分からないが、せめて『ビッグイシュー』を買うくらいはしようかと思う。

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