朝起きると音がしていた。雨かなと思って子どもに聞くと、雪だよ、吹雪いていると言う。雪はきれいだ。白い世界って美しい。写真を撮りたいなと思ってカメラを持ち出した。撮ろうとすると横殴りの雪が吹きつけカメラが濡れてしまう。仕方なく数枚撮って中止。ジャンパーのポケットに小さなデジカメを入れてチボリに。雪のチボリが見てみたかった。歩いてチボリに着く頃には薄日が射してきていた。
雪はどんどん融けてきた。太陽って偉大だなと思った。時折激しく雪が吹き付けたが、大勢は変わらなかった。雪の降らない場所に住んでいる私は雪がきれいだと思うけど、日本海側に住んでいる女の子は、雪は汚いと吐き捨てた。子どものころ文通をさせられていて、たまたま雪の話になったとき彼女はそう言った。我々は雪が降ったときのことを思うが、雪のたくさん降る地域では、雪の融けるときのことをまず連想するみたいだった。融けた雪でびちゃびちゃして靴も服もスカートもいつも汚れる。彼女は心底雪を嫌っていた。周りから見ただけじゃわかならいもんだな。そこに住んでみないと本当のところは理解できないんだなと、子ども心にもわかった気がした。
でも私たちには雪は珍しくきれいなものでしかない。融けかけた雪でチボリのスタッフが小さな雪だるまをつくってくれていた。写真を数枚撮ると彼は、ありがとうございましたと言った。自分の仕業で楽しんでくれた人がいたことを喜んでみたいだった。
さぁ帰ろうと思ったけど、若者たちのたむろするチボリ正面を通るのはイヤだった。大回りして裏を通った。赤や白のサザンカの生け垣がぐるっとチボリを取り囲んでいた。驚いた。所々にピンクの花がある。一瞬、交雑したのかなと思ったけど、いやそうではないだろうと思い直した。でもピンクの木は必ず赤と白の木の間にあった。わざとそうしているのかも知れないけど、交雑によるのかもと言う可能性は捨てきれなかった。
光量が欲しいなと思うと、太陽が光ってくれた。明るくいい色の写真になった。