徒然なるまゝによしなしごとを書きつくる

旧タイトル めざせ、ブータン

千束のぬか床

2019年01月12日 | 生活

ぬか漬けを10年くらいやっているんだけど、どうもぬか床の調子が良くない。香りが変だし味も何となく苦みがある。このぬか床は種糠を使わずに水と塩と糠で始めたものですが優勢菌種が変な菌に偏ってるようだ。これではダメだと思い床をリセットすることにした。

ぬか漬けの生理学的研究は九大で進められていてそのレポートが非常に参考になる。(糠床のミクロフローラと乳酸菌の共生;阪本 直茂*・中山 二郎)ここでは、博多のぬか床店・千束の種糠を使った培養実験を行っている。以下、一部を参照する、

筆者らは,千束より四季を通じて糠
床をサンプリングし,その菌叢をPCR/DGGE法により
解析した4).

その結果,驚くべきことに,Lb. namurensis が
まず早い速度で増殖し,一方,Lb. acetotolerans はLb.
namurensisが増殖を停止した後も緩慢に増殖を続け,
最後には最優占種になるという変遷パターンは常に再現
された.この結果から,増殖速度の異なるこの2つの乳
酸桿菌による協調的乳酸発酵が糠床の菌叢の堅牢性に貢
献していると考えられる.

次に,試しに糠床を接種しないモデル糠床を作製し,
菌叢とpH,有機酸の変化をモニタリングした.その結
果,Lb. namurensis の増殖は実験開始後10日後に,Lb.
acetotoleransは30日後にほんのわずかの増殖が見られ
た.そしてこの乳酸発酵の遅延に伴い,Bacillus属や
Stephylococcus属などの野生菌の増殖が見られた.種糠
を接種しない条件ではLb. namurensisとLb. acetotolerans
の協調発酵をうまく導き出せないと思われる.

つまり、種糠を使えば安定的に乳酸桿菌であるLb. namurensisとLb. acetotoleransによる発酵が開始できるが、種糠なしだととんでもない野生種優勢のぬか床になるという結果ですね。

ということで、千束さんに注文して種糠を取り寄せました。

http://nuka-chizuka.com/syouhin.html

この種糠2kgと自分で準備した新鮮なぬかを混ぜ合わせて新しいぬか床を作りました。このときに問題になるのが塩分濃度です。千束の床はかなり薄味。レシピは糠の7%の塩と書いてある。ぬか1kgに塩70gというわけだがぬか床はこれに水が加わる。1kgの糠なら水は1L=1kgだ。そうなると総重量に対する塩分は3.5%ということだ。これはかなり薄いですよ(´・ω・`)一般的なレシピは6-8%位が多くて4%以下はここでしか見たことが無い。自分の経験からも塩分濃度が低いと異常発酵してしまうことが判っている。専門店である千束ならメンテナンスは怠りないのでこの低い塩分濃度で維持できるのだろうが素人には危ない設定ですね。

あと、注意書きによると混ぜて二週間は漬けないで、と書いてある。これも九大の報告で種糠を使った場合の安定までの期間:二週間と合致する。さて、この二週間の間ぬか床を混ぜたものか、混ぜないものか?

これに関して参考になるサイトがあった。

好気培養で活き活きとする乳酸菌 http://www.jarmam.gr.jp/situmon3/kouki-baiyo.html

以下参照 

ご存知のように, 大腸菌もブドウ球菌も, ともに通性嫌気性菌です。嫌気的環境でも好気的な環境でも, どちらでも発育増殖可能です。では, どちらの環境の方が発育旺盛でしょうか??? 言うまでもなく, 好気的環境です。これは一般的な性質で, 多くの (ほとんどすべての) 通性嫌気性菌にも当てはまります。

放出されるエネルギーは、呼吸形式では686 kcalなのに対し, 発酵形式では54kcalで, 明らかに呼吸形式の方が高いエネルギーを放出するのです。

つまり、かき混ぜて酸素を与えると通性嫌気性細菌は10倍以上のスピードで増殖するということです。だから、セット初期はかき混ぜたほうが良い。ただし、味の点で言うとかき混ぜすぎたぬか床は不味い。味に深みが無くて塩味だけの漬物になるんです。だから、セット仕立は頻繁にかき混ぜて安定期に入ればあまりかき混ぜない、というのが細菌学からの結論ですね。


 

 

 


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