徒然なるまゝによしなしごとを書きつくる

旧タイトル めざせ、ブータン

タンパク質について

2012年11月07日 | 生命

 知ってるようで知らない事は多い。岩波新書に”タンパク質の一生”という本があり、これを読んで目からウロコが落ちるような気がした。著者は京大の永田教授、このひとiPS細胞の山中教授の隣の研究室だとこの本の中で書いている。

 3大栄養素はタンパク質、炭水化物、脂肪、くらいがタンパク質に関する一般的な認識だが実はこの物質とんでもない代物なのです。たんぱく質はDNAコードに従って正確に分子単位で組み立てられている。まずDNAがジッパーを開くように開鎖しそこに転写RNAがくっつきそのRNAコードに従ってアミノ酸ペプチド鎖が出来る。RNAはアデニン、グアニン、シトシン、ウラシルの4つの塩基配列を持っていてその3個ごとの組み合わせに対応するアミノ酸が連続的に結合していく。

 アミノ酸は20種類ある。4塩基x3(コドン)で4x4x4=64の組み合わせがあり、これの各々に対応したアミノ酸が決まっている。また、ペプチドの開始点はAUG(アデニン・ウラシル・グアニン)、終端はUAA,UAG,UGAと決まっている。

 と、まあここまでは高校で習って知っている。しかし、これで出来たアミノ酸鎖がなぜタンパク質としての機能性を持つのか? 生体のあらゆる機能はタンパク質が担っている。酸素を運び、筋肉を動かし、プロトンポンプを回してATPを作り、免疫反応をし、光を感知し、思考をし... これら全てがタンパク質の働きによる。

 タンパク質を構成するアミノ酸には親水性アミノ酸と疎水性アミノ酸がある。これがDNAコードに従ってペプチド鎖を作り、水中に放出されると親水基を外側にして疎水基が内側に畳み込まれる。(フォールデイング)この結果、最小自由エネルギー状態であるそのパターンに従った3次元構造が出来上がる。同時にアミノ酸には硫黄端があり隣同士の硫黄原子が共有結合でクリップの役割をして出来上がった3次元構造を固定する。要はDNAパターンに従って形状記憶されたアミノ酸の鎖が特有の3次元構造を作り出すわけだ。この形状がタンパク質の機能性を与える。よく免疫反応で特有の抗体が出来るというが、これは抗原タンパクの外形にぴったりはまる形状を持つタンパク質を作り出す働きによる。

 さて、この畳み込み(フォールディング)は実は簡単ではない。というのも細胞内は水溶性ではあるがタンパク質や細胞組織でギチギチで自由な折り畳みが出来る環境ではない。ホールディングの最中に隣のタンパク質の疎水基同士が接触すると、とたんにくっついて離れ無くなってしまう。このフォールディングを保障するために分子シャベロンというタンパク質が活躍する。まあ、詳しい事はこの本を読んでみてください。

 生卵をゆでるとゆで卵になる。肉を焼くと硬くなる。これらは熱によってタンパク質の構造が解け隣同士の疎水基がくっつきあう為に起る このようなタンパク質はその分子レベルから設計され正確に組み立てられた物質で現代の科学でこれを人工的につくったら1g作るのに1億円くらいはかかるだろう。今日は奮発して200gのステーキを食べよう としたとき なんと、これが200億円くらいの価値のあるモノだと思ってみてください... まさに、センス・オブ・ワンダー 驚異の物質なのです。