おとのくに♪♪

生徒さんのピアノレッスンで感じたこと、考えたこと、コンサートの感想などポツポツ綴っています。

アンデルセン「楽園の庭」

2022年10月19日 | 書籍紹介

ドビュッシーの前奏曲集第1集に「西風の見たもの」という曲があります。

アンデルセンの「楽園の庭」から着想を得た曲です。

この童話にピンと来る方は結構な読書家さんかもしれません。
西風の見たものを演奏するにあたり、楽園の庭のことは調べるとは思うのですが、大抵荒くれ者の西風、程度なので「楽園の庭」がどのような物語か書いておきたいと思います。




ある一人の王子がいました。彼はたくさんの美しい書物で何でも知ることが出来ました。しかし、最も知りたかった「楽園の庭」について書かれた書物はひとつもありませんでした。

そこに咲く花はどれも美味しいお菓子、おしべやめしべは上質な葡萄酒。ひとつの花には、歴史、地理、九九、など食べるだけで勉強ができてしまう花が咲いている、とおばあさまに教えられました。

ある大雨の日、真っ暗な中、風のほら穴に迷い込みます。
そこには男のようななりをした、年取ったいかつい大女がシカの丸焼きを焼いていました。
風のせがれ達がこれから帰ってくるところだと。

最初に帰って来たのは北風。
氷のような寒気と共にほら穴に入って来て、熊皮のズボンと上着を着て、アザラシ皮の帽子を深く被っています。髭には長いつららがさがり、雪のかけらがまわりを舞っています。

セイウチ猟のロシア人と北極のベーレン島に行っていました。
風を起こし船を氷山に挟み込むいじわるをし、人間たちをあわてふためかせてやったと。

北風が兄弟の中で一番好きな弟が西から戻って来た、と言います。海のにおいがして、気持ちのいい涼しさを運んでくる西風がと。


西風は荒くれ男のように見えました。ころんでもケガをしないようにか、ワタの入った帽子を被り、手にはアフリカの森で切って来たマホガニーのこん棒を持っていました。

西風は原始林から戻って来たと言いました。
トゲのあるツル植物が木の間に生け垣を作り、じめじめした草地には水ヘビがのたっていたと。
深い川を見下ろし、滝が岩から激しく流れ落ち、水けむりをあげて雲までのぼって、空に虹がかかるのを見ていた。川を泳いでいる水牛は流れが速く滝つぼに落ちて行った。川を泳いでいたカモたちはパッと飛び立ち逃げた。その様子に自分は気を良くし、嵐のように吹き荒れてやった。古い大木は帆掛け舟のように走り出し、木っ端みじんに。
熱帯の草原で宙返りしたり、野生の馬の背中をなでたり、ヤシの実をゆすって落としたりして来たと。


そこへ頭にターバンを巻き、砂漠の民ベドウィンのマントをひるがえした南風が戻ってきました。

ホッテントットの民とライオン狩りに出かけたと。
砂漠でキャラバンに会い、砂を柱のように巻き上げてやったと。

悪さばかりしてきたのかと、母親に袋に入れられます。
そこへ中国人のような衣装を着た東風が帰ってきました。
中国から戻り、塔の周りで踊ってみせ塔の鐘が残らず鳴ったと。

明日は、100年に1度行く「楽園の庭」に飛ぶと。

アダムとイブが追放された時に楽園の庭は土の中に埋まってしまったが、楽園の庭のあたたかい日差し、優しい風と美しさはそのまま。
妖精の女王が暮らし、死神が決して訪れることのない幸福の島があり、楽しく暮らせると。

東風が王子を背中に乗せて連れて行ってくれることに。

楽園の庭に着き、素晴らしい景色に「いつまでここにいられますか」と妖精にきくと、「あなたの心がけ次第」と。「アダムのように誘惑されて禁じられていることをしなければ、いつまでもいられます」と言われます。

妖精は「自分を試してごらんなさい。強さが足りなければ東風と一緒に帰るのです。東風は今帰ってしまうと100年後にならないと帰ってこない。この楽園では100年は100時間程度にしか感じられないかもしれないけれど、誘惑に負けまいと戦うと長い時間に感じるかもしれない。毎晩私はお別れする際に、『わたしについていらっしゃい』と言います。けれど我慢して一緒に来てはなりません」と言います。

「ここに残りたいです!」と王子。
東風は100年後にまたここで会えるように王子に別れを告げます。


「さあ、私たちの舞踏会が始まります。踊りの最後にあなたを手招きして『一緒にいらして』と誘うでしょう。でも、ついてきてはいけません。100年の間、それを繰り返さなければなりません。それを乗り越えればあなたは一段と強くなります」

しかし、最初の晩に王子は約束を忘れ、
手招きをする妖精に駆けよります。
ここまではまだ罪ではないと王子は自分に言いきかせながら。

約束を破りすさまじい雷鳴がとどろきます。美しい妖精も花咲く楽園も暗闇に深く沈んで行きます。
目を覚ますと風のほら穴の近くの森の中に。風の母親が怒ったような顔をしています。

そばに立っていた死神が、「今すぐに棺桶には入れないが、しばらくは世の中をめぐり、罪の償いをさせ、少しずつよい人間になってもらう。いつかまた、私は戻って来る。こいつが死ぬなんて考えてもいない時に。もし、こいつが信心深いよき人になっていたら楽園に。よこしまな考えのままで、罪深い心のままであれば、かつて沈んだ楽園よりも深く沈んで行くことだろう」



このようなお話です。
この話の中の西風の部分だけを切り取ったドビュッシー。

変わっている・・



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2 コメント

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Unknown (m-fluteangel16)
2022-10-19 11:50:16
こんにちは!
ミケランジェリいいですね!ありがとうございます。
返信する
Unknown (Unknown)
2022-10-19 12:30:32
m-fluteangel16さん、ブログを読んでくださり、ありがとうございます。ミケランジェリのドビュッシーは別次元ですね。
毎日更新されているm-fluteangel16さんの記事は知らないことも多く、勉強させていただいております。
返信する

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