今年の発表会が終了しました。
皆、それぞれの個性が出ていたな、と良い面とそうではない面を含め面白いものだと思いながら聴いておりました。
曲が難しくなってくると、どのような練習が必要かということをレッスンで念入りにすることが増えてきます。
年齢が上がってくると、緊張した時でも力が出せる練習が必要になります。
最も有効なのは、ゆっくりなテンポで弾く練習です。
速いテンポでも弾けるもん、と思っている内はまだその段階に達していないということです。
全曲を通してゆっくり弾く練習は、たいへん集中力が要ります。
自分がどのような音で弾いているか、耳を使って一音も聞き逃さず弾く必要があります。
こうなると、やはりアコースティックピアノが適しています。記憶力を強化するだけでしたら電子ピアノでも良いかもしれませんが、一度で複数の神経を使える方が能力としては高められます。
不思議な音の国を使うきっかけとなった生徒さんがいます。
今時ハイフィンガーで習い、しかもまじめな生徒さんで毎日1時間以上それを守って練習し、鼻血まで出していたと。
1年続けて、どうもこれはおかしい、とお母様が思い楽器店を移動されてきました。
あまりに力が入り、ガチガチで音を押し付けて弾いていたので、音は伸びないし、レガートにはならないし、でした。
迷うことなく、不思議な音の国を使おうと思いました。
下巻から始めました。小学2年生の時です。
それから丸5年経ち、中学2年生になりました。
今日の彼女の演奏、柔らかい音も、滑らかな音も、切ない音も、軽やかな音も出せていました。
そして、そのたくさんの表情のある音が音楽を伝えてくれていました。
音があれば表現する力は持っている生徒さんでしたので、今日は「ここまで来れたんだ」と感慨深く演奏を聴いておりました。
演奏が終わると、客席から「ホー」と言う感嘆の声が漏れ、椅子から立ち上がる前に既に客席から拍手が起きていました。
「素晴らしかったよ」と声を掛けると、見たことのない幸せな顔で微笑んでおりました。
どの生徒さんも、念入りにやったことは力が出せておりましたが、私が教えられない事というものはあります。
本人の中から湧き出るもの、本人が作り出すものを私は聴きたいと思っています。
今日の彼女は、そのような演奏でした。