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吉村昭『破船』を読み終えました

2013-01-05 12:30:38 | 日記


 吉村昭『破船』(新潮文庫・240頁)を読み終えました。


【カバーにある紹介文】
 これを載せてしまうと、話の内容がわかってしまうので、カットします。
 最後にある「解説」には、ほぼストーリーが完全に書かれています。
 先に読んでしまわないほうが、いいと思います。

 しかし、ごく一部だけ載せます。

 「嵐の夜、浜で火を焚き、近づく船を座礁させ、その積荷を奪い取るー僻地の貧しい漁村に伝わる、サバイバルのための異様な風習『お船様』・・・」

【感想】
 自然のサイクルにしたがった限りなく貧しい生活、厳しい村のしきたり、そして他郷の者には隠される風習・・・。これらによって維持される村の姿が描かれていきます。

 実は『破船』の時代設定は正確に書かれていません。ただ、「藩」が使われているので、おそらくは江戸時代なのだと思います。

 しかし、これは逆に時代を限定しないことで、どこにでもありうる話になっている気がしました。どこにでもある話というのは、現代でも十分に通用するということです。もしかしたら、現代の日本も同じようなものなのかもしれないという意味です。

 考えもせず身の回りの慣習にとらわれたり、外の世界とつながっていると思っていてもじつは情報選別されていたりする。自分の世界の異常性に気がつかず、ただ差し迫った危機はないので、なんとなくぼんやり過ごしている。つまり、外の世界に接触すれば簡単に見破れることでも、狭いところにいて本物に気づかない。他者を批判しているわけではなく、私もそうですから、身につまされることです。

 ある村の閉鎖的な悲しい物語でありながら、普遍性をもった話に感じました。

 これを読み終えて、宮本常一『忘れられた日本人』、宮本常一・山本周五郎らが著した『日本残酷物語』を思い出しました。興味のある方は読んでみてはいかがでしょうか。もっと悲しい話がありましたよ。

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 次は、司馬遼太郎『坂の上の雲』を読みます。全8巻です。

 今日も来てくださってありがとうございました。