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『チロ愛死』荒木経惟

2011-01-18 16:04:59 | 日記
私は写真撮影があまり好きではない。撮られることはあまりないので、
むろん撮る方である。

なぜ好きではないかというと「ヘタ」だからである。
人が撮った写真をみると、へぇーいい写真だなー、と思うのだが、
自分が撮った写真でそんなこと思ったことがない。

簡単にいうとセンスがないのである。

自分としては、これでも審美眼をもっているつもりでいたので、
「自分が自分の眼で見ているものは、こんなものではない。」とか、
「私の感動などカメラのフレームに収められるわけながい。」などと
誠に勝手な言い訳をしていた。

でも人の撮った写真を見るのは大好きだ。
特に荒木経惟さんに関しては、個展も観に行ったし、写真集も
何冊かもっている。

『センチメンタルな旅』とか、『愛しのチロ』とか。

特に『愛しのチロ』は自分が猫好きなこともあって、今でもよく見る。
奥様の陽子さんが亡くなった後、雪の上を飛び跳ねているチロの写真が
切なく、愛おしい。

また荒木さんの股の上で眠るチロがめっちゃかわいい。

うちのダリアは、いまでも私の股の上で眠る。まるでお風呂に浸かっている
みたいだ。

(…)

今日は仕事の打ち合わせで日本橋の丸善にいった。
いつも都内に出た時は、本屋に立ち寄るのが日課になっている。
それが楽しみで外出しているむきもある。

ところで、なにげなく通りかかったアートのコーナーで見つけた。

『チロ愛死』

いやな予感がした。でも手にとらずにはいられない。

すでにかなりの高齢のチロ。毛並みに色つやがなく、濡れそぼった感じの猫。
でもかわいい。すごくかわいい。
目に力もなく、それでもかわいい。愛おしい。
なぜかチロの写真のとなりのページは裸婦の写真????

まあ、いいっか…。

とページをめくるごとにやせ細ってゆくチロ。
ただれた目のチロ。

そして、、、、横たわるチロ。

沢山の花に囲まれるチロ。
骨になったチロ。

遺骨を胸に電車に乗り、たたずむアラーキー。

時は音もたてず静かに、しかし壮絶に流れてゆく。

これほどのものが凝縮された一冊の本はないと思った。

涙が出そうになった。

やべぇ、この本ほしいけど、買えない。二度と見られない。
表紙見るだけで泣けてくる。思い出しただけでも泣けてくる。
ああ、どうしよう…。

べそをかきながら東京駅まで歩いた。

歩きながら、車にはねられて死んだミケちゃんの重さを思い出していた。
「彼女もあんなふうにやせぎすだったな…。」

ままよ、行こう。

家には4匹の猫がまっている。

この心もて、遠き都にかえらばや。
遠き都にかえらばや。



愛しのダリア(私の椅子を占領中)


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