先日、休日のほぼ一日を費やして、Thelonious Monkの「Brilliant Corners」の
テーマを採譜した。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/07/f8a5f22c0cb91bdbea52f6d3b5f76596.jpg)
『Thelonious Monk/Brilliant Corners』
モンクは本当にすばらしい作曲家だと思う。
Straight No Chaser、Blue Monk、'Round Midnightなどは数多くのミュージシャンが
採りあげているほどスタンダート中のスタンダードだし、他にもキリがないくらい
の名曲を生み出している。
実は私は幸か不幸か幼少の頃からモンクを聴いて育った人間で、彼のサウンドは
自分にとってはビートルズや有名なクラッシック音楽と同じくらい馴染み深い。
(私の父親はかわった人だ。私が生まれたとき、家にはギターがあり、モンクの
レコードがあり、ビートルズのレコードがあり、なぜかソニー・ロリンズの
生写真があった。)
彼には独自の節回し(いわゆるモンク節)があり、特にホールトーンを使った音階
の下降ライン(鉄腕アトムのイントロはホールトーンの上昇ライン)のフレーズや
アヒルがドタドタとあるいているようなリズムなどは、彼のどのアルバムにも、
どの曲にも随所にみられる。
後にも先にもあんな演奏をする人(意識的にマネしないかぎり)はほとんどいないので
一回聴いただけでモンクの曲、あるいはモンクの演奏であることがわかってしまう。
ある意味、滑稽でないかというと確かに滑稽である(笑)。
ただし、彼のハーモニーセンスは大変に奥が深く、ピアノ独奏などを聴いているかぎり
パリの現代的なクラッシックを聴いているような気分になることがよくある。
それにしてもメロディもコードも、そしてリズムも独自のものが多すぎて
また実際にどれもこれもコード解釈やリズムがむずかしい。
「Brilliant Corners」などはテーマが22小節とすでに変態的(笑)である。
そしてコード進行が…、全く意味不明。とくにサビの部分に関しては
「真面目にやれ!」と怒鳴りたくなる(笑)。
上記のアルバムの演奏を実際に聴いても、モンクはリズム的にかなり変奏をしているので、
ますます混乱する。原曲のコード進行を調べるのに、原作者の演奏が一番わかりにくい
というこの奇怪な現象をどうするか…。
あえなく、他のミュージシャンのCDや、Youtubeなどで演奏している映像を
参考にしながら、はや1日、ようやくその骨子らしきものが見えてきた。
ただし、CDにしても、Youtubeにしても公開されているものは、やはり公開されるに
値するテクニックをもっている人が多く、そういう人に限って、独自の解釈で、
これまた独自の演奏をしているので、余計に混乱してしまった。
特に『Kronos Quartet/Ron Carter』などは、これまた実にすばらしい
ストリングス・アレンジが施されており、すばらしすぎて、カウンター・ラインが
絶妙すぎて、美しいのだが、結局目的を果たせなかった。
『Paul Motian & the Electric Bebap Band/Play Monk & Powell』もしかり。
結局、素人のグループがやっている映像がいちばんわかりやすかった。
しかし、ひとたび骨子が見えてくると、あとはすべてが感動だ(笑)。
ソニー・ロリンズのサックスが凄すぎるし、なにより彼らが何を考えて、
具体的にいうならどういう動きで演奏しているかが見えてくるのだ。
モンクの曲は、ガッチリと決め込んでゆくところと、ターゲットさえ見えていれば
あとは限りなくフリーな(つまりミュージシャンが自由に解釈して自由に演奏する)
スペースがあることが多いと思う。
実際のところ、私の採譜作業の大半はこのフリー・スペースの解釈に費やされた。
してみると、案外モンクは原作にかなり忠実な演奏をしていることがわかる。
(って、当たり前だろう、原作者なんだから!!)
モンクって目くらましみたいなことをよくやるのだ。
例えば、強拍のところで半音となりのコード(いわゆる半音代理)や代理コード
を弾いて、弱拍のところでまるで経過音のように重要なコードをさりげなく
入れてきたりする。
そういう奇怪なところがあるがゆえ、誤解されている面が多いのだと思った。
彼のスタイルって暗喩的にメロディーやハーモニーの骨格を浮かび上がらせるタイプ
なのだと思う。
マイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンがあれほどモンクをしたっていた
理由がすこしわかった気がする。特にコルトレーンにとってモンクは音楽上の
教師だったしね。
マイルスはインタヴューで、レコーディング中に、マイルスとモンクが
もめた件について質問されて、
「彼のバックは俺のソロには合わない、
俺は喧嘩をふっかけちゃいない、
ただ俺がソロの時は弾かないでくれといっただけだ。
だいたいあんな大男に、誰が本気で喧嘩をうるものか…」
と応えているが、確かにモンクという人は、
変態的なピアノを弾く人だから、あんなバックをつけられちゃたまったもんじゃない
と思うのは普通だし、あんな大男に喧嘩ふっかける奴もいないだろう。
だって彼は巨人(ジャズ・ジャイアント(巨匠))だぜ(笑)。
翻訳会社オー・エム・ティの公式ウェブサイト
テーマを採譜した。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/07/f8a5f22c0cb91bdbea52f6d3b5f76596.jpg)
『Thelonious Monk/Brilliant Corners』
モンクは本当にすばらしい作曲家だと思う。
Straight No Chaser、Blue Monk、'Round Midnightなどは数多くのミュージシャンが
採りあげているほどスタンダート中のスタンダードだし、他にもキリがないくらい
の名曲を生み出している。
実は私は幸か不幸か幼少の頃からモンクを聴いて育った人間で、彼のサウンドは
自分にとってはビートルズや有名なクラッシック音楽と同じくらい馴染み深い。
(私の父親はかわった人だ。私が生まれたとき、家にはギターがあり、モンクの
レコードがあり、ビートルズのレコードがあり、なぜかソニー・ロリンズの
生写真があった。)
彼には独自の節回し(いわゆるモンク節)があり、特にホールトーンを使った音階
の下降ライン(鉄腕アトムのイントロはホールトーンの上昇ライン)のフレーズや
アヒルがドタドタとあるいているようなリズムなどは、彼のどのアルバムにも、
どの曲にも随所にみられる。
後にも先にもあんな演奏をする人(意識的にマネしないかぎり)はほとんどいないので
一回聴いただけでモンクの曲、あるいはモンクの演奏であることがわかってしまう。
ある意味、滑稽でないかというと確かに滑稽である(笑)。
ただし、彼のハーモニーセンスは大変に奥が深く、ピアノ独奏などを聴いているかぎり
パリの現代的なクラッシックを聴いているような気分になることがよくある。
それにしてもメロディもコードも、そしてリズムも独自のものが多すぎて
また実際にどれもこれもコード解釈やリズムがむずかしい。
「Brilliant Corners」などはテーマが22小節とすでに変態的(笑)である。
そしてコード進行が…、全く意味不明。とくにサビの部分に関しては
「真面目にやれ!」と怒鳴りたくなる(笑)。
上記のアルバムの演奏を実際に聴いても、モンクはリズム的にかなり変奏をしているので、
ますます混乱する。原曲のコード進行を調べるのに、原作者の演奏が一番わかりにくい
というこの奇怪な現象をどうするか…。
あえなく、他のミュージシャンのCDや、Youtubeなどで演奏している映像を
参考にしながら、はや1日、ようやくその骨子らしきものが見えてきた。
ただし、CDにしても、Youtubeにしても公開されているものは、やはり公開されるに
値するテクニックをもっている人が多く、そういう人に限って、独自の解釈で、
これまた独自の演奏をしているので、余計に混乱してしまった。
特に『Kronos Quartet/Ron Carter』などは、これまた実にすばらしい
ストリングス・アレンジが施されており、すばらしすぎて、カウンター・ラインが
絶妙すぎて、美しいのだが、結局目的を果たせなかった。
『Paul Motian & the Electric Bebap Band/Play Monk & Powell』もしかり。
結局、素人のグループがやっている映像がいちばんわかりやすかった。
しかし、ひとたび骨子が見えてくると、あとはすべてが感動だ(笑)。
ソニー・ロリンズのサックスが凄すぎるし、なにより彼らが何を考えて、
具体的にいうならどういう動きで演奏しているかが見えてくるのだ。
モンクの曲は、ガッチリと決め込んでゆくところと、ターゲットさえ見えていれば
あとは限りなくフリーな(つまりミュージシャンが自由に解釈して自由に演奏する)
スペースがあることが多いと思う。
実際のところ、私の採譜作業の大半はこのフリー・スペースの解釈に費やされた。
してみると、案外モンクは原作にかなり忠実な演奏をしていることがわかる。
(って、当たり前だろう、原作者なんだから!!)
モンクって目くらましみたいなことをよくやるのだ。
例えば、強拍のところで半音となりのコード(いわゆる半音代理)や代理コード
を弾いて、弱拍のところでまるで経過音のように重要なコードをさりげなく
入れてきたりする。
そういう奇怪なところがあるがゆえ、誤解されている面が多いのだと思った。
彼のスタイルって暗喩的にメロディーやハーモニーの骨格を浮かび上がらせるタイプ
なのだと思う。
マイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンがあれほどモンクをしたっていた
理由がすこしわかった気がする。特にコルトレーンにとってモンクは音楽上の
教師だったしね。
マイルスはインタヴューで、レコーディング中に、マイルスとモンクが
もめた件について質問されて、
「彼のバックは俺のソロには合わない、
俺は喧嘩をふっかけちゃいない、
ただ俺がソロの時は弾かないでくれといっただけだ。
だいたいあんな大男に、誰が本気で喧嘩をうるものか…」
と応えているが、確かにモンクという人は、
変態的なピアノを弾く人だから、あんなバックをつけられちゃたまったもんじゃない
と思うのは普通だし、あんな大男に喧嘩ふっかける奴もいないだろう。
だって彼は巨人(ジャズ・ジャイアント(巨匠))だぜ(笑)。
翻訳会社オー・エム・ティの公式ウェブサイト