OMTインフォメーション

翻訳のこと、会社のこと、生活のこと、音楽のこと、読書のこと

ありがとう、浅田選手!

2014-02-24 16:50:10 | 日記
このブログを始めてもう5年近くになるが、よく読まれているブログの
ランキングを見ると、圧倒的に多いのが、音楽ネタ、その次が猫ネタ。
これは私が音楽のことや、猫のことばっかり書いているから仕方ない。

本当は仕事のこと(翻訳関連)についてもっと書きたいのだが、私の
ような技術系の翻訳をやっていると、守秘義務が生じるわけで、面白い
トピックになりそうだと思っても記事にできないものが多いのだ。

驚くことに、それらに続いて多いのが浅田真央選手について書いた記事で、
コメントを寄せてくれている方も多い。浅田真央選手がいかにすごい人気者
なのかを痛感すると同時に、私のようなズブの素人が偉そうに書いていることに、
すばらしいコメントを寄せてくれる人がいるのはありがたいが、
内心かなり恐縮している。

フィギュアスケートは判定競技なので、仕方のないことだが、選手たちに
つけられる得点についてのコメントがネットなどで氾濫している。
熱心なファンが多いということなのだろうが、それが選手たちを傷つけては
もともこもないと思うし、無記名による誹謗中傷合戦が起こっている状況を見る
につけ、自分では極力かかわりたくないと思っていた。
逆にいえば、そういうテレビ番組、マスコミ報道、そしてネットやツイッタ―などの
書き込みがなければ、もっと純粋にフィギュアスケートを楽しめたのだろうとも思う。
まあ、これも所詮私のような素人の戯言だ。

それにしても今回のオリンピックの浅田選手は感動的だった。

バンクーバでは銀メダルをとったが、彼女の涙が象徴しているように
私にそれは悔しい、切ない思いでだ。浅田選手の大ファンである私は、
ずっといままで、その胸の痛みをどっかでひきずっていた気がする。

それが今回でスーッと晴れた気がした。今回は喜びと感動で胸が熱くなった。
彼女の演技はもはやメダルを超越していた。

SPの時の、あれほどの落ち込みから、フリーにおけるあの迫真の演技
にのぼりつめるまでのドラマのダイナミズムが半端ではない。
2日間でやってのけられる起伏のレベルを超えている。
そういう意味では、浅田選手はすばらしいドラマを観せてくれたのだ。
もちろん、ドラマは、その2日間だけではない。ジュニアで活躍していた時から現在まで。

フリーでの彼女の得点を考慮すれば、SPの時に完璧な演技をして、
メダル争いに加わっていたとしても、結局がっかりして終わっていたのかな…。

結局、感動とはそのドラマのダイナミズムによるのだと思う。
そういう意味では、浅田選手の振る舞いは、悲しみにくれる人たちにも
勇気を与えたはずだ。

「ミスをしない」ということがメダルを獲る上での絶対条件であるという。
でも私にとっては、決められたコース上で完璧に演技をすることよりも、
そこから漏れ出す感情を楽しむことの方が意味のあることに思える。

不謹慎だと思う方もいるかも知れない。でも人生なんて所詮ドラマのようなものだ。

浅田選手が引退するのかどうかまだわからないけど、今度は
「自分の楽しみのために」新たなドラマを演じていってほしいと思う。

ありがとう、浅田選手!



翻訳会社オー・エム・ティの公式ウェブサイト

白髪のニール

2014-02-14 16:26:44 | 日記



「白髪のニール」(『せんせい』重松 清)
この本は、本名カズトさんから教えてもらった。

早速、書店でこの本を買って読んだら感動して涙がでてしまった。
(全編「先生」にまつわるストーリが描かれている)

「白髪のニール」のニールとはもちろんニール・ヤングのこと。

ある日、この物語の語り手である主人公たちが物理の高校教師から
ギターを教えてくれと頼まれる。
先生が教えを請うたのは、ニール・ヤングの楽曲だった。
先生にギターを教えながら、主人公の生徒たちは「ロック&ロール」とは
何かを逆に先生から学んでゆくという話だ。

私がニール・ヤングをまじめに聴いたのは大学生の頃だ。
もちろん、名前も知っていたし、それまでには聴いたこともあった。
「まじめに」というのは、強烈にのめり込んだということだ。

ニール・ヤングは私にとっては若いころから、現在にいたるまで、
常に「いたみをともなう」人だ。
はりのないひょろひょろした歌声や、ギター、そして常に反骨精神で
ロックと面と向き合い、勝ちのない戦にいどみつづけるドンキホーテの
ような人だ。つまり「いたい」のである。

最初にクレイジー・ホースをバックにしたがえたライク・ア・ハリケーン
を聴いた時は、ぶっ飛んでしまった。

オクターバーを踏みっぱなしで、ガツーンとコード弾きを、しかも開放弦の
コードを鳴らすという、絶対にやってはいけないと思われることをやった。
なんという、めちゃくちゃで破壊的なサウンドだ!

「…馬鹿か、こいつは!」

ところがである。私は不覚にもそれに、どはまりしてしまったのである。
ある種のぶざまさをひきずる、彼の姿勢、歌が最高にかっこよかった。

「ロックは始めることで、ロールはつづけることよ。ロックは文句をたれることで、
ロールは自分のたれた文句に責任をとることよ。ロックは目の前の壁を壊すことで、
ロールは向かい風に立ち向かうことなんよ。」


主人公の高校生は、いつか45歳のおじさんになる。
彼が先生にギターを教えた時の年齢をとうにこえている。もちろん先生もそれにともない
年をとってゆくわけだが、先生は今でも、向かい風に立ち向かい続けていた。
ロック&ロールし続けていた。

大好きなニール・ヤングをモチーフにした、こんな作品があったなんて!
重松清さんの作品は、少年の心の描写が絶妙で、私も好きで何冊か読んではいたが、
この作品は知らなかった。

世の「ロック&ロールおやじ」たちよ。
ともにがんばりましょう。
もし、気持ちが萎えそうになった時は読んでみてください。
きっと力を得られるでしょう。

必要とあらば、私を呼んでください。うちわをもって駆けつけますよ。

向かい風を起こしに。


翻訳会社オー・エム・ティの公式ウェブサイト