大前研一のニュースのポイント

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ロシアからアイスランドへの融資。その背景には何があったのか?

2008年10月21日 | ニュースの視点
9日、アイスランド政府は同国銀行最大手のカウプシングを国有化した。

同国通貨の対ユーロ相場固定(ペッグ)制を撤回し、さらには同国の証券取引所がすべての株式の取引の一時停止を決定した矢先のことだ。

厳しい状況に置かれているアイスランドだが、同時に中央銀行がロシアから40億ユーロ(約5500億円)の融資を受けることで合意したことを発表している。

ここで「なぜ、ロシアがアイスランドに手を差し伸べるのか?」という点について疑問を感じる人も多いだろう。

アイスランドは人口約30万人の小さな国だが、極めて経済的に成功していた。

今年の10月に発表されたIMFの調査によると、同国の07年の1人当たりGDPでは世界3位で6万3830ドルという数字を達成している。日本の1人当たりGDPが約3万4300ドルだったのだから見事という他ない。

このアイスランドの経済的な成功要因として、アイスランドの銀行が欧州の銀行に比べて金利を約1%~1.5%高く設定していたという点に注目するべきだと思う。

欧州の国民というのは金利志向が強い。そのため、金利が高いアイスランドの銀行に欧州全体から資金が集まったのだ。

そして、そのようにして国内に流れ込んできた莫大な資金を企業や個人に貸付けることで、アイスランドはその経済的な繁栄の基盤を創り上げたというわけだ。

ところが、この世界的な金融危機の影響を受けてアイスランドに対する警戒感が強まり、こぞってアイスランドから資金を引いてしまうという事態が起こった。

その結果、経済は致命的な打撃を受け、国家破綻の寸前まで追い込まれるに至ったというのが、アイスランドの現状だ。

こうしてアイスランド経済が破綻へと突き進む中、EU諸国とアイスランドの関係性が悪化した。その代表格が英国だ。

アイスランドの経済が傾いたことで甚大な被害を受けたことを英国ゴードン・ブラウン首相は非難したが、逆にアイスランド側も英国などが資金を引き上げたせいでアイスランド経済が破綻に追い込まれつつあるのだと反発した。そして、今では両国の関係は国交断絶に近い状態にまで悪化してしまった。

こうして欧州に助けを求められない状態で、国家破綻の危険性も現実味を帯び、最後にアイスランドが頼った相手が「ロシア」だったということだ。

これが今回アイスランドとロシアが結びついた経緯だ。

「なぜ、ロシアがアイスランドに手を差し伸べるのか?」ほとんどの人はこの背景を理解していないと思う。

大切なことは、そこで思考を止めないことだ。ニュースの表面だけを理解すると、得てして全体像を掴めなくなる。逆に、こうした背景を理解できるようになると、一気に世界経済全体が見渡せるようになると思う。ぜひ、普段のニュースを見るときから心がけて欲しいところだ。

2 コメント

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Unknown (デンジャラス)
2008-10-22 15:51:27
なるほど
何事も表面だけでなく中身や背景があると

でもどうやって背景掴めばいいんすか…

う~ん
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遅まきながら… ()
2008-10-24 22:25:09
ロシアの目的は、

ヨーロッパへの金融侵攻?

今日の夕刊紙に出てました。

最近 ここを知り、拝見しています。
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