さじかげんだと思うわけッ!

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アンパンマンの"正義"

2008-08-30 21:25:59 | 

先日、毎度のことながら山梨県立美術館にいってきたので、その話をしましょう。
夏期企画展であった『やなせたかしの世界』展を見に行ってきたんですよ。

やなせたかし(1919~)さんといえば、御歳90歳の芸術界の超絶大御所ですね。代表作は、おそらく世界で一番不格好なヒーロー・アンパンマン。
それから、30年にわたり編集長を務めた雑誌『詩とメルヘン』が有名なところですね。

わたし、アンパンマンが好きなんですよ。
何が好きかっていえば、まぁあの造形のシンプルさもそうですし、何というかあの世界で明らかに浮いた存在に感じませんか。
いえ、住民みんなに愛されおり、一見和気藹々しているようですが、しかしどうもその存在自体に影を感じるんですよね。
主題歌の「愛と勇気だけが友達」というのも、その一因かも知れません。
この展覧会にいってわかったのは、やなせさんが正義という思想について、わたしたちが思う以上に厳密な思いがあるということです。
つまり、悪さをするバイキンマンを懲らしめることが正義なのではないのです。
やなせさんの生誕年を見てもらってわかるように、やなせさんは戦地に赴き、中国で敗戦を迎えます。
後年、やなせさんは自伝の中で「正義のための戦いなどどこにもない」と、世のあらゆる戦いについて拒絶しています。「正義は信じがたい」と、その存在自体を疑問視しているのです。
見るものの立場によって移り変わり、片方が正当でも、片方はそうとは思わない。争いの建前となる正義というのは、これほど不安定なものはないということなのです。
同時に、「逆転しない正義とは献身と愛だ」ともいい、それを体現したのがアンパンマンであるといいます。
おそらく、多くの人はなっとくしないことでしょう。
なぜなら、これは理想論だからです。
実際、アンパンマンもバイキンマンが悪さをするために、アンパンチという"正義"の鉄槌を下すわけで、その点では矛盾しているのかもしれません。
勧善懲悪が大衆に受け入れられやすいというマーケティング的要素もあるのだろうと思います。
だけど、思うんですよ。
アンパンマンはバイキンマンを懲らしめることに、きっと"正義"は感じていないじゃないかと。
彼が唯一思うのは、おれなんかいない世界…つまり、この世から飢えや不安がなくなった平和な世界になればいい、と。

アンパンマンは、やなせさんの作品ですから、いくら理想を叫んだっていいと思うんです。この歳になってわたしがアンパンマンが好きなのは、きっとやなせさんの理想が好きなんだからだと思います。
それから、恥ずかしながら、『アンパンマン大図鑑 公式キャラクター2000』という本を買ってしまいました。
もう、もんのすごい面白いですよ。
世の中のたいていの食べ物はキャラクターになってます。
見ていて、まったく飽きない。
ぜひ、アンパンマン好きの人は買って損はありません。子どもだろうが、大人だろうが、関係ないぐらいです。


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