さじかげんだと思うわけッ!

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十二支のはじまり(2)

2007-12-29 23:46:09 | 民話ものがたり
大晦日までには、それぞれの部族で代表のものを選び出し、おのおの準備をしていた。それぞれの部族会議で選出された、いうなれば将来有望な若者である。そして、それぞれの部族の色が如実に表れていた。

最初に動いたのは、堅実・真面目を美徳とするうしである。
なんと、大晦日の夕暮れには仙人の宮殿に向かって歩みをはじめていた。曰く、
「ぼくは歩みが遅いから。それに走るのも急ぐのも好きではないし」
という、実に慎重でものぐさな意見である。
しかし、うしのこの行動を、ある動物は見透かしていた。それは、狡猾・明晰なねずみであった。
ねずみは、うしの行動を見透かして、うしの家の前でうしが出発するのを待っていたのである。
だから、厳密に言えば、最初に"動かしていた"のはねずみということになる。
では、何のためにうしを待っていたかと言えば、"楽"をするためである。
うしがこっそりと玄関から出てくると、ねずみをささっとうしの背中に駆け上がり、安定する位置を見つけて、ごろりと横になった。
「ふふ、やれやれ。うしめ、すっかり鈍感なやつだ。おれが背中にはい上がったことを、まったく気付いていない」
実際、うしは背中にはえがたかったぐらいにしか感じていなかった。はえは、この競争には関係がないから、うしはどうでもいいやと思って意に介していなかった。
「さて、おれの仕事はあと一つだ。そのときが来るまで、寝させてもらおうか」
と腕枕をして、眠りはじめた。
ねずみをのせて、うしは行く。

競争が本格的に始まるのは、まだ日も上がらぬ、未明のことである。
うしほど足に自信がないものはいなかったから、残りの動物たちはほぼ同時のスタートといっていい。
そのスタートの前後は、結局、慎重か剛胆かという性格の違いである。
ほぼ同時にスタートをきったのは、りゅうととらであった。
この二部族は、古来から「竜虎」などと言われるように、動物界の二強であり、同時に最大のライバルであった。
だから当然、今回の競争もお互いに負けるわけにはいかなかった。それに動物界最強を自認するのであるから、ほかの動物たちにも負けるわけに行かない。そこでちょっと早いかなと思いつつも、家を出た。
しかし、見ればライバルのりゅうも家を出ている。
お互い、口には出さねど意識はしている。りゅうはふらふらと宙を浮いて先を行く。とらはかっかっと軽快に爪をならして先をいく。
りゅうととらは、追いつ追いつかれつつ、道を急ぐ。

りゅうととらが出発した後、うさぎやうま、ひつじなどの足の速い動物が続いた。
その中でもへびが異色であったが、へびはその細い身体を巧みに使って、地形を問わず移動ができるので、見かけによらず素早い移動が得意であった。
さぁ大変なのが、その後続の集団であった。
面子がさるといぬなのである。
この二種族は、りゅうととらのような威厳に満ちた対立関係ではない。ただ単純に、ものずごく仲が悪いだけなのである。
これを「犬猿の仲」という。この二種族の競争は壮絶を極めていた。
血で血を洗うとは、まさしくこのことであった。

とりは、あらかじめ仙人から空を飛べないものを出すようにといわれていた。あまりにも不公平だったからである。
そこで、にわとりを行かせることになっていた。にわとりは高く跳ぶことはできるが、空を飛ぶことはできないからだ。
しかし、にわとりには大事な仕事があったので、すっかりスタートの時間が遅くなってしまった。
その仕事とは取りも直さず、日の出をみなに知らせることであった。なので、にわとりのスタートは日の出以後だったのだ。
しかし、そのにわとりよりも遅くスタートを切った動物がいた。
いのししである。なんのことはない。すっかり寝坊をしていただけのことで、「コケコッコー」というにわとりの声を聞きつけると、いかんと跳ね起きて急いで家を出た。
壁に穴を空け、木をなぎ倒しながら、ひたすら猛進する。その様はまさしく、猪突猛進であった。

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