
きょうも雨。これで山の雪も少しは融けるだろうが、逆に車の通行はしばらく難しくなる。水を多量に含んだ雪は車の重みで沈んでしまい、雪が深いと車は"カメ"になって動けなくなるからだ。
昨日も上に行くことは行ったが、雪の状況は二日前よりさらに悪くなっていて、ド日蔭の300㍍ほど手前で悪雪につかまりそれ以上行くのを諦めた。あの状況では、仮にそこを通過できたとしても、最大の難関であるド日蔭やその先はまだまだ雪が深く、前回引き返した第2検査場手前まではとても無理だと判断し引き返すしかなかった。
その帰り、高遠の桜はまだだと思っていたら、日当たりの良い場所の早咲きの木にタカトウコヒガンザクラと思しき花を目にした。こんな天気でも一度勢いが付けば、花の開花は進むだろうというのが期待を込めた予想だが、そうなると花見客が来て高遠町はしばらく賑わうだろう。
牧場の仕事が始まるころにはそれも峠を越えるのが例年の記憶ではあるが、あまりはっきりしない。4月に入ればその前にも、何度も上には行っているはずだが、渋滞に苦労したということは覚えていない。高遠の街を避け別の道を行ったのだろうか。
花に関してはやはり里よりか入笠の山桜の方にもっぱら関心があって、花見は毎年一人だけの行事となっている。今年は最後の花見になるから、そのことを意識しながら眺めるだろう。
まずは大きな真っ青な空、次に残雪を残した遠近(おちこち)の山々、そして霧ヶ峰、美ヶ原の草原が視界の先を占めて遠くまで拡がっている。牧場の林や森には初々しい新緑の霞のような芽吹きが始まり、その中にチラホラと山桜の花が紛れているのが見える。鳥の声も天空の明るい春の陽光の中から聞こえてくる。
幾カ所か決めている場所があって、そこに山桜の古木が待っている。中には、最後の力を振り絞って花を咲かせたかと思えるような老木もある。「ご苦労さま」だったと労い、見取るような思いで眺め、別れてくるかも知れない。
桜の木だけではない。あの木にも、あの岩にも、鹿に破られ切られた牧柵にも、みんな思いは残る。それがこれからの一年だ。
本日はこの辺で。