
春は名のみの風の寒さよ
短い旅を終えて帰ってきてから、食に対する構え方が変わった。ネパールの食事のせいと言うつもりはない。前にもそれは呟いたように、かの国の食については不満を抱くほど悪いとは思ってはいない。特に、外国人観光客を目当てにした店は、それなりに種類も多く、味にも工夫をこらしていて良かった。
原因はどういうことかよく分からないが、美味い物を食べるよりか、身体によい食物に関心が高くなって、特に野菜に関してはその傾向が強くなってきた。
故丸元淑生(としお)先生を遠くから私淑してきた者としては、喜ばしい変化だと思っている。
例えば、ブロッコリーは美味いと思ったことがなく、あまり口にしないできた。が、栄養価の高い野菜だということを最近になって改めて知り、今は冷蔵庫の中に入れてある。他にはレタス、ホウレンソウ、アスパラ、ニンジンなどなど。新タマネギもある。
単純、と言えば全くその通りだが、この傾向が今後もさらに強まっていくなら採食主義者に近付いていくかも知れない。なにしろ、かつての基準、美味くなければ料理ではない(どこかで聞いたセリフだが)、が変わるかも知れないのだから。
ただし、ということは、数少ないささやかな楽しみの一つが消えてしまうということでもある。
高齢化社会到来で、やたらと老人に向けた健康食品の宣伝が目立つ。あんな薬もどきにどれほどの効果があるのか、小さく「個人の感想」などという言葉が並ぶが、というより、「本気にするな」とでも言っているような気がする。
ガソリンスタンドに行くと、車に良いからといろいろな化学製品を勧められる。ある人曰く(また消えた)そんなモノが本当に車に必要で、かつ効果があるというなら、自動車メーカーが売り出すだろうと。多くはそれと似たような話かも知れない。
それでも、それに頼よる人もいれば、頼らざるを得ない人もいる。こうした製品で成り立っている企業もあるだろう。
ネパールの牛のことはつい先日呟いたばかりだが、日本の至れり尽くせりの牛にしても、基本は草だ。それであれだけの堂々とした体躯、数百㌔の巨体を維持する。
人間にしても、贅沢三昧の食をほしいままにする人もいれば、その逆の人もいる。大酒飲みもいれば、酒を口にしない人もいる。それでどれほどの違いがあるのだろうか。栄養学を語りに語った丸元先生の死因は、癌だった。
本日はこの辺で。