Photo by Ume氏
太陽の光は薄い雲に遮られて直接届いていないが、穏やかな牧場(まきば)の午後、セミの声だけが聞こえてくる。
午前中は、第1牧区にある電気牧柵下の草刈りをした。そうしないと、電流が漏電して電圧が落ちてしまい、鹿対策にならないからだ。とても半日くらいで終わる仕事ではないから、午後も続く。さらに電気牧柵は第1牧区だけでなく第3にも第4にもある。全部合わせたら3,4キロ、いや、もっとあるかも知れない。昨日の雨で草の伸び方にも勢いがついただろうし、これからしばらくは、草刈りが日々の仕事の大半を占めるようになる。それでいい。
そうそう、今まで一つの群れにまとまっていなかった第1牧区の牛たちが、きょうは御所平に集結していた。それともう一つ、侵入の際感電したのだろう、まだ袋角をした雄鹿が1頭、牧区の外に出られずに森の中を逃げまどっているのをきょうも目にした。
Ume氏のきょうの空撮写真、草原に幾条かの朝日が差し込み、何とも言えない美しさをとらえている。白く見えるのはコナシの花だ。一目見たとき、外国の風景かと錯覚した。右上に第2検査場のパドックが見えるから、それでようやく位置が分かった。今、森の中で鳴き出したカッコーも、時にはこんな景色を目にすることがあるだろうか。あったとしても人のように、それに感動することはないだろう。
人は、何かに感動することができる。ここにいれば、それには事欠かない。朝日も、花咲く草原も、広い空も、遥かな山並みも、鳥の声も、川の流れも、夕日や煌く星も、それぞれがそれなりに、あるいは調和して、一体化して、人の心を揺さぶってくれる。きょうの愛想のない白い太陽でさえも。
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