スウェーデン音楽留学サバイバル日記 ~ニッケルハルパ(nyckelharpa)を学ぶ

スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパを学ぶため留学。日々の生活を様々な視点からレポートします。

好きに弾いて良いと適当なことを言うスウェーデン人

2019-11-13 12:43:58 | ポルスカについて

テノールハルパを和室に置いていたら、3か月で虫に食われました(毛を食べられた)。以前、子どもの使っていないバイオリンを和室に2台ハードケースのまま置いていた時も虫食いに合ったのを思い出しました。南向きの明るい和室でルンバも定期的に掃除して…、畳の部屋は保管に向かないのかも。弓の毛替えは、4-5000円するのでテンション下がります。皆さんもお気をつけて。

さて挑発的なタイトルをつけてしまいましたが、最近、考えさせられるやりとりがあったので、ちょっと書いてみたいと思います。

※このブログ全体、またこの記事は、スウェーデンの伝統音楽について知りたい(学びたい)方に向けて書いています。今でも教科書もなければ基本情報も日本に伝わっこない中、誤解も多く見受けられ、基本的な内容を基礎から伝えたいと思っています。ですが、こうした伝統音楽のメロディを使って色んなアレンジや表現をしたり自由な音楽活動を縛ろうという意図はありませんのでご理解ください。

「守破離(しゅはり)」という言葉をご存知ですか?

日本の武道、茶道など、古い師弟関係で学ぶ「~道」で言われる考え方のことです。「守」は私見を挟まずひたすら基本を真似し、「破」は確立した基本の上に個性が出て(基本を破る、型破り)、離は己のスタイルを確立する(例えば、その人の名前のついた流派が完成)、少しニュアンスが違うかもしれませんが、こういう意味だと思います。

「型破り」「型なし」という言葉が面白いなと思うのですが、「型破り」は「守破離」の「破」ですが、「型なし」は「守」が出来ていない、根っこがない時に言われるようです。

それで、スウェーデンの伝統音楽に話を戻しますが、「伝統」といえば日本語では格好よい響きがありますが、結局のところ「一般民衆の民俗音楽」です。厳しい師弟関係があったり、日本の「○○道」のようなしきたりがある訳でもありません。ですが、数百年続くものには、やはり「型」というか「スタイル」があるものです。でも、ルールブックも師匠もいないから、その見えない縛りがゆるーい。楽しみで弾いている、ほとんどの人は意識をしていないと思います。でも、無意識にその「型」を守っているんです。(どの地域のどの奏者のどのスタイルと、伝統を強く意識している人もいます。)

スウェーデン人はすぐにタイトルのように「好きに弾いて良いから」と言うのです。ホントに良く言います。

日本で、人に指摘されるまで深く考えたことなかったのですが、スウェーデン人は(守破離なんか知らないでしょうが)、守破離でいう「破」の部分に触れているんじゃないかなと思いました。

留学中、ヴェーセンのOlovが先生でしたが、「フォークミュージック(伝統音楽)は自由だ。好きに弾いて良い、まさに君が伝統の一部で、新しい伝統を作るんだ」と最後の授業でいいました(カッコイイ!)。ですが、ウップランド地方に特有のワルツのスウィング感をゴリゴリ出せ!と繰り返し、繰り返し、何度も練習させられ、1時間弾き続けても「ダメ。全然。」と言ったのは、同一人物ですよ。90点じゃアカンって感じでした。つまり、ウップランド・ワルツのノリは鬼コーチだし(守)、その先は自由にしろ(破、離)と、そういうことです。

ゆるーいスウェーデン人集団は、どうやって「型」を無意識に守っているのでしょうか?

推測ですが、曲を覚えたり皆で楽しく弾きたい人は、地方、地域の大小、さまざまなグループに属します。自分が踊りたくなくても、踊らないグループでも、ダンスをしているグループと常に関わり続けます。グループの集まりで、イベントで、色んな機会で弾く時に、演奏だけよりも「ダンス&演奏」という機会が圧倒的に多いです(伝統音楽の多くはダンス曲)。そこで、その曲でそのダンスを踊る時の核となる部分が(それも1曲ずつ曲ごとに)集団の中で暗黙にキープされていくんだと思います。グループに属さず、夏のお祭り(ステンマ)だけ行く人もいますが、上記のような人が大半な中に突入すれば朱に染まるというか、結局、無意識に型を守ってるんじゃないかなと思います。

「ここはどう弾いてもいいよ、好きに」という時は、「核となる部分ではない」から。

もう一つ、好きにどうぞって言われる時は核の部分に影響しない時だと思います。演奏が上手い人、あまり上手じゃない人、初心者、色々なレベルのスウェーデン人がいますが、皆さん、それぞれの曲ごとの核となる部分(言ってみれば「守」にあたる部分)から逸脱した人に私は出会ったことがありません。でも、それは自分の地域の曲を弾いている時の話です。違う地方の人が違う地方の曲を弾いて、あれ?何か違う?というのはスウェーデン人同士でも感じるし、本人も自覚していて。そういう時は、悪意はないのですが「何でそう弾くの?誰に習ったの?」と聞かれます。だから、プロで活躍する伝統音楽奏者も、セッションでは色々弾いてもステージでのレパートリーは出身地の曲ばかり、ということが多いです。(色んな地方の曲を器用に弾く人もいます。)

この「守」の部分はやはり大事だと思います。自分を捨てて、相手のマネをします(書道でお手本みて書く感じ)。メロディをなぞるのではなく、書道でいうなら、筆遣い、緩急、線の細さ、止めハネの勢いや力加減も全部です。どれだけ聞こえて、どれだけ再現できるかは聞き取る力にも左右されます。あてっこクイズで、さてこれは誰の弾き方?ってできるくらい(なんてマニアなクイズ…)。

自分の話になりますが、元々、自分を出したい欲がなかったこともあり、始めた頃から「自分を捨てて型を守る」意識は一番心掛けていました。ちゃんと出来ているかどうかは分かりません。ニクラスに習った曲は「弾き方がニクラスだ!」って言われるしモノマネレベルはまあまあかも。去年、ダニエルに東京で習った曲は「その弾き方、男っぽすぎませんか?」と言われたけど、ダニエルに習ったんだから、そりゃそうです。もちろん、マネしたくないな、と好みに合わなければ、お手本に選びません。馴染んだ後は、自分はこう弾きたいと思う部分は出てくるし、そこは自由だと思います。

CDやYoutubeで本気のモノマネって結構疲れます。本当は目の前にお手本の人がいるほうが簡単。それでもCDでも積み重ねを続けるとコツもつかんでだんだん慣れてくると思います。参考まで。

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