スウェーデン音楽留学サバイバル日記 ~ニッケルハルパ(nyckelharpa)を学ぶ

スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパを学ぶため留学。日々の生活を様々な視点からレポートします。

ウロフに再会

2007-06-03 23:43:52 | スウェーデン生活
ストックホルム在住の友人Lが、近くで小さなステンマ*があるから来る?と言われた。
*ステンマ(stämma):伝統音楽を弾くフェスティバルのようなもの。

とても小さなステンマで、お昼に始まり夕方に終わる(大きいものは、夜通し数日ある)。

ストックホルムと聞いて「自然の豊かな都会の郊外」や学校を借りてするのかな?くらいの想像していた。
行ってびっくり。ヴェンデル(6/2参照)並の田舎だ。
普段利用しているウプトーゲットというローカル電車の終点からテビィ(Täby)へバスに乗り、さらにバスも走っていない外れに、
Täby Spelmansgilleという地元の演奏グループの集会所のような小屋がある。
(その日はLのお父さんが駅から車を出してくれた)

Täby郊外は、ヴェンデル同様、周囲はルーン石碑があったり、バイキング時代以前、水面下だったと思わせる平らな草原。

午前中はウロフ(うちの学校の先生)によるワークショップが行われた。
主催グループのメンバー限定だったけど、友人Lが問い合わせてくれて会費を払うということでメンバーにしてもらったのだ。
さて、当日、会の会長さんMに「はじめまして、今日はありがとう!」と挨拶。
どこかで見た雰囲気の人だ。
でも外人なんて日本人からしたらそんなもの、と思っていた。
ところが、その会長Mが黒い帽子(シルクハットみたいな)をかぶって5弦バイオリン(共鳴弦付のスウェーディッシュ・ヴィオラダ・モーレ)を
手にした瞬間思い出した!
数年前にHovraで開催された1週間コースで一緒だった人だ。
やはりフォーク(民族音楽)の世界は狭い。こんなところで再会するとは。
当時、彼はヴェルムランド地方の曲ばかり弾くからてっきりそっちの人かと思っていた。
そして、あまりに上手すぎて、しかもリーダーの風格もあり、鮮明に覚えている。
びっくりウレシイ再会です。
再会といえば、日本人のSさんカップルにも偶然再会。
そっか、ストックホルム在住だったもんね。こちらも再び、数年ぶりの再会。

さっそくウロフがやってくるとすぐに私達に気づきシェーナ!(やあ!)とにこやかに。
今日は、ニッケルハルパ、コントラバスハルパ、バイオリンを持ってきていた。
同じ曲でも楽器をあれやこれや持ち替えながら進めていく。
なんか変な感じ。

学校でもウロフはしょっちゅうバイオリンを持ってきていた。
おそらくリハやレコーディングのついでに持ってきていたのだろうけど、
ニッケルハルパの学校なので、持って来たバイオリンケースのふたを開けたことはなかった。
そのウロフが「バイオリンで弾いた方が分かりやすい」と言いながらニッケルハルパを置き、すぐにバイオリンに持ちかえるのだ。
タヌキが化けたような不思議なモヤモヤがわいてくる。
北や南に帰っていった友人KやI に教えたくなる。
(とはいえ、私もバイオリンで弾いていた曲はニッケルハルパで弾くと変な感じなので分かるのだけどね)

ワークショップでは曲を教えることが中心。
楽しい雰囲気の中、ウロフも楽しそうでいつもより伸び伸びとしてみえる。
なぜか再び変な感じ。
学校の時のウロフとは違い、かるーく、じゃんじゃん飛ばして進む。
私もこういうイヴェント系のワークショップは何度と受けてこんなものだ知っているのに改めて実感した。
学校は終わったのだ。細かいテクニックやニュアンスはもう教えてくれない、自分で気づくしかない。
改めていかに貴重な1年だったかと思う。

それでも、こういう短いワークショップでも、バイオリンだと曲に終始することが多いけど、ニッケルハルパの場合は
大抵、歴史に触れるのでちょっと面白いかも。時代による楽器の種類。
さらに時代の話から、フランスから来たポロネーズなどフォーク・ミュージックの歴史に触れられる場合が多い。

とは言え、メロディだけでなく、リズム感についてはもう少しはつっこんでやってくれた。
そして気になる発言「アメリカとか外国で教えると、リズムが違ってびっくりすることがあるんだよね。日本とかもね!
むむむ!聞き捨てなりません。
他の人からも、本場を離れると雰囲気やリズムが違って来る話を聞くけど、ここでも再び!
絶対に「ほら、日本人だから」と言わせまい!
(とはいえウロフの「日本で」はジョークだと思う。私の知る限り、日本では一度しか教えてない。
ウソやお世辞が似合わない根が正直なウロフのその時の様子は、そんな風ではなかった)

リズムの特徴、ハウ・ツー
こういう地方性や独特なリズムを身につける場合、一つの地方(村)または一人のプレーヤーに絞って、
特徴を体に入れるがおススメ。
(プレーヤというのは、ウップランド地方だけでみても例えば、ゴース・アンデシュが弾く曲と
サルストレム・ファミリーでは結構違うので)
ダーラナ地方だと村が変わると曲調も変わるので、この地方は特に要注意。
この目的の場合、譜面から入ると×です。特徴も独特なリズムも譜面には書いていません。
(耳と譜面のどちらも、状況がそろっていればOK)
伝統的にも耳で世代から世代へ語り継がれていることを思えば、耳で覚えるのが自然。
離れた日本ならCDで。バンドものよりソロやデュオなどシンプルなトラッドものを。
スピードもバカにできない。ダンス曲なので、早すぎても遅すぎても「分かってないなぁ」と思われます。
(もちろん、それを超越した存在の自己表現ミュージシャンはいます)
その後、他の地方や、他のプレーヤーに移ると違いがはっきりするでしょう。

先日、カイサに言われて気づいたことがある。「ついてくるの上手いよね」と。
言われて思った。
これは私の個人的な考え。
演奏する人は「引っ張るのが上手い」タイプと「ついていくのが上手い」タイプがいると思う。(上手下手ではなく、単に2タイプあるという意味)
プロはどちらも上手いけど、突きつめればどちらかのタイプではないかと思う。
引っ張るのが上手い人は、すごくきらびやかで派手な演奏が出来る。
でも、自分なりの解釈なりを強引に進めて、他の人が合わせないといけなかったりする。
ついていくのが上手い人は、リードを取らせると派手さがあまりないかも。
でも、一緒に弾く人の息づかいや全体の雰囲気を反射的に感じる。
空気を読みながら盛り上げていける。
地方による曲調を身に着けるときは、「ついていく」気持ちは重要だと思います。

話を戻し、ワークショップ終了後ウロフと少し話をした。「カイサに見せてもらった、古い新聞のウロフの写真、別人みたいだったよ!
でも背は今も昔も高いよね」というと
「そう、生まれたときからこの身長」。いやいや、ありえません、190cm。

さて、ステンマが始まり、アル・スペル(みんなで弾く)で入場行進します。
弾きたい人は誰でもやれる。(ふと後ろをみるとウロフも混ざっていた)

後はあちこちで人が集まっては演奏。ミニ簡易ステージでは30分おきにいろんな人が演奏。
ウロフも飛び入りで演奏だ。ステージでバイオリンを弾く姿は見たことないので新鮮(写真右上)。
新作ソロCDの宣伝(5/9参照)をかねています。

ミニ・ステンマなので夕方にはおしまい。
それから友人Lとその友人Hと3人でTäbyの教会まで歩いた。

ストックホルムはガムラ・スタン(Gamla stan)と呼ばれる旧市街以北がウップランド地方。
以南はセーデルマンランド地方に分割される。

それでいうとTäbyはウップランド地方だ。この地方の教会が独特だと書いたことがあるが、Täbyの教会も同タイプ同時代のものらしい。
行くと...ショック。やはり夕方で閉まるみたい。入れなかった。
中は鮮やかな壁画だそう。骸骨とチェスをしている絵などもあるみたい。

でも外壁に面白いものが(写真左下)。
そう、ルーン石碑。「当時は石が足りなくて、ルーン石碑もつかったんだって」とL。
さらにHが補足。「ルーン石碑はキリスト教が入ってくるちょっと前、異教時代のもの。だから異教を取り除いて教会で清める
という意味って聞いたことあるよ」と。

さてToboの駅についたのは23:50ほど。駅と学校を結ぶ途中(写真右下)。
一面、霧に覆われ北西の空に夕焼けが。息を呑む美しさ。
スウェーデンの夏は、冬に見た砂糖をこぼしたような満天の星はもう見られない。
コメント (2)
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