ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅      薬物後遺症と心の傷・・・29

2012-02-10 | 3章 デリー中央精神病院・入院記録
   12月16日(土)(入院して13日)

「ハァーィ・・・ ワァ~ゥ ずいぶん良くなったみたいね」差し出された手の平と指先は握るとふっくらとして温かい、マリの面会。午後、彼女は1人でぼくの病室に入って来た。病院スタッフは正確にぼくの心理と症状の変化を理解していると言える。13日間の禁断の苦しみを乗り越えた中毒者は逆戻りしないと。
「トミーは何故カトマンズへ逃げないの?」
彼女から何度も聞かされた言葉だった。
「ビルはオートバイで印・ネ国境を走り抜けたわ。ピーターもリリースされると直ぐカトマンズへ逃亡した」
「何を考えているの、トミーは?」
マリーの目がぼくに問う。ぼくはカトマンズの外国語学校でネパール語の勉強をしていた。大学でサンスクリットを学びたいという希望を持っていたから。その為には今回の裁判を正式に終了させなければならない。ぼくはカトマンズで勉強が続けられるという甘い考えに拘っていた。だがデリーでの裁判は何年かかるか分からない、その事情を彼女は知っている。
「退院し裁判が続いている間、ドラッグをスタート・アゲインしないと約束できるの?」
それが無理だったら、この病院での治療が終り次第、逃亡してでも帰国すべきだ。今までにない彼女の強い意思をぼくは理解した。正論だ、それしかぼくに残された道はない。
「10年待てばインドへ戻って来られるわ」
 もうネパールへ逃亡するしか方法はない、今、やっと決心がついた。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ジャンキーの旅      ... | トップ | ジャンキーの旅      ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

3章 デリー中央精神病院・入院記録」カテゴリの最新記事