ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅          アシアナ(医療監房)・・・・・11

2013-01-16 | 2章 デリー中央第4刑務所アシアナ



「寝ろ」
と指示を受けていたから眠ろうと努力をするが周囲のざわめきは終わりそうにない。消灯になれば静かになるだろうと思っていたが決まりがあるのだろう2~3ヵ所消しただけで全体の明るさに変化はなかった。皆、眠れないのだろうあっちこっちで話し声が続いていた。
 何故、扇風機を止めないのだろうか、そう思いながら毛布に包まって寝ていたぼくは何やらもぞもぞと動くものを感じた。蚤か、その程度の虫だろう大した事はないと思ったが翌日、英語が分かりそうなインド人に聞いてみた
「ライスだ」と言う、虱か。
蚊、蚤、南京虫、咬みつく蟻、サソリそれに蛭、嫌な虫は一応体験済みだ。虱は初めてだがそれほどの事はないだろうと思っていた。だがこの日から毎夜、虱の攻撃に晒された。身体中赤い斑点だらけになり掻き破った皮膚から汁が出だした。日中、日向に座ってインド人がズボンを裏返し縫い目の部分を爪で潰していた。近寄って見ると白っぽい卵が隙間なく産み付けられていた。それは想像を超えている、あり得ない現実に鳥肌が立ち吐きそうになった。
 ぼくは薬務員に事情を説明し患部を見せ改善と薬を支給してくれるようお願いしたが何もなされなかった。翌日ぼくは事務室に呼ばれ
「お前は外国人だから特別だ」
そんな意味の言葉の後、処方された薬を渡された。ドラッグに溺れアシアナに収監されている多くのインド人は低カーストの出身者だ。一人だけ肌の色がそんなに黒くないインド人がいた。首の皮膚まで症状がでているのを見てぼくは
「薬を貰ってこいよ」
と言ったが奴は首を横に振った。後で奴を見ると何処で手に入れたのか消毒液のようなものを塗っていた。

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