ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅        遠い道・・・・・14

2014-01-04 | 4章 遠い道・逃亡

 久し振りに裁判所へ出頭した。次回の出頭は1月8日と決まった。出発日は遅れるが計画自体の変更はない、スライドするだけだ。
汽車の切符は入手できる、問題は同行するネパール人だけだ。例のカトマンズの売人を引き止めておけば何とかなるだろう。
 裁判所から戻ってぼくはメインバザールを歩いている。キーランGHの入口階段を通り過ぎた。(どこへ行く積もりなんだ、どこへ行くんだ、何を考えている、止めろよ、ホテルへ戻れ)ぼくは通りを真直ぐ歩いた。(馬鹿なことをするな、悪い考えだ、ホテルへ戻れ)ジュース屋と映画館を通り過ぎた。(それだけは止めろ)とぼくの心が叫んだ。ぼくの足は別人になったように前へ歩き続ける。メトロポリスを右折する。ピクニックGHはもう目の前だ。階段を上がる前に一度、ぼくは止った。
もう引き返せない。階段を上りフレッドの部屋のドアをノックした。フレッドにスタッフが手に入ったのは直ぐに分かった。奴の顔は昨日と違う。
「フレッド、スタッフを回してくれ」
「どうするつもりだ、トミー」
「あるか、と聞いているんだ」
「1gならある」
「それをくれ。夕方までに5g用意してくれ」
「マリーは知っているのか?」
「お前、出来ないのか?代わりの売人は幾らでもいる」
「分かった。夕方、来い」
今日の夜行列車での出発だったら、こんなふうにはならなかった。もう良い。デリーにいたらスタッフは切れない。
コメント
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