靴下にはそっとオレンジを忍ばせて

南米出身の夫とアラスカで二男三女を育てる日々、書き留めておきたいこと。

整理、多様なものさしで能力を引き出す教育へ

2012-10-07 00:42:11 | 今週の整理
1.昨夜は家族で映画「ガンジー」を見る。私も夫も数回見たことがあるけれど、子供達は初めて。途中で眠ってしまった三歳次男、身動きせずじっと画面を見つめる上四人。
 南アフリカそしてインドで何度も刑務所に入れられながらも主張を曲げることなく、英国からの独立を叫ぶインドの民衆の怒りが暴力という形で溢れ出せば自ら断食を続け非暴力運動を徹底するよう訴え、国レベルから普段の生活にいたるまで不公平な扱いに対し決して妥協せず、自ら紡いだ衣服を身につけ質素な生活を貫いたその姿に、世界中の人々の良心が揺り起こされた。「私は死ぬ覚悟はあるが、殺す覚悟はない。こん棒で打ちのめされ倒れる姿をもって、彼らの心に働きかけるのだ。彼らが私の屍を手にしたとしても、私の従属は決して手にすることはない。」死を覚悟したガンジーの揺ぎ無い姿勢が心に響く。
「物質的な表れによって他を下に見る弱さを乗り越える」、まずは自身の内にある不公平を日々見つめてみなさいと。人の内に宿る光に上下はないと。
 四人の子供達、それぞれの年なりに感じることがあったよう。「ガンジー」の生き様を一つのモデルとして、大切に記憶に留めて欲しい、いつか必ず力をもらう日がくるだろう。

2.早朝書き、六時半から弁当作り、子供達を学校へ送って9時過ぎに帰宅したら、次男のアクティビティに上の子達のクラスの手伝いに家事に雑事(様々なペーパーワーク&マネージメント山積み)に。子供達が帰宅する三時からは習い事に宿題に予習復習で就寝。毎日リズミカルな分刻みで時が流れる。そこへ来週から次男のプレスクールが週二回各三時間始まる! 十三年ぶりの昼間一人六時間弱、リサーチ・勉強・書く時間につぎ込みたい。ビジョンに向けて次男降ろしてすぐプレスクール近くのカフェに駆け込む予定。こうして少しずつ時間ができてくるんだなあと感慨深い。

3.十三年間、様々な子供遊ばせ会に参加してきたけれど、子供が大きくなるにつれキンダーに入ったりプレスクールの日が増えたりと、会のメンバーも随分と変化してきた。先日、今は中学生の長男を幼児期しょっちゅう遊ばせていた友人と会い「そっか、マチカちゃんてまだやってるんだよね」と笑い合った。あと二年近くで、私も卒業・・・。週に一度の集まりの一つ一つを楽しんでいきたい。赤ちゃん達の温もりに癒されてます。
 卒業間近になると、勉強を再開したり資格試験にチャレンジしたり就職活動を始めるママさんも。時間に少し余裕ができる分より質のよい家事育児を目指したいというママも。友人たちの歩みを応援しつつ、励まされながら私も一歩一歩

4.先日ロビンソンクルーソーの話を子供達と。二十八年もの間、無人島で畑を耕し、家を立て、獲物をとり、毎日木に日を刻み付け日記をつけ、規則正しく暮らし、とできたその精神の強靭さ。僕だったら私だったら・・・、様々な想像に盛り上がる。
 自分を超えていたからこそできたのだろう。自分というのは自分のものではなくて、一時形を与えられているだけのこと。与えられた自分というものを、身体そして命を、大切にしようという自分を超えた姿勢が基本にあったはず。何としてでも自分が生き延びてやるというような気持ちのみでは、二十八年間続けるのは無理。そんなことを話す。

5.米国には三十八週に何らかの「ギフテッド」プログラムがあるといわれる。通常の学級では必要が満たされない生徒への救済措置として、障害のある生徒と同じ「特殊教育(special education)」という位置づけで、公立学校のシステムに組み込まれている。「ギフテッド」とされる子供たちの特徴を把握するためによく用いられるのがBertie Kingore博士の分類。

成績優秀者     
答えを覚えている     
興味を持つ                      
注意深い          
先を行く考えを生み出す       
集団のトップ               
簡単に学ぶ        
6-8回の繰り返しで習得      
課題を時間通りにこなす       
Aを取る   

ギフテッド学習者          
思いがけない質問を持ち出す    
好奇心旺盛
選択的に精神的にはまり込む
複雑で抽象的な考えを生み出す  
集団を超える              
既に知っている           
1-3回の繰り返しで習得     
課題のプロジェクトや拡張を導く 
成績はモーティベーションにならないかもしれない

創造的思考者
例外をみる
さまよう
白昼夢。やるべきことからはずれる
考えに溢れる。進展することの無い考えも多い。
自身の集団にいる
もしこうだったら・・・、と問う
習得する必要性を問う
決して達成されることないより多くのプロジェクトを導く
成績はモーティベーションにならないかもしれない

では、こういった特徴をもった「ギフテッド」とされる子供達はどのように選別されるのかというと、現在ほとんどの州で用いられているのがIQテストや学力テスト。また中学や高校になるほど、IQテストより学力テストが重視される。

多重知能理論(Multiple Intelligence)を提唱した心理学者のHoward Gardnerは、IQテストというのは、人が持つ様々な知能の内、言語知能と、論理数学的知能の二つを測ることができるのみだとする。(その他挙げられている知能とは、音楽的知能、身体運動的知能、空間知能、対人的知能、内省的知能、博物的知能、霊的知能、実存的知能など。)
 つまり現在の「ギフテッド」とされる子供達は、単に成績優秀者や限られた知能で秀でた子供を指しているだけ。それらの狭い範囲で結果を出した子供のみに「ギフト」が与えられているとするのは、現在の教育現場がいかに単一のものさしによっているかを象徴している。「ギフテッド」プログラムという名前は、単に「成績優秀者」や「言語を操ることや論理的思考が得意な子達」のプログラムとすればいい。「ギフト」は全ての子供達に与えられている
「生来持っている潜在能力を成長させていくための環境が大切である。 各知能に優务はない。」という立場に立つGardner氏の多重知能理論に基づき、子供たち一人一人の能力や個性を伸ばしていこうと試みる州も増えてきているという。
狭く限られたものさしで上下に振り分け、皆がこぞって「成績優秀者」を目指す教育から、多様なものさしで一人一人の持つ多様な能力を引き出し育てる教育へと変わっていけたら。それが実現するのならば、世界は変わる

参考資料:
多重知能理論とは? ---Theory of Multiple Intelligence (MI) ---  佐藤 朝美
http://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/affiliate/misawa/download/MISAWA_study1.pdf#search=『Intelligence Reframed: Multiple Intelligences For The 21st Century』Howard Gardner
 

6.思想家で作家のRalph Waldo Emersonの書いたものに、山とリスが喧嘩する寓話がある。山に向かってリスが言う。
Talents differ all is well and wisely put; If I cannot carry forests on my back, neither can you crack a nut.”(才能は様々で、全ての才能はそれぞれうまく据え置かれている。私が背中に林を運べないように、あなたには木の実を砕くことができない。)」
天高くそびえる山と小さな小さなリス、形の表れは大きく違えど、互いの価値に上下があるわけではないと。

7.まずは内に多様なものさしを


初雪もすっかり解け、晩秋アンカレッジより。

Have a wonderful day!