機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

酸素が不足すると癌幹細胞が増加する理由

2016-03-31 06:06:44 | 
How cancer stem cells thrive when oxygen is scarce

March 28, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160328100159.htm

ジョンズ・ホプキンズ大学の科学者たちは、今回のヒトの乳癌細胞とマウスを使った研究は低酸素の状態で特定の癌幹細胞がどのようにして育つのかを説明するという
癌幹細胞は化学療法に抵抗し、さらに腫瘍を転移を促進する傾向があり、そのような細胞の増殖は治療成功への主な障害であると考えられている

胚性幹細胞と乳癌幹細胞の両方ともが低酸素状態で増殖が促進され、それはどちらも同じ生化学的なイベントの連鎖を通じてであることが新しい研究から示唆された
これは障害を通り抜けて成功へと向かう道筋を示すだろう

「まだ多くの疑問が残っているが、しかし進行したヒトの乳癌で見られるような酸素の不足した環境が癌幹細胞を育てる最適な条件nurseryとして働くことを今や我々は理解している」
Gregg Semenza, M.D., Ph.D.は言う
彼はジョンズ・ホプキンズ・キンメルがんセンターの一員であり、教授職のC. Michael Armstrong Professor of Medicineでもある

「それは我々に薬剤の標的をいくつかもたらし、ヒトの癌におけるその脅威を低下させる」

研究の概要はPNASのオンライン版で3月21日に発表される



Semenzaによると科学者たちは低酸素の環境が腫瘍の増殖に影響を及ぼすことを長い間知っていたが、進行した腫瘍ではパラドックスparadoxが存在するという
「悪性の癌には酸素が不足して癌細胞が死に絶えるような領域が含まれるが、このような癌の患者は一般に予後が最も悪い
我々の新たな研究結果は低酸素状態が実際には特定の癌幹細胞の増殖を促進し、それは胚性幹細胞が使うのと同じメカニズムを通じてであることを教える」

全ての幹細胞は未成熟な細胞であり、無限に増殖する能力を持つことで知られている
幹細胞からは特定の細胞タイプへと成熟する前駆細胞が生じ、胚が成長する間に人体の組織を形成し、生涯を通じて生体の組織を補充し続ける
しかし腫瘍で見られる癌幹細胞はそれら胚性幹細胞と同じ特性attributeを使い、歪曲twistさせて癌の生存を促して維持する
Semenzaによると、「化学療法は腫瘍内の癌細胞の99パーセント以上を殺すかもしれないが、癌幹細胞というわずかな集団を殺すことには失敗する。この癌幹細胞は後の再発と転移の原因となる」という

「今回の研究ではこれらの細胞の『アキレスのかかと』を見つけようと努力した
もし癌幹細胞の幹細胞状態を捨てさせることができれば、それらはもはや腫瘍を再び増やし続ける力を持たないだろう」


彼らの研究を助けたのは、我々が呼吸する大気には21パーセントの酸素が含まれるのに対して健康な胸部の組織では約9パーセントであり、乳癌の腫瘍内ではわずか1.4パーセントしか酸素が含まれていないという知識だった
最近の研究で低酸素状態がHIF(hypoxia-inducible factor/低酸素誘導因子)というタンパク質ファミリーのレベルを増大させることが示された
HIFは何百という遺伝子のスイッチを入れ、その中にはNANOGという細胞を幹細胞化させる遺伝子が含まれる

 低酸素→HIF→NANOG mRNA↑→幹細胞化

さらに、胚性幹細胞embryonic stem cellの研究からNANOGタンパク質レベルはメチル化という化学プロセスによって低下しうることが明らかにされた
この場合のメチル化はメッセンジャーRNA(mRNA)というタンパク質の前駆体にメチル基を付加するものである
Semenzaによるとこのメチル化はNANOGのmRNAを破壊してタンパク質が作られないようにするという
それは胚性幹細胞に幹細胞状態を放棄abandonさせ、様々なタイプの細胞へと成熟させる

 メチル化─┤NANOG mRNA


癌幹細胞の再生には胚性幹細胞が使うのと同様の一連のイベントが含まれるかどうか、そしてそのプロセスが酸素レベルによって影響を受けるのかを調べるため、Semenzaたちは二種類の乳癌細胞系統の研究に集中した
この系統は低酸素に応じてALKBH5というタンパク質の生産を上昇させ、ALKBH5はmRNAのメチル基を取り除く

(乳癌は細胞の表面上の3つのホルモン受容体の存在を元にカテゴリー化され治療される
彼らが研究した内の一つはエストロゲンとプロゲステロン受容体を示し、もう一つは3つとも示さないトリプルネガティブである)

彼らはNANOGの分析に集中し、低酸素状態がHIFタンパク質の作用を通じてNANOGのmRNAレベルを増大させることを明らかにした
HIFはALKBH5遺伝子のスイッチを入れ、ALKBH5はメチル化を低下させてNANOGのmRNAが破壊されないようにした

細胞がALKBH5を作れないように妨害するとNANOGレベルは低下し、癌幹細胞の数は減少した
研究者が細胞の遺伝子を操作してALKBH5レベルを増大させると細胞を低酸素に晒さなくてもNANOGのmRNAのメチル化は低下し、乳癌の癌幹細胞の数は増加した

最後に彼らはトリプルネガティブ乳癌の細胞1000個をマウス胸部の脂肪パッドfat padに注入し、マウス版の乳癌を形成させた
手を加えない細胞は注入した7匹のマウス全てに腫瘍を形成したが、
ALKBH5を持たないようにした細胞を使うと14匹中6匹、つまり43パーセントのマウスにしか腫瘍が形成されなかった

「それにより我々はALKBH5が癌幹細胞の存続と腫瘍形成能の維持を助けることを確認した」
Semenzaは言う


Semenzaのチームはこれからもマウスの研究を継続し、転移も低酸素/ALKBH5/NANOGの関係によって影響を受けるのかどうかを研究するつもりだという
彼らはこの関係に他のどんなタンパク質やmRNAが関与するのかを調べ、また、彼らがテストした癌の細胞系統の中には低酸素に応じて同様のALKBH5レベル増大を示さなかったものがあったのはなぜなのかを研究したいという


http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1602883113
Hypoxia induces the breast cancer stem cell phenotype by HIF-dependent and ALKBH5-mediated m6A-demethylation of NANOG mRNA.
低酸素状態はHIF依存的にALKBH5を介してNANOGのmRNAからm6Aを脱メチル化することにより乳癌の幹細胞表現型を誘導する

Significance
NANOGのような多能性ファクターは癌幹細胞の維持と特殊化において重要な役割を演じる
癌幹細胞は原発腫瘍の形成と転移に必須である

今回の研究で我々は乳癌細胞を腫瘍の微小環境の決定的な特徴である低酸素に曝露させると
N6-メチルアデノシン/N6-methyladenosine(m6A)の脱メチル化を誘導してNANOGのmRNAを安定化させ、
それにより乳癌幹細胞(BCSC)表現型が促進されることを報告する

m6Aを脱メチル化するAlkB homolog 5 (ALKBH5) を阻害するか、
低酸素の乳癌細胞でALKBH5遺伝子の転写を活性化するHIF-1α/HIF-2αを阻害することは、
NANOGの発現を低下させてin vivoでBCSCを標的にする効果的な戦略である


Abstract
mRNAのN6-メチルアデノシン (m6A) による修飾は、胚性幹細胞の多分化能pluripotencyの調節に関与する

MDA-MB-231という乳癌細胞におけるALKBH5発現をノックダウンした結果、BCSCの数が減少し、その腫瘍開始能を有意に低下させた



関連記事
https://blog.goo.ne.jp/news-t/e/cce233b5cfcfa9bc5ab09af62ccdcff6
低酸素ならびにアデノシンが多い微小環境でT細胞はA2Aアデノシン受容体を介して阻害される



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/d16ba27c8f39c536b11eafaa6804ec93
脳腫瘍は低酸素でセリンからグリシンへの変換を促進するSHMT2の発現を上昇させてPKM2を抑制し、TCA回路に入るピルビン酸を減少させて酸素の消費を抑える



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/05/150507145325.htm
乳癌細胞は低酸素に曝露するとtRNAの断片を作り、特定のアミノ酸のtRNA断片(グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、チロシン)が多い癌細胞は転移しにくくなる
さらに、この断片を癌細胞に加えると増殖と進行が減少した

http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.02.053
Endogenous tRNA-Derived Fragments Suppress Breast Cancer Progression via YBX1 Displacement
内因性tRNA由来の断片は、YBX1の置き換えにより乳癌の進行を抑制する