機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

免疫系を阻害する腫瘍の酸性環境を中和する

2016-03-22 06:06:28 | 癌の治療法
Neutralizing tumor acidic environment improves immune-targeting therapies

Sodium bicarbonate combined with PD-1 or CTLA-4 Inhibitors or adoptive T-cell transfer reduces melanoma and pancreatic tumor growth

March 17, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160317114538.htm

癌細胞は腫瘍内の酸性環境でも増殖することが可能だが、免疫細胞のような普通の細胞にとって酸性は有害である
今週出版されるCancer Research誌のカバー論文cover articleで、モフィットがんセンター/Moffitt Cancer Centerは
酸性の腫瘍環境を中和することでいくつかの免疫を標的とする癌療法の効能が増加すると報告した


腫瘍細胞の代謝増大と血管の少なさによって生じる酸性の環境でも充実性腫瘍は生き残る
しかし酸性度の上昇は免疫細胞のいくつかの機能を低下させ、結果として腫瘍も生存につながる
加えて腫瘍は免疫細胞の機能を阻害するタンパク質を発現することにより免疫系による検出を回避する

免疫を抑制するタンパク質のPD-1やCTLA-4を標的とする薬剤など、免疫系を再び刺激するいくつかの治療法が現在FDAによって承認されたか臨床開発中である
これらの薬剤は臨床的に有望な作用を示してきたものの患者の応答率はわずか11パーセントから27パーセントの幅に留まっており、
このことは他の治療法との組み合わせによって改善される可能性を示唆している

モフィットの研究者は酸性環境がどのようにして免疫細胞の機能ならびにPD-1/CTLA-4を標的とする治療法に影響するのかを評価したいと考えた
実験の結果、酸性環境はT細胞という免疫細胞の活性を低下させることが明らかになった
研究者はこの酸性環境を中和することが腫瘍を標的としうるT細胞を再活性化して腫瘍増殖に影響すると仮説を立てた

研究チームが中和剤の炭酸水素ナトリウム/sodium bicarbonate(重曹)をマウスに投与したところ、炭酸水素ナトリウムそれ自体はマウスのメラノーマ腫瘍の増殖を抑制しなかったものの、腫瘍内部のT細胞レベルを実際に増加させた
炭酸水素ナトリウムが腫瘍内のT細胞レベルを増大させることから、さらに免疫系を刺激するPD-1/CTLA-4阻害剤と組み合わせることでうまくいく可能性が示唆された

研究者が炭酸水素ナトリウムとCTLA-4/PD-1阻害剤を組み合わせてマウスに投与すると、それぞれ単体の投与よりもメラノーマと膵臓腫瘍の増殖を低下させることが示された
患者の腫瘍に対して特に活性の高いT細胞の注入はそれらとは別の有望な免疫療法だが、これも重炭酸bicarbonateとの組み合わせでさらに高い効能を示す

「腫瘍の微小環境で遭遇encounterdする酸性のpHには免疫を著しく抑制する効果がある
これを緩衝剤bufferで中和することにより、メラノーマと膵臓腫瘍の免疫療法への応答を改善することが可能である」
モフィットの癌画像化・代謝部門のchairであるRobert J. Gillies, Ph.D.は言う

この論文の筆頭著者first authorであるShari Pilon-Thomas, Ph.D.は次のように付け加える
「今回の研究は、腫瘍に由来する酸を腫瘍によって分泌される免疫抑制要素のリストとして加えるものだ」


将来モフィットの研究者は炭酸水素ナトリウムの投与が膵臓癌とメラノーマ患者における抗PD-1療法の効能を増大させるかどうかを評価するための臨床試験を開始する計画である


http://dx.doi.org/10.1158/0008-5472.CAN-15-1743
Neutralization of Tumor Acidity Improves Antitumor Responses to Immunotherapy.
腫瘍酸性度の中和は免疫療法に対する抗腫瘍応答を改善する

Abstract
酸性のpH環境はin vitroでT細胞の活性化を阻害し、T細胞の解糖系を制限する

加えて、インターフェロンγ(IFN-γ)の放出は酸性pHによって阻害されるが、それは安定状態のmRNAのレベルでは起きない
これは酸性の影響がmRNAからの翻訳後posttranslationalであることを意味する

酸性化acidificationは細胞質のpHには影響しない
このことは細胞外の酸性度によって伝達されるシグナルsignal transduced by external acidityは『酸性を感知する特定の受容体』によって仲介される可能性が高いことを示唆する
それらの受容体のうち4つはT細胞が発現している

特筆すべきは/notably、重炭酸の単独投与monotherapyによる腫瘍酸性度の中和はマウスでいくつかのタイプの癌の増殖を低下させ、それはT細胞浸潤の増大と関連があったことである

さらに、抗CTLA-4、抗PD1、T細胞の養子免疫療法と重炭酸療法との組み合わせは多くのモデルで抗腫瘍応答を改善improveさせ、中には治癒cureする対象も存在した

全体として、我々の研究結果は経口緩衝剤療法を通じた腫瘍内のpH上昇がどのようにして免疫療法への応答を改善することが可能なのかを示すものであり、臨床的に即刻トランスレーションできる潜在性を持つ



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2013/01/130125111145.htm
責任著者corresponding authorでありモフィットの癌画像化・代謝部門のchairであるRobert J. Gillies, Ph.D.によると、腫瘍の浸潤は正常または正常に近いpHレベルでは起きず、炭酸水素ナトリウムsodium bicarbonateを経口投与して中和したところ、浸潤は止まったという
「血管形成が乱れることにより腫瘍の酸性度は上昇するが、
その理由の一つは灌流の低下により酸素を制限し、グルコースの発酵の速度/率rateを上昇させるためである
二つ目は灌流の低下が乳酸などの酸の除去を低下させ、周囲の組織のpHは非常に低くなることによる」

腫瘍細胞が酸性度の上昇に適応するにつれて、正常な細胞の死を通じたニッチ操作と新血管形成が腫瘍内に生じて、免疫応答が抑制される
「腫瘍細胞は悪性細胞には無害だが通常細胞/組織には負の影響を与える酸性環境を作ることによりニッチを操作して、悪性細胞の局所的な浸潤を促進する」



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160125114243.htm
通常は細胞内がわずかに酸性で細胞外がわずかにアルカリ性だが、増殖する組織ではそれが逆になり『pHの濃度勾配の逆転/pH Gradient Reversal』が起きる
細胞外の高い酸性度は通常の細胞には有害だが腫瘍細胞には増殖の利点となる
タンパク質分解を促進し、ゲノム不安定を増大させ、免疫を抑制し、治療抵抗性と血管形成を引き起こすことにより、腫瘍発生をさらに促進する
細胞内のアルカリ度の上昇は、腫瘍を細胞外の酸性によるアポトーシスの誘発から保護し、増殖を促進する
これは腫瘍発生の極めて早くに起きて、解糖系の酵素の活性を増大させ、癌の構成材料(核酸など)の産生を促進する
それはDNA損傷によって仲介される細胞周期の停止を阻害し、G2からM期への移行を促進する
これが腫瘍細胞の無制限の増殖と遺伝子不安定性の蓄積につながる

果物と野菜の豊富な低塩分食は、そのアルカリ性の性質によって腫瘍による『pHの濃度勾配の逆転』を最小限に抑え、それにより悪性の性質を低下させて治療抵抗性を抑える
さらに、腫瘍のこのようなpHの特徴を特に標的とする治療法は、腫瘍細胞を殺すことのみに焦点を合わせた伝統的な治療法に対して価値ある補助薬valuable adjunctをもたらす可能性が高く、毒性が強く非選択的な古い治療選択を置き換えることさえありうる



関連記事
https://blog.goo.ne.jp/news-t/e/dd5f0507eea0b2e78f76bbccbba164a1
腫瘍の酸性pHはクロロキンのオートファジー阻害効果を妨害する



関連記事
https://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c691e0fc29bad7b91da9873028ec9e5e
癌細胞はグルコースを強奪してT細胞を去勢する



関連記事
https://blog.goo.ne.jp/news-t/e/cce233b5cfcfa9bc5ab09af62ccdcff6
低酸素ならびに細胞外アデノシンが豊富な腫瘍微小環境では、抗腫瘍T細胞はA2Aアデノシン受容体を介して回避または阻害される



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2011/09/110919121808.htm
T細胞を引き付けるCCL2は、腫瘍が作る有害な活性窒素種/reactive nitrogen species(RNS)によって修飾され、効果を失う

※活性窒素: NO・(一酸化窒素nitric oxide)、NO2+(二酸化窒素カチオンnitronium cation)、ONOO-(ペルオキソ亜硝酸peroxonitrite)、LOONO(アルキルペルオキソ亜硝酸alkyl peroxonitrite) など