Scientists discover how proteins in the brain build-up rapidly in Alzheimer's
July 18, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160718133005.htm
(
Artist's rendering of protein fibrils (in blue) and healthy proteins from computer simulations.
Credit: Ivan Barun)
ケンブリッジ大学の研究者は、アルツハイマー病の特徴であり疾患を引き起こすとされる『斑点/プラークplaque』が急速に蓄積build-upするメカニズムを突き止め、それが制御可能であるという可能性を示した
生物学的な分子、例えばDNAのような分子が持つ自己を複製する能力は生命の基盤foundationであり、そのプロセスにはたいてい複雑な細胞機構が携わっている
しかしながら、特定のタンパク質構造の中にはそのような補助を何ら必要とせず、どうにかしてmanage自己を複製するものがある
それは例えばアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患に関与するタンパク質の微小繊維(原繊維fibril)である
原繊維はアミロイドとしても知られ、お互いに絡み合ってintertwinedもつれるentangledようになり、アルツハイマー病患者の脳内で見られる『プラークplaque』が形成される
初めのアミロイド原繊維amyloid fibrilsの自発的な形成は非常にゆっくりで、典型的には数十年かかるとされ、これはアルツハイマー病にかかるのが一般に年老いた人々であることの説明になる可能性がある
しかしながら、いったん最初の原繊維が形成されると、それらは勝手にひとりでに複製して非常に急速に拡散し始める
しかし、その重要性にもかかわらずタンパク質原繊維がどのようにして何の助けも借りずに自己複製を可能にするのかという根本的なメカニズムは十分に理解されていない
本日7月18日にNature Physics誌で発表された研究でケンブリッジ大学化学部の研究者を中心とするチームは、コンピュータシミュレーションと研究室での実験を組み合わせた強力な手法により、タンパク質原繊維の自己複製に必要な条件necessary requirementsを突き止めた
原繊維の自己複製は一見すると複雑なプロセスだが、実際にはシンプルな物理学的メカニズムによって支配されていることを彼らは発見した
つまり『正常なタンパク質は既存の原繊維の表面上に蓄積build-upする』だけだという
アルツハイマー病の脳内で見られるアミロイドプラークを主に構成するアミロイドベータ(Aβ)という分子を使った研究で、既存の原繊維の上に沈着depositedする正常なタンパク質の量と
原繊維の自己複製の速度との間には関連があることを彼らは発見した
言い換えると、タンパク質が原繊維の上に蓄積すれば蓄積するほど、自己複製は速くなるのである
また、彼らは原理証明proof of principleとして、正常なタンパク質がどのようにして原繊維の表面と相互作用するのかを変化させることによって原繊維の自己複製をコントロール可能であることも示した
研究の筆頭著者であるAndela Saric博士は言う
「アミロイドプラーク形成の謎の一つは、その長くて遅い形成過程の後にどうやったら進行スピードが速くなるのかということだ
我々はその要素を突き止めたが、それは一部の要素にもかかわらず実際にはシステム全体にその自己活性を触媒させ、やがて暴走プロセスrunaway processとなる
しかし今回の発見は、もし原繊維上への正常タンパク質の蓄積build-upをコントロールできれば、プラークの凝集と拡散を制限できるのかもしれないことを示唆している」
Saric博士はこの研究結果がナノテクノロジーの分野においても非常に興味深いと論じる
「ナノテクノロジーにおいていまだ満たされていない目標の一つはナノマテリアルの製造における効率的な自己複製の獲得であり、それはまさに今回我々が原繊維上で観察した出来事である
もしこのプロセスから設計のルールを学ぶことができれば、我々は目標を達成できるのかもしれない」
http://dx.doi.org/10.1038/NPHYS3828
Physical determinants of the self-replication of protein fibrils.
タンパク質原繊維の自己複製を物理的に決定する要因
Abstract
生物学的分子の自己複製能力は生命の基盤であり、それには完全な細胞機構を必要とする
しかしながら、様々な異常プロセスで そのような機構による補助をまったく必要としない、タンパク質構造の病的な自己複製を生じることがある
その例の一つは、神経変性疾患に関与するアミロイド原繊維のような、タンパク質病的凝集の自触媒的な生成autocatalytic generationである
今回我々はコンピュータシミュレーションを使い タンパク質原繊維形成の自己複製に必要な条件necessary requirementsを明らかにした
我々は このプロセスにとって鍵となる物理的な決定要因physical determinantが 原繊維表面へのタンパク質の親和性affinityであることを確証する
我々は 自己複製が 非常に狭いタンパク質間相互作用の状況regimeにおいてのみ起きることを発見した
このことはシステムのパラメーターならびに実験コンディションの高レベルな感受性を暗示する
我々は次に、我々の理論上の予測を アルツハイマー病関連のAβペプチドから形成される原繊維の動力学的な計測ならびにバイオセンサーによる計測と比較した
我々の結果は 自己複製の動力学the kinetics of self-replication と 単一分子による原繊維表面の被覆範囲the surface coverage of fibrils by monomeric proteins との間の量的なつながりを示す
※coverage: 何かの表面を占める範囲、被覆の度合い
これらの研究結果は、自己複製を可能にする 分子上位構造supra-molecular structuresが形成されるために必要な根本的な物理的条件を明らかにし、また自然のタンパク質凝集の増幅において演じられるメカニズムに光を当てるものである
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4489cc5b1e62d53015ae6308cff85370
α-シヌクレインの凝集しやすい領域(NAC)はどのように保護されているのか
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2eed1af5a640a3c03687d4ce78607041
アミロイドベータの蓄積とタウの病理的な変換が両方とも必要なマウス
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4f45339247c461908bced75811084a23
短いAβ4-42は長いAβ1-42と比べて銅と結合する能力が1000倍も強く、フリーラジカルを生じないようにする
関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160610173603.htm
Aβ42の22番目のL-グルタミン酸をD-グルタミン酸に変更すると毒性が高まる
遺伝性若年性アルツハイマー病と関連するいくつかの突然変異は22番目のグルタミン酸に影響し、他のアミノ酸に入れ替わったり消失する
※Aβ42の配列
1-DAEFR HDSGY EVHHQ KLVFF AE(※)DVG SNKGA IIGLM VGGVV IA-42
関連サイト
http://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%AD
※Aβの凝集性を変化させる遺伝子変異
Arctic変異(E693G(Aβ配列としてE22G)
Osaka変異(ΔE693(Aβ配列としてΔE22)
Dutch変異(E693Q(Aβ配列としてE22Q)
Arctic変異とDutch変異はともにin vitroでアミロイド線維形成能が高い[38]。
Arctic変異はAβ線維形成過程の中間段階で生じるプロトフィブリルの形成を亢進・安定化する[39]。
Osaka変異をもつAβはアミロイド線維を形成せずオリゴマーの形で留まり、シナプス毒性を示す[40]。
July 18, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160718133005.htm
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Artist's rendering of protein fibrils (in blue) and healthy proteins from computer simulations.
Credit: Ivan Barun)
ケンブリッジ大学の研究者は、アルツハイマー病の特徴であり疾患を引き起こすとされる『斑点/プラークplaque』が急速に蓄積build-upするメカニズムを突き止め、それが制御可能であるという可能性を示した
生物学的な分子、例えばDNAのような分子が持つ自己を複製する能力は生命の基盤foundationであり、そのプロセスにはたいてい複雑な細胞機構が携わっている
しかしながら、特定のタンパク質構造の中にはそのような補助を何ら必要とせず、どうにかしてmanage自己を複製するものがある
それは例えばアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患に関与するタンパク質の微小繊維(原繊維fibril)である
原繊維はアミロイドとしても知られ、お互いに絡み合ってintertwinedもつれるentangledようになり、アルツハイマー病患者の脳内で見られる『プラークplaque』が形成される
初めのアミロイド原繊維amyloid fibrilsの自発的な形成は非常にゆっくりで、典型的には数十年かかるとされ、これはアルツハイマー病にかかるのが一般に年老いた人々であることの説明になる可能性がある
しかしながら、いったん最初の原繊維が形成されると、それらは勝手にひとりでに複製して非常に急速に拡散し始める
しかし、その重要性にもかかわらずタンパク質原繊維がどのようにして何の助けも借りずに自己複製を可能にするのかという根本的なメカニズムは十分に理解されていない
本日7月18日にNature Physics誌で発表された研究でケンブリッジ大学化学部の研究者を中心とするチームは、コンピュータシミュレーションと研究室での実験を組み合わせた強力な手法により、タンパク質原繊維の自己複製に必要な条件necessary requirementsを突き止めた
原繊維の自己複製は一見すると複雑なプロセスだが、実際にはシンプルな物理学的メカニズムによって支配されていることを彼らは発見した
つまり『正常なタンパク質は既存の原繊維の表面上に蓄積build-upする』だけだという
アルツハイマー病の脳内で見られるアミロイドプラークを主に構成するアミロイドベータ(Aβ)という分子を使った研究で、既存の原繊維の上に沈着depositedする正常なタンパク質の量と
原繊維の自己複製の速度との間には関連があることを彼らは発見した
言い換えると、タンパク質が原繊維の上に蓄積すれば蓄積するほど、自己複製は速くなるのである
また、彼らは原理証明proof of principleとして、正常なタンパク質がどのようにして原繊維の表面と相互作用するのかを変化させることによって原繊維の自己複製をコントロール可能であることも示した
研究の筆頭著者であるAndela Saric博士は言う
「アミロイドプラーク形成の謎の一つは、その長くて遅い形成過程の後にどうやったら進行スピードが速くなるのかということだ
我々はその要素を突き止めたが、それは一部の要素にもかかわらず実際にはシステム全体にその自己活性を触媒させ、やがて暴走プロセスrunaway processとなる
しかし今回の発見は、もし原繊維上への正常タンパク質の蓄積build-upをコントロールできれば、プラークの凝集と拡散を制限できるのかもしれないことを示唆している」
Saric博士はこの研究結果がナノテクノロジーの分野においても非常に興味深いと論じる
「ナノテクノロジーにおいていまだ満たされていない目標の一つはナノマテリアルの製造における効率的な自己複製の獲得であり、それはまさに今回我々が原繊維上で観察した出来事である
もしこのプロセスから設計のルールを学ぶことができれば、我々は目標を達成できるのかもしれない」
http://dx.doi.org/10.1038/NPHYS3828
Physical determinants of the self-replication of protein fibrils.
タンパク質原繊維の自己複製を物理的に決定する要因
Abstract
生物学的分子の自己複製能力は生命の基盤であり、それには完全な細胞機構を必要とする
しかしながら、様々な異常プロセスで そのような機構による補助をまったく必要としない、タンパク質構造の病的な自己複製を生じることがある
その例の一つは、神経変性疾患に関与するアミロイド原繊維のような、タンパク質病的凝集の自触媒的な生成autocatalytic generationである
今回我々はコンピュータシミュレーションを使い タンパク質原繊維形成の自己複製に必要な条件necessary requirementsを明らかにした
我々は このプロセスにとって鍵となる物理的な決定要因physical determinantが 原繊維表面へのタンパク質の親和性affinityであることを確証する
我々は 自己複製が 非常に狭いタンパク質間相互作用の状況regimeにおいてのみ起きることを発見した
このことはシステムのパラメーターならびに実験コンディションの高レベルな感受性を暗示する
我々は次に、我々の理論上の予測を アルツハイマー病関連のAβペプチドから形成される原繊維の動力学的な計測ならびにバイオセンサーによる計測と比較した
我々の結果は 自己複製の動力学the kinetics of self-replication と 単一分子による原繊維表面の被覆範囲the surface coverage of fibrils by monomeric proteins との間の量的なつながりを示す
※coverage: 何かの表面を占める範囲、被覆の度合い
これらの研究結果は、自己複製を可能にする 分子上位構造supra-molecular structuresが形成されるために必要な根本的な物理的条件を明らかにし、また自然のタンパク質凝集の増幅において演じられるメカニズムに光を当てるものである
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4489cc5b1e62d53015ae6308cff85370
α-シヌクレインの凝集しやすい領域(NAC)はどのように保護されているのか
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2eed1af5a640a3c03687d4ce78607041
アミロイドベータの蓄積とタウの病理的な変換が両方とも必要なマウス
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4f45339247c461908bced75811084a23
短いAβ4-42は長いAβ1-42と比べて銅と結合する能力が1000倍も強く、フリーラジカルを生じないようにする
関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160610173603.htm
Aβ42の22番目のL-グルタミン酸をD-グルタミン酸に変更すると毒性が高まる
遺伝性若年性アルツハイマー病と関連するいくつかの突然変異は22番目のグルタミン酸に影響し、他のアミノ酸に入れ替わったり消失する
※Aβ42の配列
1-DAEFR HDSGY EVHHQ KLVFF AE(※)DVG SNKGA IIGLM VGGVV IA-42
関連サイト
http://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%AD
※Aβの凝集性を変化させる遺伝子変異
Arctic変異(E693G(Aβ配列としてE22G)
Osaka変異(ΔE693(Aβ配列としてΔE22)
Dutch変異(E693Q(Aβ配列としてE22Q)
Arctic変異とDutch変異はともにin vitroでアミロイド線維形成能が高い[38]。
Arctic変異はAβ線維形成過程の中間段階で生じるプロトフィブリルの形成を亢進・安定化する[39]。
Osaka変異をもつAβはアミロイド線維を形成せずオリゴマーの形で留まり、シナプス毒性を示す[40]。