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活性化したc-Ablはパーキンを停止させる

2016-07-06 06:06:35 | 
Parkinson's: Excess of protein suggests new target for treatment with widely used anti-cancer drug imatinib

October 4, 2010

https://www.sciencedaily.com/releases/2010/10/101001163342.htm

ジョンズ・ホプキンズの科学者は、過剰に活性化したタンパク質の一つが 脳の保護的な効果をもたらす分子を停止させ、パーキンソン病で最も広く見られるタイプを促進することを明らかにした
このメカニズムの発見により、既にそのタンパク質を阻害することが知られている薬剤を使ってアメリカの老人100万人が罹患している疾患の症状をコントロールできるようになるかもしれない


以前の研究で、パーキンというタンパク質は、有害な分子に『タグを付け』てそれを破壊させることにより脳細胞を保護することが実証されている
さらに、パーキンをコードする遺伝子の突然変異は、まれな家族性パーキンソン病を引き起こすことも知られている
しかしながら、ヒトが年を取るにつれて発症率が増加する散発性sporadicの遅発性パーキンソン病におけるパーキンの役割は不明なままである

2010年9月7日にPNAS誌オンライン速報版で発表される今回の新たな研究結果は、過剰に活性化したc-Ablというタンパク質がパーキンの活性を停止させ、脳細胞を殺してパーキンソン病を進行させる有害なタンパク質が蓄積する一因となることを示す


c-Ablは細胞死の調節に寄与し、数多くの疾患に関与している
c-Ablはイマチニブ(グリベック)のような抗癌剤の標的であることが既に証明されており、癌の増殖に不可欠なタンパク質を標的にする生化学的シグナルのスイッチを直接切るようにデザインされた初めての薬であるとTed Dawson, M.D., Ph.D.は言う
彼は神経変性疾患におけるLeonard and Madlyn Abramson Professor教授職であり、ジョンズ・ホプキンス細胞工学研究所の科学顧問scientific directorである


「我々が新たに認識した散発性パーキンソン病におけるc-Ablの役割は、脳に浸透するc-Abl阻害剤がパーキンの正常な保護的機能を維持するために使えることを示唆する」
Dawsonは言う

「既に承認されて十分な忍容性のある薬剤をパーキンソン病のニューロンを保護するという新たな治療目的のためにテストすることは、追求すべきエキサイティングな目標arcである」

※記事ではarcと書かれているが、おそらくarchのことだろう(アーチ、凱旋門triumphal arch)


研究者は初めに、培養したニューロンのようなヒトの細胞でウェスタンブロットという方法を用いて特定のタンパク質にラベルをつけて観察した
健康な状態では破壊されるタンパク質の目印となる化学的なタグtag(ユビキチン)を計測した結果、c-Ablはパーキンの活性を停止させることがわかった
この破壊されるべき『がらくた』タンパク質garbage proteinsが過剰だとニューロンにとって選択的に有害であることが以前Dawsonのラボで観察されている
c-Ablが活発化していると、そのような『がらくた』にタグを付けるパーキンの能力は著しく低下した

※パーキンはユビキチンE3リガーゼで、ユビキチンを付加する能力がある


研究チームはこれらの細胞を、c-Abl阻害剤として有名なSTI-571と共に培養した(STI-571は一般にはイマチニブ(グリベック)として販売されている)
実験の結果、STI-571を加えた培養では、STI-571を加えなかったものと比較してc-Ablによるパーキンの機能の阻害は完全に抑制されていた

c-Abl阻害剤のSTI-571は2001年には白血病の治療薬として、2002年にはまれなタイプの胃癌の治療用としてFDAによって承認されている
STI-571は通常よりも活性が高い異常なc-Ablタンパク質の活性を阻害することによって作用する
しかし、c-Abl阻害剤がパーキンソン病の治療薬として効果を発揮するためには血液脳関門を越える必要があるだろうとDawsonは言う

Dawsonたちは次にパーキンソン病のような特徴traitを引き起こす薬剤を与えたマウスを使って実験を行い、c-Ablが活性化しているとパーキンの機能は停止し、結果として『がらくた』タンパク質が蓄積して、ニューロンが著しく失われることを証明した

また、c-Ablをノックアウトするように遺伝学的に操作したマウスがニューロンの喪失から保護されることも研究チームは実証した
彼らがニューロンの喪失を数えたところ、野生型(通常の)マウスではニューロンが8000個失われたのに対して、c-Ablをノックアウトしたマウスは約半分しか失われていなかった

※数詞 + that many: そんなに多くは

最後に科学者たちはヒトの脳組織に注目し、c-Ablはパーキンの機能を調節する主要な要素かどうかの証拠を探した
パーキンソン病で亡くなった患者の脳組織を他の原因で亡くなった人たちの脳組織と比較したところ、c-Ablはパーキンを停止させ、『がらくた』タンパク質が蓄積し、結果としてニューロンが死ぬことが確かめられた


「長く生きれば生きるほど、多くのヒトがこの消耗性debilitatingの神経疾患を発症する」とDawsonは言い、60歳で100人に1人が罹患し、80歳までにはそれが4倍になることに彼は言及するcite

「そのメカニズムがわかった今重要なことは、その進行を遅くするか止めるための新しい有効な治療法を探すことである」

この研究はNational Institutes of Health(NIH)とバッハマン-シュトラウス・ジストニア&パーキンソン病財団によって出資された


http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1006083107
Phosphorylation by the c-Abl protein tyrosine kinase inhibits parkin's ubiquitination and protective function.
c-Ablタンパク質チロシンキナーゼによるリン酸化は、パーキンによるユビキチン化ならびに保護的機能を阻害する


Abstract
ユビキチンE3リガーゼをコードする遺伝子であるParkin(PARK2)の突然変異は、常染色体劣性パーキンソン病を引き起こす

今回我々は非受容体チロシンキナーゼc-Ablがパーキンのチロシン143をリン酸化してパーキンのユビキチンE3リガーゼ活性ならびに保護的機能を阻害することを示す

c-Ablはドーパミン作動性ストレスdopaminergic stress、ならびにドーパミン作動性神経毒dopaminergic neurotoxinのMPP+とMPTPによってin vitroとin vivoで活性化される
c-Abl活性化の結果としてパーキンが不活化し、パーキンの基質であるAIMP2/p38/JTV-1、FBP1が蓄積され、細胞死に至る

※MPP+: 1-methyl-4-phenylpyridinium
※MPTP: 1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine

AIMP2/p38/JTV-1: aminoacyl-tRNA synthetase-interacting multifunctional protein type 2
FBP1: fuse-binding protein 1


c-Ablファミリーキナーゼの阻害剤であるSTI-571はパーキンのリン酸化を阻害し、パーキンを触媒的に活性化した保護的状態に維持する
スモールヘアピンRNA(shRNA)によるパーキンのノックダウンはSTI-571による保護を抑制したので、STI-571の保護的な効果にはパーキンが必要である
神経系におけるc-Ablのコンディショナルなノックアウトもパーキンのリン酸化を阻害し、その基質の蓄積を抑制して、MPTPの中毒intoxicationに応じて起きる神経毒性も抑制された
パーキンソン病患者の死後脳においてc-Ablは活性化しており、パーキンのチロシン残基はリン酸化され、AIMP2とFBP1が黒質と線条体に蓄積していた

ゆえに、c-Ablによるパーキンのチロシン143リン酸化はパーキンの機能を阻害する主な翻訳後修飾であり、散発性sporadicパーキンソン病の病理発生pathogenesisにおそらく寄与する
さらに、c-Ablの阻害はパーキンソン病の治療において神経保護的なアプローチである可能性がある



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