Researchers find that immune cells play unexpected role in Lou Gehrig's disease
Findings raise hope for new ALS treatments that target immune cell dysfunction
March 17, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160317145954.htm
シーダーズ・サイナイメディカルセンター/Cedars-Sinai Medical Centerの研究者たちは、脳内の免疫細胞が『筋萎縮性側索硬化症/amyotrophic lateral sclerosis(ALS)』の発症に直接関与することを明らかにした
この発見はこの徐々に麻痺して死に至る神経変性疾患を標的とする新しい治療法への希望をもたらす
この研究成果はScience誌で3月18日に発表された
この研究ではALSならびに前頭側頭型認知症/frontotemporal dementia(FTD)を引き起こす遺伝子の突然変異に焦点を当てた
FTDはもう一つの神経疾患であり、典型的な特徴として性格personalityや行動behavior、言葉遣いlanguageが変化する
研究者はC9orf72という遺伝子を持たない二系統のマウスを開発し、それが脳内の免疫系の機能にとって重要であることを発見した
この遺伝子を持たないマウスはALSを発症せず、意外なことに免疫系の異常を生じた
免疫細胞の内部の構造の一つであるリソソームは通常細胞内の望ましくないものを処理しているが、C9orf72遺伝子を持たないマウスの免疫細胞ではリソソームが適切に機能するのを止めた
「C9orf72遺伝子は脳内の免疫細胞が適切に機能するために決定的に重要である
脳内の免疫系は単純に損傷に応答するよりむしろ積極的に疾患に関与していることを支持するエビデンスが増えつつあるが、
今回の研究結果もそれに加わることになる」
首席著者のRobert H. Baloh, MD, PhDは言う
彼はシーダーズ・サイナイで神経学部神経筋医学とALS学際的プログラムのディレクターである
「この研究結果は、ALSやアルツハイマー病のような病態においてどのようにして脳細胞が失われるのかについての我々の考え方を根本的に変化させるパラダイムシフトをさらに継続させるものだ」
徐々に脳と脊髄の神経細胞が死んでいくALSは最も一般的な神経筋疾患の一つである
ALS協会によるとアメリカでは毎年5600人以上が新たにALSと診断され、そのうち約10パーセントがC9orf72遺伝子の突然変異によって引き起こされる
ある研究ではアメリカ人のおよそ50万人がこの突然変異のキャリアであるという
Balohたちは彼らの発見が、特にC9orf72遺伝子の突然変異を持つ患者の免疫細胞の機能不全を標的とする新しい治療法への道を示す可能性があると述べる
また、C9orf72遺伝子のレベル低下を標的とする薬剤には慎重にアプローチすべきであると彼は言う
なぜならそれがさらに免疫系を混乱disruptさせる可能性があるからだ
研究に寄与したproject scientistであるJacqueline Gire O'Rourke, PhDは、今回の結果がC9orf72突然変異のキャリアとそれ以外のALS患者との間の差異を理解するのを助けるだろうという
「我々の研究は、免疫を調整する薬剤に対してC9orf72遺伝子キャリアと他のALS患者では反応が異なることさえあるかもしれないという可能性を示唆する」
http://dx.doi.org/10.1126/science.aaf1064
C9orf72 is required for proper macrophage and microglial function in mice.
C9orf72はマウスのマクロファージとミクログリアの適切な機能に必須である
神経変性と免疫細胞とのつながり
Linking neurodegeneration and immune cells
C9orf72の繰り返し配列の伸長expansionはALSの主な遺伝的原因である
この伸長はC9orf72の発現を低下させるものの、ほとんどの研究はニューロン内部での有害なRNAとタンパク質に焦点を当ててきた
O'RourkeたちはC9orf72が意外なことに自然免疫細胞に関与することを明らかにした
C9orf72を持たないマウスではマクロファージとミクログリアの機能不全を起こし、加齢と関連する神経の炎症が生じた
この結果はニューロンの有害な副産物byproductがC9orf72発現低下によるミクログリアの機能不全と組み合わさって共に神経変性を促進するという『二重効果/dual-effect』が疾患のメカニズムであるという可能性をもたらす
Abstract
C9orf72遺伝子の非コード部分に存在するGGGGCCという6つのヌクレオチドの繰り返しの伸長は、ALSならびにFTDの最も一般的な遺伝的原因である
伸長のキャリアではC9orf72の発現低下が見られることから、その機能喪失が疾患に関与することを示唆する
我々はC9orf72オーソローグortholog(相同蛋白質)の3110043O21Rikを全ての組織で持たない二つの独立したマウス系統が正常に成長して運動ニューロン疾患を発症せず加齢することを発見した
代わりにC9orf72ヌル・マウスは進行性の脾臓巨大症/脾腫splenomegalyならびにリンパ節症lymphadenopathyを発症し、貪り食うengorgedマクロファージ様の細胞が蓄積した
C9orf72の発現は骨髄系細胞myeloid cellで最も高く、C9orf72の喪失はマクロファージとミクログリアにおけるリソソーム蓄積ならびに免疫応答の変化という結果になった
加齢とともにC9orf72突然変異ALSに似た神経炎症age-related neuroinflammationを伴い、ヒトの散発性sporadicのALS患者の組織とは異なっていた
したがって、C9orf72は骨髄系細胞の正常な機能に必要であり、ミクログリアの機能の変化はC9orf72伸長キャリアにおける神経変性の一因である可能性がある
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/7acfb1a2f4e4c93bf185698ef5d38fe4
C9ORF72遺伝子の突然変異から生じる有害RNAを阻害する化合物が開発される
関連サイト
http://www.als.gr.jp/staff/document/kiso/kiso_35.html
C9ORF72反復配列の異常伸長の頻度は、臨床的FTD患者では、孤発性FTD203例中6例(3.0%)、家族性FTD171例中20例(11.7%)、
臨床的ALS患者では、孤発性ALS195例中8例(4.1%)、家族性ALS34例中8例(23.5%)で見られる。
Findings raise hope for new ALS treatments that target immune cell dysfunction
March 17, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160317145954.htm
シーダーズ・サイナイメディカルセンター/Cedars-Sinai Medical Centerの研究者たちは、脳内の免疫細胞が『筋萎縮性側索硬化症/amyotrophic lateral sclerosis(ALS)』の発症に直接関与することを明らかにした
この発見はこの徐々に麻痺して死に至る神経変性疾患を標的とする新しい治療法への希望をもたらす
この研究成果はScience誌で3月18日に発表された
この研究ではALSならびに前頭側頭型認知症/frontotemporal dementia(FTD)を引き起こす遺伝子の突然変異に焦点を当てた
FTDはもう一つの神経疾患であり、典型的な特徴として性格personalityや行動behavior、言葉遣いlanguageが変化する
研究者はC9orf72という遺伝子を持たない二系統のマウスを開発し、それが脳内の免疫系の機能にとって重要であることを発見した
この遺伝子を持たないマウスはALSを発症せず、意外なことに免疫系の異常を生じた
免疫細胞の内部の構造の一つであるリソソームは通常細胞内の望ましくないものを処理しているが、C9orf72遺伝子を持たないマウスの免疫細胞ではリソソームが適切に機能するのを止めた
「C9orf72遺伝子は脳内の免疫細胞が適切に機能するために決定的に重要である
脳内の免疫系は単純に損傷に応答するよりむしろ積極的に疾患に関与していることを支持するエビデンスが増えつつあるが、
今回の研究結果もそれに加わることになる」
首席著者のRobert H. Baloh, MD, PhDは言う
彼はシーダーズ・サイナイで神経学部神経筋医学とALS学際的プログラムのディレクターである
「この研究結果は、ALSやアルツハイマー病のような病態においてどのようにして脳細胞が失われるのかについての我々の考え方を根本的に変化させるパラダイムシフトをさらに継続させるものだ」
徐々に脳と脊髄の神経細胞が死んでいくALSは最も一般的な神経筋疾患の一つである
ALS協会によるとアメリカでは毎年5600人以上が新たにALSと診断され、そのうち約10パーセントがC9orf72遺伝子の突然変異によって引き起こされる
ある研究ではアメリカ人のおよそ50万人がこの突然変異のキャリアであるという
Balohたちは彼らの発見が、特にC9orf72遺伝子の突然変異を持つ患者の免疫細胞の機能不全を標的とする新しい治療法への道を示す可能性があると述べる
また、C9orf72遺伝子のレベル低下を標的とする薬剤には慎重にアプローチすべきであると彼は言う
なぜならそれがさらに免疫系を混乱disruptさせる可能性があるからだ
研究に寄与したproject scientistであるJacqueline Gire O'Rourke, PhDは、今回の結果がC9orf72突然変異のキャリアとそれ以外のALS患者との間の差異を理解するのを助けるだろうという
「我々の研究は、免疫を調整する薬剤に対してC9orf72遺伝子キャリアと他のALS患者では反応が異なることさえあるかもしれないという可能性を示唆する」
http://dx.doi.org/10.1126/science.aaf1064
C9orf72 is required for proper macrophage and microglial function in mice.
C9orf72はマウスのマクロファージとミクログリアの適切な機能に必須である
神経変性と免疫細胞とのつながり
Linking neurodegeneration and immune cells
C9orf72の繰り返し配列の伸長expansionはALSの主な遺伝的原因である
この伸長はC9orf72の発現を低下させるものの、ほとんどの研究はニューロン内部での有害なRNAとタンパク質に焦点を当ててきた
O'RourkeたちはC9orf72が意外なことに自然免疫細胞に関与することを明らかにした
C9orf72を持たないマウスではマクロファージとミクログリアの機能不全を起こし、加齢と関連する神経の炎症が生じた
この結果はニューロンの有害な副産物byproductがC9orf72発現低下によるミクログリアの機能不全と組み合わさって共に神経変性を促進するという『二重効果/dual-effect』が疾患のメカニズムであるという可能性をもたらす
Abstract
C9orf72遺伝子の非コード部分に存在するGGGGCCという6つのヌクレオチドの繰り返しの伸長は、ALSならびにFTDの最も一般的な遺伝的原因である
伸長のキャリアではC9orf72の発現低下が見られることから、その機能喪失が疾患に関与することを示唆する
我々はC9orf72オーソローグortholog(相同蛋白質)の3110043O21Rikを全ての組織で持たない二つの独立したマウス系統が正常に成長して運動ニューロン疾患を発症せず加齢することを発見した
代わりにC9orf72ヌル・マウスは進行性の脾臓巨大症/脾腫splenomegalyならびにリンパ節症lymphadenopathyを発症し、貪り食うengorgedマクロファージ様の細胞が蓄積した
C9orf72の発現は骨髄系細胞myeloid cellで最も高く、C9orf72の喪失はマクロファージとミクログリアにおけるリソソーム蓄積ならびに免疫応答の変化という結果になった
加齢とともにC9orf72突然変異ALSに似た神経炎症age-related neuroinflammationを伴い、ヒトの散発性sporadicのALS患者の組織とは異なっていた
したがって、C9orf72は骨髄系細胞の正常な機能に必要であり、ミクログリアの機能の変化はC9orf72伸長キャリアにおける神経変性の一因である可能性がある
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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/7acfb1a2f4e4c93bf185698ef5d38fe4
C9ORF72遺伝子の突然変異から生じる有害RNAを阻害する化合物が開発される
関連サイト
http://www.als.gr.jp/staff/document/kiso/kiso_35.html
C9ORF72反復配列の異常伸長の頻度は、臨床的FTD患者では、孤発性FTD203例中6例(3.0%)、家族性FTD171例中20例(11.7%)、
臨床的ALS患者では、孤発性ALS195例中8例(4.1%)、家族性ALS34例中8例(23.5%)で見られる。