長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『パーソナル・ショッパー』

2018-01-05 | 映画レビュー(は)

霊媒師のモウリーン(クリステン・スチュワート)は双子の兄の急死から立ち直れずにいた。生前「先に逝った方が現世へサインを送る」と誓い合った兄からの何らかの“徴”を求め、今日も無人の生家へと立ち入る。
方や生活の基盤は“パーソナル・ショッパー”だ。自らのセンスを売り物に多忙なセレブに代わって服や装飾品を購入する職業である。そんなある日、モウリーンの携帯に非通知のSMSが届き始める。これはあの世からのサインなのだろうか?

カンヌ映画祭で監督賞に輝いたオリヴィエ・アサヤス監督の『パーソナル・ショッパー』はジャンルで映画を語ろうとする者には不可解な一品だ。冒頭、まるで黒沢清映画のような写実的心霊演出で観客を震え上がらせ、中盤からは殺人ミステリーへとシフトする。作品の支柱として存在するのはクリステン・スチュワートだ。

服を脱ぎ、顧客の私物である高級ブランド服に袖を通す瞬間のひそやかな悦び。いつになくマニッシュで美しいクリステンの立ち振る舞いは惚れぼれするほど…ハンサムだ。彼女の行為はまるで自らを他人へ異化する事で悲しみを紛らわせ、いつしか最愛の兄そのものへ同化しようとしているように見える(字幕もいわゆる“女の子喋り”をしていない)。孤独なヒロインの彷徨が行き着く先は救済と見ていいだろう。

 コンビ第1作目『アクトレス』の結末といい、アサイヤスにとってクリステンはいかなるストーリーテリングも可能にするインスピレーションに満ちた存在なのかも知れない。


『パーソナル・ショッパー』16・仏
監督 オリヴィエ・アサヤス
出演 クリステン・スチュワート
 

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