長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『きっとここが帰る場所』

2020-06-12 | 映画レビュー(き)

 イタリアの監督パオロ・ソレンティーノによる2011年の本作はショーン・ペンを主演に迎え、アメリカ大陸を横断するロードムービーだ。
 かつてはミック・ジャガーとも共演する程の人気を得ていたグランジミュージシャンのシャイアンはその陰鬱な楽曲に影響されたファンの自殺を機に、アイルランドの豪邸に引きこもってしまう。それから30年、当時と何ら変わりないメイクのまま歳を取った彼は株取引で日々をやり過ごし、うつ状態にあった。絶縁状態にあった父の訃報をきっかけにシャイアンはアメリカへ戻るのだが…。

 2度目のオスカーに輝いた『ミルク』以後、優しさも体現するようになったショーン・ペンによる人物造形がいい。シャイアンのあまりにも不似合いで不格好な女装姿は痛々しく、背中を丸めてよちよち歩く姿からは人生に落伍してしまった者の肩身の狭さが伝わってくる。だがペンは悲壮さよりも可笑しみを優先させており、アメリカで直面する様々な出来事にどう反応するのか見守りたくなってしまうユーモアとペーソスがある。

 イタリア人の描くアメリカンロードムービーは従来のアメリカ映画と目線が違うのか、ロケーションに新鮮味があるものの、何かと説明的で説教くさいダイアログ、感じの良いだけの選曲はシャイアンの厚塗り化粧の如く映画を野暮ったくしている。父の遺志に従った終幕も後味が悪く、好きになれない印象が残ってしまったのが惜しい。


『きっとここが帰る場所』11・仏、伊、アイルランド
監督 パオロ・ソレンティーノ
出演 ショーン・ペン、フランシス・マクドーマンド、ハリー・ディーン・スタントン
 

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