長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『神様なんかくそくらえ』

2020-04-20 | 映画レビュー(か)

 『グッド・タイム』『アンカット・ダイヤモンド』のサフディ兄弟によるデビュー作だ。2014年の本作にはなんと東京国際映画祭がグランプリを授与している。権威があるのかどうかは怪しい所だが(いや、30年もやってるんだからあってくれ)、この才能を見出したのは近年最大の功績だろう。サフディ兄弟は既に浮遊感ある電子音、事故的に転がるプロット、都市の息吹を撮えた荒々しいカメラとスタイルを確立しており、作品を重ねる毎にそのエネルギーを増幅している事がわかる。

 このデビュー作は後の2作品に比べると血気盛んさは控え目だが、彼らにとって今のところ唯一の女性映画である点が見逃せない。本作は主演アリエル・ホームズのホームレス体験を基にしており、今にも壊れそうな彼女の繊細さと暴力性が映画の大きな駆動力になっている(若い頃のフィオナ・アップルに似ている)。現在の兄弟のエネルギーに拮抗できる女優が現れれば、さらなる傑作をモノにするであろう期待が高まった。

 映画は明日の希望も持てずにドラッグとアルコールに依存する若者たちを描いていく。まるで70年代ニューシネマのような絶望感と閉塞感だが、経済格差によってワーキングプアのホームレスは急増しており、その深刻さは現在の方がより深い。


『神様なんかくそくらえ』14・米
監督 ベニー・サフディ、ジョシュア・サフディ
出演 アリエル・ホームズ、ケイレヴ・ランドリー・ジョーンズ
 

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