
ベニー&ジョシュアのサフディ兄弟がついに放った場外ホームラン級の傑作だ。特大オパールを手に入れたユダヤ人宝石商が次から次へと金を又借りし、バスケットボール賭博に興じる様を卒倒しそうな熱量と狂騒で描き出す。カメラは目まぐるしく縦横無尽に駆け回り、主演アダム・サンドラーはアル・パチーノを彷彿とさせる凄まじいエネルギーで135分がなり立てっぱなしだ。
彼が演じるハワードは病的なギャンブル狂であり、愛人を何人もかこって妻(『アナと雪の女王』のエルサ役イディナ・メンゼル)を一顧だにしない下衆野郎だが、少しも目が離せないのはサンドラーの持つ愛嬌あるスター性と人物造形による所が大きい。モラルもへったくれもなく、終盤のアクロバッティングな借金に到っては一周回って笑いがこみ上げる程だ。
本作のような野卑で血気盛んな映画は案の定、アカデミー賞には縁がなく、各批評家賞を制しながらも本選では候補落ちした。インディペンデント・スピリット賞での監督賞、主演男優賞獲得こそ真の勝利だろう。
日本では残念ながらNetflixスルーの劇場未公開で終わったが、映画館で見るべき“音”の映画でもある。『グッド・タイム』同様、ミスマッチの妙にも思える電子音(ダニエル・ロパティンが担当)に誘われる冒頭、カメラはオパールの中へと潜り込み、いつしかアダム・サンドラーの直腸へと繋がって宇宙の神秘にまで到達する。都市に飛び交う怒号はこれまで見たことのないNYのカオスを浮かび上がらせ、昨年の『ジョーカー』にも匹敵する“都市の顔”の映画となった。製作にマーティン・スコセッシが名を連ねている事からもサフディ兄弟の作家性は推し量れるだろう。
また劇中、人気ラッパーのザ・ウィークエンドが本人役で登場。2020年はニューアルバムリリースのタイミングでHBOのドラマシリーズ『ウエストワールド』シーズン3でも楽曲がフィーチャーされており、ポップカルチャーの有機的横断が楽しい。
この映画は『グッド・タイム』同様、事故の連続で物語が転がる行き当たりばったりのような作劇であり、理屈で映画を見る人には理解不能かもしれない。だがオパールの神秘とバスケットボール、多額の金と主人公の運命がまるで宇宙の法則の如く巡り会うクライマックスは只々、圧倒的である。映画は理屈じゃない。いやぁ、こりゃ参った!
『アンカット・ダイヤモンド』19・米
監督 ベニー&ジョシュア・サフディ
出演 アダム・サンドラー、ラキース・スタンフィールド、ジュリア・フォックス、イディナ・メンゼル
※Netflixで独占配信中※
調べたら、好みの分かれる映画のようですね。オススメされてたのでちょっと興味がわきました。
ちなみに、今日見たのはボストンマラソンの爆破事件を描いた「パトリオットデイ」という映画でご存知だと思うのですが、シリアスと緊迫感ある展開で、時折あるコミカルな部分とか現実の世界って決して一辺倒ではないよなとか、上層部の意見対立や家族の問題など事件の背景には様々なドラマがあったんだなと色々と勉強にもなる映画でした。
『パトリオット・デイ』、僕も見ました。実録映画は大好きです。アメリカ映画は最近の出来事でもバンバン映画にできて凄いなぁと思います。こちらに書いているので、良かったらご一読下さいhttps://blog.goo.ne.jp/nayutagp01fb-zephyranthes/e/302f7364cab4fa758f0532a2f3e134fe