長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『フランシス・ハ』

2020-04-21 | 映画レビュー(ふ)

 主人公フランシスは27歳。モダンダンサーを目指してカンパニーの研修生をやっているが、ダンサーで食うにはもう歳だ。しかし生来の諦めの悪さと夢見る夢子ちゃん気質がなかなか現実を直視させない。成功は遠く、借金は増える一方。ついには母校の寮母バイトで食いつなぐ羽目になってしまった。そんな彼女も家に帰ればルームメイトのソフィーが待っている。「私たちって熟年のレズビアンカップルみたい」と言う2人は互いにノンケだが、「I LOVE YOU」と連呼してはばからないベタベタぶりで、男はあくまで“つなぎ”だ。

 イタ~いヒロインをシニカルに描くノア・バームバックのタッチは脚本、主演グレタ・ガーウィグによってポップでエッジィなガールズムービーに変身した。それまでの冷徹な人物描写は鳴りを潜めて随分と間口は広くなり、陰影の濃いモノクロはヌーベルバーグ由来の正統アメリカンインディーズの風格を感じさせる。前作『ベン・スティラー 人生は最悪だ!』を経てガーウィグという創造的パートナーと出会ったバームバックは本作で新境地を開拓し、それは2019年の傑作『マリッジ・ストーリー』へと結実していく。ガーウィグも本作で俳優としてブレイク後、2017年『レディ・バード』で監督デビューを果たし、映画作家として羽ばたく事になる。本作は今や記念碑的映画と言ってもいいだろう。2人の作家性を語る上で外せない1本である。


『フランシス・ハ』12・米
監督 ノア・バームバック
出演 グレタ・ガーウィグ、ミッキー・サムナー、アダム・ドライバー、マイケル・ゼゲン
 

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