リッスン・トゥ・ハー

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乗らナイ、買わナイ、見向きもしナイ草食系若者が食いついた

2010-08-08 | リッスン・トゥ・ハー
「離しません、全然離しませんよ」

「何が彼をそうさせるのでしょう」

「本能、でしょうか」

「本能ですか」

「抑圧された本能が、欲望が爆発しているのではないでしょうか」

「爆発」

「離しません、さあ、食いちぎりはじめたぞ、これは危険です、すぐに避難しましょう」

「我々にも加害をくわえるというのですか?あの優しい青年が」

「今の彼は以前の彼とは違います、すぐにもとに戻るとは思いますが、非常に危険です」

「信じられないな」

「わたしももちろんそうです、しかし現実として起こっていることを信じるしかない」

「そうですね」

「我々も食いつかれる可能性があります」

「咀嚼されるのですか」

「咀嚼し、ぼりぼりと噛み砕かれ、飲み込まれます」

「咀嚼はされたくないなあ、彼、歯槽膿漏だし」

「今はそんなこと言ってる場合ではありませんよ、シェルターに入りましょう」

「ここで問題が発生しました」

「なんですか」

「シェルター、ひとり用です」

「なんと」

「我々のうちの一人しか利用できません」

「なんと」

「どちらが入りましょうか」

「ひとり用だと、馬鹿な、どうしてそんな意味のない施設を作ったのだ、多額の税金をかけて」

「予算の都合でしょうね、何かとうるさいんですよ」

「ひとりだと、なかでトランプできないじゃないか」

「できませんね」

「ひとりだと、なかでウノもできないじゃないか」

「できませんね」

「そんなの全然楽しくないぞ、退屈で死んでしまいそうになるぞ」

「じゃあ、わたしが入っていいですか」

「いや、ダメだ」

「どうして?」

「オマエが入ると、俺がひとりになって、退屈になる」

「いや、草食系若者がいるじゃないですか」

「いやあいつ、ウノできんでしょう」

「できるかもしれませんよ、根気よく話しかけてみたらあるいは反応あるかもしれませんよ」

「むりむり、わかるって俺専門家だもん」

「じゃあ、どうするんですか、加藤さんシェルター入るんですか?」

「いや、ひとりなんて、寂しくて5分で死んじゃう」

「危険じゃないですか、外は皆殺しに合いますよ」

「大丈夫でしょ、話せばわかるよ、ウノもできるよ」

「そんなにウノがしたいんですか」

「ああ、したいね、したくてたまらないね、今すぐしよういますぐにだ」

「ダメですよ、わたしは逃げますよ、できるだけ遠くに逃げますから」

「待ちなよ、逃げても無駄だって、我々は彼に咀嚼される運命にあるんだ」

「なんでわかるんですか?」

「今日のうらないカウントダウンハイパーで、なんせ最下位だったし」

「大丈夫ですよそんなもん」

「けっこうあたるってあれ、前だって一位のときに2億円あたったし」

「たまたまですって」

「無理無理もうあきらめてるから」

「あ、ほら、あれどうなんですか、回避するアイテム、言ってくれるじゃないですか、女子アナウンサーが。それがあれば最下位でも大丈夫でしょ、アイテムなんだったんですか」

「ウノ」

「それでか」


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