リッスン・トゥ・ハー

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ふろ

2009-08-24 | リッスン・トゥ・ハー
その温泉はいかにも古めかしく、なにか必要以上に歴史を感じさせた。脱衣所で服を脱ぐ、私のほかには誰もいなくて、自然、非常にリラックスしたムードが流れている。平日の昼間だからまあそう多くは客もいまい、なんて思っていたのだけれど、全くいないとは思わなかった。これはラッキー。と私は半ばはしゃいで、うほほ、なんて小躍りで浴室の扉を開いた。とたんに、外からのせみの声、この浴室まで響いてくる。天井付近の壁に大きな窓があってそれがオープンしている。外からの音はどんどん届く。それもまた風流やね、などと思いながら私はまず礼儀として身体を洗います。入念に、夏の日差しを受け私から湧き出てくる汗を流す。湯が5つほどある。20畳ほどの大浴場、日差しがさらさら注いでいる露天風呂、サウナとセットとして水湯、ジェットバス、おどろおどろしい色と匂いの薬油。これらが今は私のために湯気を立てている。ふつふつ、こっちの湯はきもちええぞ、と。まず大浴場をいただきましょう。てくてくと歩いて湯に足を入れ、ひりっとする。ひるまずにことんと足を落とし、徐々に身体を沈める、帰っていくように、元の場所へ帰っていくように沈める。ぐぐぐと身体の芯が温まっていく。表面は、いや中身だって灼熱の太陽にがんがん照らされていたから、十分温まっているはずなのに。あらためて、温泉の湯に包まれると、直前まで凍えていたような気分になる。そして温まっていくのにしたがって昇ってくるうめき声を今日は遠慮なく吐き出す。私は風呂がそれほど好きではないので長い間浸かっていることができない。満たされるのも早い。立ち上がり、すでに湯に疲れてしまっている。少々休んだほうがいい。焦らなくていい、時間はまだある、ここは長野の風呂。

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