リッスン・トゥ・ハー

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アニェッリ家はユーヴェを救えるか

2010-05-14 | リッスン・トゥ・ハー
ユーヴェは瀕死だった。心ない子どもに火であぶられたり、蹴られたり、粘液をかけられたり、青梅をぶつけられたりしたためだ。瀕死のユーヴェはそれでも子どもに反撃をくわえようとした。このままただやられているだけではウミガメの風上におけない、とユーヴェは最後の力を振り絞り、砂に隠しておいた火炎放射器を取り出し、子どもにむけて放った。子どもは金切り声で逃げ惑っていった。ユーヴェはかすかに笑って目を閉じた。悪くない気分だった。自分は今瀕死であるが、子どもに反撃をくわえて追い払った。このまま意識がなくなってもいいような気がした。ゆっくりとユーヴェは海の方を向いた。静かに波がやってきてユーヴェの身体をなでていった。その時だった、アニェッリ家がやってきたのは。アニェッリ家は親子3人で、瀕死のウミガメを見つけて駆け寄った。そしてウミガメよ、どうしたのだ、どうしてそんなに傷ついているのだ、と尋ねた。ウミガメは鑑賞深い表情で、もうどうでもいいのです、わたしをゆっくり寝かしてくださいと応えた。面倒くさかったのだ。アニェッリ家は、自分が好意で尋ねたというのに、その言い草はなんだと腹を立てた。むしろめらめらと瀕死のウミガメに対する悪意がわき起こった。そしてアニェッリ家はやはり、火であぶったり、蹴ったり、粘液をかけたり、青梅をぶつけたりした。ウミガメは、おおかみよ、と祈りながらそれに絶えていたがやがて、やはり隠していた火炎放射器を取り出して放った。アニェッリ家は逃げた。いなくなった後もウミガメは執拗に火を放ち続けた。やがて燃料がなくなり火が止まる。ウミガメは動かなくなっていた。


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