リッスン・トゥ・ハー

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Venice film festival

2010-09-12 | リッスン・トゥ・ハー
あたしは大勢の中の一人として、そこに立っていた。意味なんてよくわからない、誰かに言われてふらふらとついていったにすぎない。あるいは誰にも何も言われていないのかもしれない。そんな気がしていただけなのかもしれない。だとしたら怖いことだけど、あまり実感はない。ただなんとなく、自分の思うままに動いただけだ。自分の意志、それを尊重した結果ということだ。あたしはあたしのままだ。まだ、あたしのままなのだから、全然大丈夫。大勢が集まっていて、そこで写真を撮った。大人がたくさんいた。ただ笑っていればよかった。みんな優しそうな人たちばかりだった。もっと笑って笑ってと、あたしたちが怖がらないように、いろんなおもちゃがそこいらに置いてあった。それで遊びたくてたまらなかった。見たことのないおもちゃもたくさん会った.どうやって遊ぶのかよくわからないようなおもちゃ。みんな、そんな感じで、さっさと撮影を終わらせて、思い切り遊ぶんだ、という気概が感じられた。そういう意味でみんなプロフェッショナルだった。そこにはお菓子もたくさんあった。それを自由に食べていいと言われていた。ただし撮影が終わってからね。とにかく撮影を早く終わらせること、それがあたしたち共通の言語だった。国籍の違う様々な子どもがいた。言葉は何も通じなかった。身振り手振りであたしはなんとか、あたしはエミリーで好きな食べ物は冷や奴、と伝えようとしたけれど、隣にいた子は首をひねるばかりだった。理解力がひくいのかしら、とあたしは少し馬鹿にしていた。その子があたしにむかって何かやっていたけれどまったくわからない、そのうちやまてしまい、ただ笑ってるだけだったから、あきらめたのかもしれない。撮影は進んで、あたしはほとんど疲れることなく、解放された。何のための撮影だったのかよくわからない。でも、おもちゃも使えたし、お菓子も山ほど食べたんだから満足、冷や奴はなかったので、それを次回はリクエストしておくわ。

砂と汗

2010-09-12 | リッスン・トゥ・ハー
「砂が舞う」

「おお、なにか文学的なセリフを」

「砂のむこうは町の果て」

「意味が分からなくなってきました」

「砂が舞う」

「軌道修正?」

「砂のむこうは汗」

「なんで?」

「ビーチバレーボールをしている」

「華やかですね」

「ビーチバレーボール選手の汗だ」

「わあ、なんか青春」

「太陽の光」

「歓声が聞こえてきますね」

「黄色い声だ」

「人気者が出てきてるんでしょうか」

「出てきてるね確実にね」

「あれですか」

「あれあれ」

「あさお、の」

「そうそう浅尾の」

「ゴン太くん」

「ゴン太君?」

「浅尾ゴン太」

「違うでしょう」

「違うの?」

「つうか浅尾かどうかもよくわかりません」

「ゴン太の汗」

「だったらあまり綺麗なもんじゃないような気がするなあ」

「ぼくにとってはこの上ない美しいものだ」

「それは分け隔てなく美しいですけれどもですよ」

「ほんとに?」

「本当です」

「では登場してもらいましょう」

「え?え?まじで?」

「浅尾」

「いや、なに緊張しちゃう」

「美和さんです」

「いやー可愛いー!」

「てへ!」

「待て!浅尾美和はてへ等と言わない、さてはオマエ、ゴン太君だな!」

「うふふふふ、わーははっはははっはは、その通り俺はゴン太君」

「いやー可愛いー!」

「はい」