雲辺寺でいちばん時間をかけてみたのは五百羅漢だった。
300メートルほど道端に並んでいる風景は壮観だ。
一体一体顔の表情、持ち物、一緒に形作られている動植物をじっくりと見ながら歩いたが怒った顔、笑った顔、悲しそうな顔どんな顔も嫌味がなく飽きることはなかった。
その日は平日で行きかう人もいない。
羅漢像もつきたころちょっと不思議な人声がする。
あそこ、こっち、いた、とか会話ではない。
男性2人が長い柄の白と黒の網を持って高い梢の蝶をとっていたのだ。
私には何も見えないが飛んだとかあっちだとか2人は声を掛け合っている。
とれたので近づくとまだ網に入っているのにオスだメスだと言っている。
とれたのは3センチにも満たないオオミドリシジミ。
孵化して一か月ほどしか生きない蝶で孵化したばかしのころはとてもきれいなブルーの羽らしいがとれた蝶は羽も痛みもう終わりのころだといって逃がしていた。
蝶の収集をしている人達に巡り合ったのは初めてでしばらく収集風景を見せていただいた。
なかなかとるのは難しそうだったがオレンジ色で4センチほどのツマグロヒョウモンがとれた。
彼らと別れた後やけに蝶が目につき始めた。
知ることは見られるようになることだとつくづく感じた。
良い人たちと巡り合えた。
標高400メートルほどの切山あたりでは咲き終わっているミズキが1000メートルほどの雲辺寺では今満開だった。
蝶とりの男性が”あの木はなんですか?木の名前はわからなくて”と聞いてきた。
四国中の蝶の標本は持っているそうだし私には見えない梢の蝶は見えてもあまり木は見えてないようだ。
数えなかったが本当に500体はありそうだ。
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