読書感想日記

最近読んだ本の感想

「ながい旅」 大岡 昇平 著 新潮文庫

2009-08-29 01:23:04 | 歴史物
 私は、自分の行動について、どんな結果になろうとも、あれこれ言い訳せずに、後の人の判断に任せることが潔い、というような書いたことがあります。
 しかし、厳しい状況に陥ったとしても、言うべき事をはっきり言うことによって自分の責任を明確にして、そのうえで下される結論を受け入れる生き方も、潔く立派である、ということを、この本から教えて頂きました。
幹部たるべき者は、自分の組織における全責任について、自ら負うべきであり、その旨を遺して自決していった幹部がいれば、自分にかかる責任を回避しようと戦勝国側に取り入り、又は虚偽の申告に徹し、あるいは自分勝手な言い訳を遺して自決する幹部もいる。
 そんな中で、信仰については、私はよくわかりませんが、戦勝国による裁判という不利な状況で、戦争中の責任を問われる中で、敵国側の人間に対して堂々と自分の考えを述べ、全責任を一人で背負わん、という被告人の姿は、まさに理想の上司でしょう。
 また、被告人に同情し、優秀な弁護人だけでなく、ついには検察側、裁判員までもが助け船を出そうとする雰囲気に、B・C級戦犯に対する裁判は、東京裁判のような、一方的なものばかりではなかった、ということに驚きました。
 題名のように、長い時間を、いや、長い旅を経て明らかとなった日本軍人の法廷での戦い。
 こんな先輩たちに恥じないよう、しっかりと生きていきたいと思います。
 しかし、戦勝国には、戦争責任はないのだろうか。
 日本全土へ無差別的な爆撃をして、更には、原爆を2回も使用した結果、何十万という一般市民の命を奪った米国…
 終戦間際に侵略して北方領土を不法に占拠し、更には何十万とも言われる日本人の捕虜をシベリヤに連行し、強制労働させたロシア…
 結局、日本が無謀な戦争を起こしたことだけが悪いのか…

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