読書感想日記

最近読んだ本の感想

「児玉源太郎」 神川 武利 著 PHP研究所

2009-07-31 01:14:28 | 歴史物
 西洋列強が、弱い国々を力でねじ伏せ、植民地化していく20世紀初頭。
 日本は、最大の脅威であるロシアに対して、様々な思惑による諸外国からの応援を得て、短期決戦で対抗する道を選ぶ。
 主人公は、この日露戦争にあたり、皆から待望され、私を捨てて日本陸軍の頭脳となった人であり、その彼の幼少の頃から、才能を発揮する青年時代、更には当時の社会情勢を織り交ぜつつ、彼が指揮した陸戦での壮絶な戦いが描かれています。
 また、現場で最も苦労した乃木さんを正当に評価しているし、大東亜戦争で日本が敗北する遠因がこの戦いにあることもわかりやすく書いてあったので、私にはとても読みやすかったです。
 ただ、主人公と乃木さんと対比するように書かれてしまうと、私は乃木さんの生き方に日本男児としての潔さを感じ、つい、肩入れしてしまいたくなります…
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「大地」(1~4巻) パールバック著 小野寺 健 訳 岩波文庫

2009-07-31 01:08:49 | 小説
 西洋人が東洋人を描くと、多少なりとも見下すというか、偏見のような視点で書いているのではないか…と思っていました。
 しかし、そんな私の愚かな心配はすぐに消え去り、私の心は、中国の片田舎に引き込まれていました。
 そこは、貧富の格差が激しい土地でした。
 そこで、向上心に燃える男が、ただひたすら真面目に大地と向き合って努力を続けます。私には決して真似のできない、頭が下がるばかりの生き方でしたが、その男の子どもや孫の代へ時が移るにつれ、大地への感謝は薄れ、驕りばかりが目立つようになり、そして…
 人間が生きるために、何が大切なのかを教えてくれる作品でした。
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「日露戦争がよくわかる本」 太平洋戦争研究会 著 PHP文庫

2009-07-31 01:00:25 | 歴史物
 日露戦争について、ロシアと日本の指揮官、軍事力といった力量や、世界の国々の中での両国の位置や立場をほどよく比較しつつ、この戦争が世界に及ぼした影響はもちろん、太平洋戦争における日本の敗因についてまで、わかりやすく書いてあります。
 また、指揮能力の欠けた指揮官だった、と評価されている人物について、各種資料に基づき、正当な評価をしていることに好感を持ちました。
 そして、戦さとは、驕る心が敗北を招くことを、わかりやすく説いています。
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「海の武士道」 恵 隆之介 著 産経新聞出版

2009-07-11 20:49:08 | 歴史物
 日本軍人が、戦いの場における極限状態の下で発揮した素晴らしい精神について読ませていただこうと思いました。
 しかし、自分の勉強不足を棚に上げて申し訳ありませんが、地理的な話題を広げるのならば、文と関連する地域の地図を、あるいは、特に海軍にとどまらない多くの人々のつながりを描くのならば、相関図や一覧表等を載せていただくと、とてもわかりやすかっただろうと思います。
 また、歴史的背景等も大切でしょうし、取材等で得た証言等も最大限に描きたい気持ちはわかるつもりですが、それだけに話しがあちらこちらにとんでしまい、いざ本題に入って、主人公をはじめとした日本人の精神の潔さに胸を打たれていたが、本題に関わる部分は、結構あっさりと終わってしまったのは、残念。
 また、結果を述べた後に内容を書く方法は、確かに文章表現の一つでしょうが、私としては、結論を知ってしまうと、先を読む気が薄れてしまうので、普通に書いてほしかったです。
 何だか、こんな私が、偉そうに文句ばっかり並べてしまって、著者の方には本当に申し訳ないと思うのですが、この本に記された日本人の精神である、武士道という神髄は、今の日本人が失ってしまった大事なものであるだけに、今後、もっと作品を読ませて頂きたい、という思いから感想を書かせて頂きました。
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「ニホンカワウソ」絶滅に学ぶ保全生物学 安藤 元一 著 東京大学出版会

2009-07-11 20:29:17 | 評論
 正直言って、読みはじめたとき「この本は、とっつきにくいかな…」と思っていました。さまざまな角度からニホンカワウソについて研究されたデータが、次々と、そして淡々と記されているだけのように感じてしまったのです。
 しかし、よく考えれば題名に『学』と書かれているのですから、ニホンカワウソが主人公の物語ではないのは、当然のことでした。
 ただ、そのことが逆に、地球上から生き物が『絶滅』していく主な原因は、人間の欲望を実現させるためだけの乱獲という行為に限らず、人間が暮らしやすくするためのさまざまな活動が絡み合った結果であるという事実を、著者は、読み手の心へ詰め将棋のように少しずつ詰んでいきます。
 そして、一旦滅んでしまった彼らを蘇らせようとする各地での試みにも触れ、そのためには莫大な費用と多大な労力、そして気の遠くなるような長い時間が必要である…と静かに説いています。
 農耕民族だった日本人は、自然を恐れつつ感謝し、自然とともに生きてきたはずなのに、文明や経済が発展するに伴って、自然に対する驕りが、大切なことを忘れさせてしまったのでしょうか…
 そしてまた、物事を進める場合には、常に大局から見る視点と迷いのない判断力が大切で、早く修正するほど、被害を最低限度に食い止めることができるということ、つまり「まだ大丈夫」と構えているときは、もう手遅れになりつつある段階だ、という何事にも通じるような鉄則を教えていただきました。
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「下山事件 シモヤマ・ケース」 森 達也 著 新潮文庫

2009-07-11 20:15:26 | 歴史物
 またしても勉強不足のため、下山事件については、名称を聞いたことがある程度で、詳しい内容は知りませんでした。
 ですから、いつか、この事件に関する本を読んでみたい…と気になっていたところで、この本と出会いました。
 発見された轢死体に対する不可思議な捜査、当時の世界における日本の立場、時代の流れを絡ませて、今現在の日本の姿を決めるほどの大きな事件だった…ということを、教えて頂きました。
 これだけの事件を調べるにあたって、著者は、大変な苦労をされたでしょう。
 しかし、失礼とは思いますが、調査の苦労話、報道業界での駆け引きや裏切り行為等の裏話…といったことには、私はあまり興味がなく、もっと著者が調べ上げ、掴んだ事実に基づいて、堂々と事件の真相について語ってほしかったです。
 話しが逸れてしまいますが、城山三郎さんの『落日燃ゆ』では、山座円次郎が、後輩の広田弘毅に「外交官は、自分の行ったことで後の人に判断してもらう。それについて弁解めいたことはしないものだ」旨を諭した、とされています。
 精一杯努力して得た結果について、いちいち弁明せずに、堂々と書いてほしかったです…
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