読書感想日記

最近読んだ本の感想

「春を背負って」 笹本 稜平 著 文藝春秋

2011-10-10 00:42:26 | 小説
 文明に慣れきった人間を受け入れる優しさ、あるいは何者をも拒絶する厳しさ…
 そこは四季折々を通した山…そこでの出来事を通して、人との出会い、絆、そして生きることとは何か、を描いている。

 人生は、思っているほど派手でドラマチックなものではない。
 そして、人々はみな、一人一人が違う人生を歩んでいる。
 だからこそ、偶然か必然か、人生に於いて、人と人が出会い、僅かながらも同じ時間を過ごす一時を幸せに感じられるのだろう。
 まして、待ち人が、春を背負って訪れてくる瞬間は、何にも増して心躍るであろう。

 今の日本に、春を背負って訪れてくれる、頼れるヒーローを求めたい。
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「終わらざる夏」 浅田 次郎 著 集英社

2011-10-10 00:31:05 | 歴史物
 戦争は、絶対にしてはならないこと。
 そして、日本人として、忘れてはならないこと。
 戦争で戦ったのは、日本国を、大切な人々を守るため、現地で戦った軍人や召集された人々だけでなく、彼らを見送って本土に残ったすべての国民…普通の人々全てが、我慢に我慢を重ね、苦しみ、悲しみつつ戦っていた、ということを。
 そして、国民一人一人が持っていた夢、家族、人生がすべて狂ってしまい…
 ついには、あり得ないことに、普通の人々までもが戦勝国となった国に連れ去られ、生命を奪われていったことを。

 戦時中、日本の軍人が、侵略したとされる国々で、現地の人々に対して非道な行為を強いたことも少なからずあるのでしょう。
 戦争そのものが無謀だった、とする意見も多いでしょう。
 しかし、戦勝国となった国々が、極限まで切りつめた生活の中で、かろうじて生きていた日本国民に対して強いた冷酷非道な行為について、未だに裁判は開かれず、一方的に正当行為だったかのようにされている。
 普通に暮らしていた人々の頭上へ原爆を投下して、大量に虐殺した行為…
 降伏した国へ敢えて侵攻し、捕虜となった人々や国土を略奪する行為…
 日本国民は、先の戦争での事実をきちんと学び、反省検討することで、犠牲となったあまりにも多くの先人たちの思いを無駄にしてはならない。

 現政権は、北方領土問題やシベリア抑留問題について、どう対応するのだろう。
 また、今年の大災害に対して、我慢して、踏ん張って、立ち上がろうとしている日本を、明るい未来へ導くことはできるのだろうか。
 国民に増税を課す前に、国会議員たちこそが、率先垂範して給料を減らし、定数を減らして、身を削り財源捻出の先頭に立つ姿を国民に見せなければ、誰も納得はしない。
 
 過去の歴史において、幾度にも及ぶ災害や困難からも復興してきた民族…日本人よ、自信を持って、今回も踏ん張って、立ち上がりましょう。
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「きみの友だち」 重松 清 著 新潮社

2011-10-10 00:20:38 | 小説
 はじめは、幼稚でじれったい話しだ、といらいらしながらページをめくった。
 決して素直ではなく、不器用で、人をうらやみ、嫉妬して、あるいは人の顔色ばかり窺って…そんな友だちが次々と描かれる。
 しかし、その一人一人の胸の内が明かされるにつれ、誤解していた自分こそが幼稚で浅はかであったことに気づき、次第に胸が熱くなり、そして思いがけず少しだけ泣いてしまった。
 そう。ここに出てくる友だちは、実は、いい歳をしているくせに、年相応の心や考えを持てない私自身の姿であり、そしてその思いは、私の心そのものだったのだ。
 友だちのために何かをする、という考えや行動は、実は、自己満足や自己防衛に過ぎないのかもしれない。
 そもそも、本当の友だちって、一体何なのだろうか…生きていくって、どういうことなのか…という永遠に答えの見つからない問いについて考えさせられる、立派な作品であった。
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「龍神の雨」 道尾 秀介 著 新潮社

2011-10-10 00:18:45 | 小説
 偶然…計算…それらが重なり、絡み合う…
 家族が、お互いを思いやる心…自分を気遣ってくれている…その思いが、痛いほど伝わってくる。
 しかし、悪い結果である現実は、自分が引き起こした…そう思いこみ、甘えるまい、心配を掛けまい…と、ますます一人で抱え込む…それらが雨空の下で運命に引き込まれるようにつながって、思わぬ方向へと…
 そこへ、優しい家族の心を利用する者が紛れ込み、彼らの思いをあざ笑う。
 ふりしきる雨の空に、彼らが見たものは、果たして何だったのだろうか…

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