読書感想日記

最近読んだ本の感想

「茜色の空」 辻井 喬 著 文藝春秋

2010-08-27 23:19:26 | 歴史物
 どんな組織でも、人間関係は最も難しい問題でしょう。
 なかでも政治の世界は、魑魅魍魎が蠢き、生き抜くことが非常に難しいようです。
 そして、その世界に身を投じた人間の、何とトップに立ちたがることか。
 「国のために自分に何ができるか」ではなく「どうすれば自分がトップにたてるか」のためだけに行動する…国民から選ばれ、国家を率いる立場にいるはずの人々のはずなのに…
 そんな世界で「国家」のために行動した、ある1人の人間の生涯。
 本人の意図しないまま、時代が定めたかのような人生…
 官僚となり、政治家へ転身、そして遂に総理大臣となり、国家の抱える問題に対して骨身を削っていく…
 しかし、彼の成し得た成果よりも、その独特の言い回しのみを面白おかしく取り上げるばかりの報道…
 私の、主人公に対するイメージも、そんな報道から作り上げられてしまっていたのだ。

 実際に、どんな行動をして、如何なる成果を我が国へもたらしたのか、ということよりも、その特異な言動をあげつらい、無知な国民を扇動して、自分たちの都合の良い者を残そうとするマスコミの報道姿勢は、どうすれば正せるのだろうか。

 ワイドショーばかりではなく、ニュース番組でさえ「現政府の無策」による円高という、今現在、我が国にふりかかっている大問題の報道を後回しにしてまで、隣国のアイドルだか何だかに群がる我が国の女性の姿を報道したりするべきなのか?
 更には、あらゆる政策に対して無策であり「いかに自分がトップに立つか」ということしか考えていない無能な者たちの資質を、なぜ追求しないのか?
 自民党が与党の時代、漢字の読み間違いにさえ騒ぎ立てた報道姿勢が、現与党が次々と起こす問題に対しては寛容で静観しているのは、なぜなのだろうか?

 まあ、問題の根本は、国家のために頑張る政治家がいないことにあるのだが…
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「貞観政要」 呉 兢 著(守屋 洋 訳)徳間書店

2010-08-18 23:25:00 | 歴史物
 国家のトップに立つ者が持つべきもの…腕力…強運…知力…財力…カリスマ性…親分肌…統率力…この名著が挙げる資質は「人徳」である。
 常に自らを厳しく律する人だけが備えられる高貴な資質である「人徳」。
 つまり、無私に至り、自己研鑽に徹する者こそが、人を統治できるのである。
 そしてもう一つ、トップに立つ者が備えるべき大切な条件…それは、優秀なスタッフを揃えることである。
 ただし、実務では優秀でも、イエスマンのスタッフを揃え、自分の意のままに組織を操る者は、間違いなく廃れる。
 様々な分野の専門家や、命を懸けてまで諫言できる忠臣をスタッフに持ち、その意見を取り入れて自分を律し、国家を常に正しい道へ導こうとする人物…そんな人こそが国家のトップたるべきであり、そんなトップが率いる国は栄える…この名著は、そう教えてくれる。

 「拉致問題に取り組みます」等と言うものの、未だにブルーリボンバッジすら付けない…
 我が国を馬鹿にしている隣国に気を遣い、英霊の眠る靖国神社へ参拝せず、我が国を不利な立場に貶めるだけの談話を発表する…
 こんな者が、我が国のトップに立っているなんて…
 今の与党には、こんなトップへ諫言できる人すらいないのか…
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「他人を動かす質問」 内藤 誼人 著 大和書房

2010-08-14 23:15:19 | 専門書
 ページを捲るたびに、なるほど、と思わず納得することがある。
 人の心とは、一般には容易にこちらの思い通りに動かすことが難しいものの、手段・方法によっては、計算通りに操ることが可能であることを知った。
 ここでは、あくまでも当事者個人間でのやりとりとして述べられているが、これは、用い方によって、多くの人々の心理を扇動することも可能な論理なのだ。
 それは、すぐに私にとって現実の体験となった。
 偶然テレビで見た、某役所の記者会見において、ある手法を用いた質問をする記者と、答弁する役所側のやりとり。
 まさに、記者の意図するとおりの役所側の応対…それが全国に放送された…この映像を見た人々は、役所側へどんな印象を抱いたか、おおよそ検討がつく。
 質問すること、あるいは質問されることが、いかに重要な行為であり、どれほどの影響を及ぼすものであるか、考え方をあらためることができた。
 
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「洞爺丸はなぜ沈んだか」 上前 淳一郎 著 文藝春秋

2010-08-09 22:39:33 | ドキュメンタリー
 牙をむいた自然に、人間が翻弄された天災であろうか…
 それとも、判断を誤ったことによる人災であろうか…
 当時の技術や人々の意識は、現在とは異なるため、一概には言えないものの、偶然の出来事も含めて、起こりうる限りの災いと、普段では考えられない分析の誤りが重なって、招いてしまった不幸な事故としか言いようがない…
 過去の事故の記録のはずなのに、目の前に置かれたガラスの向こうで進行する事故を、ただ傍観しているような錯覚に陥り、何もできないことに歯痒さと、むなしさがこみあげる。
 この事故から学ぶべきことは多く、そして重い。
 自然に対する考え、自分の命を守るための判断と行動。
 情報収集や広報活動の重要性。
 そして「決断すべき人」が「決断」することの難しさ、責任の重さ。
 つまり、現在「決断すべき立場」の人はもちろん、将来、その立場に立とうと考えている人は、是非この本を読み、危機管理に努めてはいかがであろうか。
 …犠牲になった人々のご冥福をお祈りします…
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「利休にたずねよ」 山本 兼一 著 PHP研究所

2010-08-03 15:29:04 | 歴史物
 世界の頂点を極めようとした二人の人物
 一人は王道によって、もう一人は覇道によって…
 それぞれが極めようとした世界は異なっていたはずなのに…
 それぞれが、互いを尊敬し、共存できたはずなのに…
 覇道によって世界の頂点を目指す者は、当然のごとく、すべての世界において君臨する野望を抱き、あらゆる者に対して力を誇示し、屈服を強いる…
 一方の王道を歩む者は、ただひたすら己の感性を磨き、己を高めて、その世界を極めようと努めた…その心の奥に、ある思いを秘めて…
 そして遂に、覇道の王が、王道の世界を力ずくで手に入れようとした…
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