読書感想日記

最近読んだ本の感想

『芙蓉の人』  新田次郎 著(文春文庫)

2007-10-21 21:24:45 | 歴史物
 凄まじい夫婦の愛、そして人生…
 彼ら夫婦の時代、男は、家庭を持って子どもを授かった後も、仕事を優先する一方で、女性は、「家」を守り「子ども」の躾や教育をするのが当然だ、という観念に縛られる人生を強いられたのだろう、と想像される。
 だが、この夫婦は、仕事に命を賭ける夫のため、妻も「家」を、そして「子ども」を、まさに犠牲にしてしてまでも、厳しい環境の下で寄り添い助け合う。
 二人をここまでにさせてしまう「国のため」という言葉が、国民の義務ともいうような絶大な力をもち、また、国民も、その義務を忠実に守ることが当然のような時代だったのである。
 そして、いつの時代でも、命懸けの先駆者は民間人であり、お役所は先例のないことには腰が重いうえに、責任を曖昧なものにしてしまうものなのである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『弁護側の証人』 小泉貴美子 著(出版芸術社)

2007-10-21 21:22:04 | 推理物
 ヨメさん選書から
 ヨメさんは、私に「きっと読み返すよ」と言われたので、私は、そんなに面白いのか?と疑いを抱きながら読み始めたものの、やや昔に書かれた洋書の翻訳本を読んでいるような雰囲気を醸し出す文章は、瞬く間に、その世界を私の頭に作り始めた。
 主人公はサクセスストーリーを歩むが、そこで事件が起きて、主人公は犯人を見つけようと…等と書くと、ありきたりの推理物と思われてしまうかもしれない。
 しかし、この世界は、その形を私の頭にすっかり整えて、さあ、いよいよというころで…ふと気がつくと、私は、ヨメさんの予告通り、この本を読み返していました。
 悔しいという思いよりも、お見事です、と頭を垂れてしまいました。
 とても楽しい時間を過ごすことができました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『島津斉彬』 加藤  著(PHP文庫)

2007-10-15 12:22:25 | 歴史物
 何とも、気が抜けてしまった。
 著者が、あとがきで書かれているように、斉彬の人格形成の基を、そして島津藩特有の風土、体質、歴史を読者に理解してもらおうという意図であろうか、英明とされる斉彬の生い立ちから藩主となるまでの話しは、所々に織り交ぜてあるものの、内容の8割以上は、数代にわたる島津藩主の物語りに費やされている。
 確かに、いつの時代でも、英明な者には反発する者がおり、進歩的な者には保守的な者が対抗するものであり、斉彬の場合、家を大事に思う親子の間に確執が生まれてしまい、島津藩の歴史に悲しい出来事を幾つも重ねてしまった、ということを、この本で知ることが出来たのは、私にとってとても有意義だった。
 だが、幕府と島津藩の緊密な人的関係について何度も詳しく書くよりは、系統図を載せた方がわかりやすいし、他にも同じ内容を繰り返してみたり、また余談的なことを詳しく述べていくうちに突然「それはそれとして」と、それまでの話しをあっさり切り捨てられてしまうと、しらけてしまう。 
 私としては、それらのことこそ「それはそれとして」と簡単に流した上で、斉彬の幕政における活躍や、洋学の知識を活用した殖産興業政策などを、内容の中心としてもっと詳しく書いてほしかった。
 だから私は、この本を読んでいる途中、何度も題名を確かめてしまった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『徳川慶喜』 羽生道英 著(PHP文庫)

2007-10-15 12:13:45 | 歴史物
 私があらためて言うまでもなく、徳川幕府最後の将軍である。
 英明で申し分のない人物と誉れ高く、将軍後見職の後、周囲の高い期待から将軍となり、大局的見地からやむなく大政奉還を成し遂げ、江戸城を無血開城して江戸での戦争を回避した人が、なぜ鳥羽伏見の戦いでは適切に指揮せず部下を残して敵前から逃亡したのだろう、と不思議に思っていた。
 これは、時代の流れと言えばそれまでだが、やはり、純粋な味方、優秀な軍師がいなかったために、自らが汚名を着るという結論を出さざるを得なかったことと、水戸藩出身という誇りから、朝廷を奉る精神を忘れられなかったのだ。
 そして、討幕のために手段を選ばない薩摩、長州の人物たちは、もっとよい方法を選べなかったのだろうか、と残念でならず、これらの人のことをもっと知りたいと思っている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『幕末入門』 中村彰彦 著(中央公論社)

2007-10-07 00:37:07 | 歴史物
 ただ単に、年代順に項目を並べていくような、ありがちな参考書の類ではなく、気軽に読める歴史小説のようで、とても、読みやすい本でした。
 この時代における代表的な藩ごとに分けてあり、年代を追って、簡潔ではあるが確実に要点を押さえてあり、スラスラと読むことができました。
 そのおかげで、恥ずかしいくらい、いかに私が何も知らなかったか、をつくづく思い知らされたので、今後も、勉強を続けていきたいと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『臨場』 横山秀夫 著(光文社文庫)

2007-10-07 00:28:08 | 推理物
 ヨメさんから借りたものの、夕食を終えるまでは、読むのを我慢した。
 そして、いよいよ、待望のとき…すでに私は横山さんの世界にいた…
 八つの話しは、私の睡眠時間を奪っていくのだが、そんなことすら気付かない。
 検視という任務に生涯を掛け、誰よりも多くの現場を経験し、頑固とも思われつつも、その仕事ぶりから校長と尊敬される人。誰に対しても自分の仕事に誇りを持ち、着実に犯人を導き出す一方で、同僚や部下思いという人間くさい面も垣間見え、ついしみじみとしてしまう…
 さすがは横山さん!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする