読書感想日記

最近読んだ本の感想

「男装の麗人」 村松 友視 著 恒文社21

2009-09-22 23:01:01 | 歴史物
 主人公は、結局、自身の立場や長所たるべき部分を利用され、時代に翻弄されてしまったのだろうか。
 それとも、それらを最大限に利用して、精一杯生き抜いたと言っていいのだろうか。
 ここで言えるのは、この時代を動かした人物の一人であるということ。
 違う時代に生まれていたら、もっと華やかな、というよりも、より幸せな人生を過ごせたのかもしれません。
 ただ、この本は、過去に、この主人公について書かれた本の解説本のようでもあり、主人公の回顧録のようでもあり、あまり主人公を中心に描いているようには思えず、中途半端な感じを最後まで拭い切れませんでした。
 もしかすると、主人公に関する作品を描いた、自身の祖父について、弁明をしたかっただけなのでしょうか…
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「忘却の河」 福永 武彦 著 新潮文庫

2009-09-19 11:36:57 | 小説
 もう、言葉になりません。
 物語を綴っている男性は、実は私ではないか…と思えるくらい、内面的な部分が怖いくらい似ていて、一行先を読むことにでさえ、ためらいを感じるときもありました。
 この男性ほど強烈な体験による精神的な影響は受けていませんが、私自身、幾度か死に損ない、その度に助けて頂いているにもかかわらず、今までどれほど多くの人を深く傷つけてきてしまったか…と考えてしまう私。
 更には、最も身近にいる家族にさえ、微妙な関係となってしまう心情は、まさに私の気持ちそのままが描かれているようでした。
 男性に対して共感を覚えながら読み進むうちに、私自身を客観的に見られるようになり、そして家族との関係について、いや、生きるということについて、見つめ直すことができたように思います。
 私にとって、忘れられない1冊と出会うことができました。
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「外交の力」 田中 均 著 日本経済新聞出版社

2009-09-13 15:46:56 | ドキュメンタリー
 世界を動かす力の一つに、外交がある。
 この本には、その外交という手段は、いかに難しいか、だからこそ、そこにやり甲斐を見つけ、常に日本の国益のために尽くす人の姿が描かれています。
 やや自画自賛っぽいと言うと失礼かとは思いますが、しかし、それだけ自分の仕事に誇りをもっていなければ、これだけの仕事はできませんし、確かにそれだけの仕事をされていると思います。
 敵を知り己を知れば…という情報収集の重要性や、人脈が広いほど力を何倍にも強くできる、などといった仕事を行う上での基本的な方法を、そして、常に研鑽して自分の能力を高めていくことの大切さを、あらためて感じました。
 以前、英国王室の秘書官について書かれた本を読みましたが、そこは、優秀なスタッフが、その能力を十分に発揮できる環境をつくること、そのためには、トップに立つ者が、それらスタッフを使いこなし、的確に指示や判断を下せる器と能力をもっていること、という条件が満たされていました…
 折しも、テレビでは、城山三郎さんの作品「官僚たちの夏」がドラマ化され、通産省の人々が、日本のために尽力する姿を映していました。
 そんな官僚と言われる人が、ここのところ、なぜか悪のように言われています…
 それらの人々は、日本の国益のために働いているからこそ、トップに対して意見具申をするのではないでしょうか…
 私には、優秀なスタッフを指揮できる器も、知識も、能力もないくせに、思惑や申し合わせだけで、腰掛け的に、各省庁のトップの席に座る者がいるから、官僚は、いや日本は、その力を発揮できないんじゃないか…と思います。
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「デンデラ」 佐藤 友哉 著 新潮社

2009-09-07 16:47:25 | 歴史物
 それは、恐らくそれほど昔ではない日まで、山奥の村で行われてきたであろう、食い扶持減らしのための悲しい風習…
 それを自然に受け入れようとした主人公は、思いもかけない場面に、いや事実に遭遇し、受け入れるべきか否かを迷う。
 大自然は、そこに生きる全ての物に対して、平等に優しく、そして厳しい。
 そこで、生きていく物が生に執着するのは、ごく自然なことだということを、主人公を通してゆっくりと語りかけてくる。 
 人間は、自然の中では小さな存在だが、知恵があり、集団で生きることでお互いを守ることもできるはずなのだが…
 ようやく、事実を素直に認められるようになった途端に、話しはどんどん加速しはじめる。
 ついに私は、主人公と同じように、いや、私こそが生に執着し、息をするのも忘れてしまうくらいに追い立てられ、そして読み終えてしまった。
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「罪と罰」上中下 ドストエフスキー著 江川 卓 訳 岩波文庫

2009-09-05 00:55:27 | 小説
 思想は自由でしょうが、大きな罪とされる行為を冷静に計画し、それを平然と実行できるものだろうか。
 そして、大きな罪を犯してしまった人は、その後一体どうするのだろう。
 正しいことをしたと正当化してしまうのだろうか、それとも良心の呵責に苛まれ続けるのだろうか、又は疑心暗鬼になって破滅していくのだろうか…
 主人公の病的なまでの心理的な葛藤や、彼を支える周囲の人々、対して彼を追いつめようとする者との駆け引き…
 キリスト教について、また、当時のロシアの生活ぶりなどを勉強して、今一度じっくり読めば、より深く味わうことができるのでしょうが、息もつかせぬスリリングな展開も含めて、最期までハラハラしながら読ませて頂きました。
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