読書感想日記

最近読んだ本の感想

「風が強く吹いている」 三浦 しをん 著 新潮社

2009-12-29 15:49:07 | 小説
 読んでいて、とても気持ちのいい作品です。
 同じアパートに住んでいる、運動とは無縁そうな男子学生たちが、実に巧みなまでに謀られて、団体競技に挑むこととなります。
 一見バラバラで滑稽な関係の彼らが、周囲からの温かい声援に包まれつつ、彼らを苦々しく思う者との戦いを通じ、少しずつ同じ目標へ…
 彼らの住処は、私が学生の頃に下宿していた古いアパートに、そして彼らの生活ぶりは、そのアパートに住む貧乏学生たちと過ごした、もう戻らない日々に重なり、私はとても懐かしく、そして切なくなりました…
 彼らの、お世辞にも格好いいとは言えないものの、ひたむきに努力する姿に、私は胸が熱くなり、読み続けることしかできないながらも、応援団の一人に、勝手に加えてもらいました。
 さあ、運命の時が刻みはじめます。
 私は、いつのまにか応援団を抜け出して、無謀にも彼らと一緒に、いや、彼らが私に乗り移ったかのように、競技に挑んでいたのです…時々、息をするのも忘れるくらい…そして、風を感じながら…
 それは、彼らとともに、信頼と思いやりの「絆」を掴む瞬間を、この目で見たいから…
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「福沢諭吉 国を支えて国を頼らず」 北 康利 著 講談社

2009-12-18 21:12:19 | 歴史物
 国民一人一人が独立してこそ、国家も真の独立国家となる。
 そのためには、一人一人が勉強し、努力して力を身につけなければならない。
 それなのに、今の世論を形成する立場にいる人の多くが、自分の意見や権利は声高に主張するだけで、それに見合うだけの努力をしたり、社会人としての義務を果たしているのか、ということは馬鹿にするような言動をするのは、なぜなのか…
 その代表が、独裁者気取りとしか思えない、与党の幹事長だろう。
 遂に世界経済大国となり、日本を嘗めきっている隣国には尻尾を振る一方で、国内では、俺がトップだ、陛下だろうが俺の言うことを聞け、と言わんばかりの暴言。憲法を無視した参政権の問題をはじめ、政策を決める唯一の存在として、いよいよ、彼が本性を露わにし始めている。
 そのことについて、なぜ、マスコミ静観しているのか。
 自民党が与党の時代だったら、ワイドショーでさえもが徹底的に叩いたくせに、なぜ今の与党に対しては、未だに、よくやっている等と出演者にコメントさせるのか…
 まさに、国民が愚民であるがゆえ、亡国の日を自ら手招きしている与党に対して、未だに期待を寄せており、また、与党と対等な政党のない状況にある我が国では、もはや自らの手で助かる希望は少ない…
 あとは、米国等の外圧を頼みとして、しかし最悪の場合は、隣国からの暴力を受け実際に被害を被ってから、ようやく目を覚ますしかないのかもしれません…
 歴史は繰り返す、と言います。
 今の世こそ、諭吉さんのような人物が現れ、国民に進むべき道を諭してくれることを切に望みます。
 または、驕れる平家久しからず、という言葉が現実になる日が来ることを…

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「なぜ君は絶望と闘えたのか 本村洋の3300日」門田 隆将 著 新潮社

2009-12-13 00:38:00 | ドキュメンタリー
 一人でも多くの人よ、この本は是非読むべきです、と叫びたい。
 …40分もあれば、読み終えます。途中で止めることができないからです…
 ここに書かれていることは、決して他人事ではありません。
 だから、目を背けていては、いけません。
 ましてや、知ろうともしない態度は、恥ずべきことだと思います。
 こんなことを書いている私自身、事件について、僅かばかりの知識しかありませんでしたし、あくまでも他人事で、本村さんについても、ただ漠然と可哀想な人だ、としか思っていませんでした。
 しかし、読み進むほどに、私は、事件の悲惨さについて、また、司法の抱えるあまりにも大きな問題について、何も知らなかったことを、そして、家族の存在や幸せについて、あまりに軽く考えていたことを、深く反省させられました。
 それとともに、本村さんを袋小路に追い込んでいく仕組みに対して、ぶつけようのない怒りが、心の中で激しく増殖します。
 なぜ、我が国は「本当に」弱い立場にいる人を守れないのか、と…
 そのなかで、社会にもの申すには社会人たれ、と本村さんのことを身を挺して守り、そして諭した彼の上司の言葉に、私は目を覚ましました。
 更には、指揮権を発動した自民党の二人の総理大臣の姿が、まるで仏様のように思えました。…全く決断力のない現在の総理とは、雲泥以上の違いでしょう…
 私にも、大切な家族がいます。
 十分幸せにしています、と胸を張って言うことはできませんが、一日一日を大切にして、私のちっぽけな命をかけてでも家族を守ろうと、あらためて誓いました。
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「家族の言い訳」 森 浩美 著 双葉社

2009-12-06 15:41:53 | 小説
 果たして、家族とは、どんな関係なのでしょう。
 最も身近な存在なのだから、何も飾ることなく、お互いに言いたいことを言い、それぞれが思うがままにやりたいことをして…そんな、責任や義務を果たすことなく、ただ一方的に自由を求めることができる関係だ、という考えは、子どもにしか許されない甘えでしょう。
 大人になって家族をもつと、大切で身近な存在だからこそ、互いに気を遣い、言葉を選び、譲るべきことは譲り、支え合うことで成り立つ関係である、ということがわかってきます。
 また、素直に悩みを相談できなかったり、心配を掛けまいと余計に頑張ってしまう一方で、お付き合いや仕事を優先するために、犠牲にしてしまいがち…
 だから、心配を掛けたり約束を破りがちな家族にこそ、本当は謝罪や感謝の気持ちを伝えなければ、きっと後悔しますよ…でも人生は、やり直すこともできるんですよ…と、先日読ませて頂いた「こちらの事情」とともに、登場する人々を通して著者は、あくまでも優しく語っています。
 ま、こんな風に、長々と感想を述べている私こそ、未だに、思いやりが足らないために夫にも父にもなりきれず、また、まともに親孝行の一つもできていないと後悔ばかりしているのですから、今すぐ思いを伝えなければ!とは思うのですが、やっぱり恥ずかしいやら、面倒くさいやら…
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