読書感想日記

最近読んだ本の感想

「銃」 中村 文則 著 新潮社

2009-11-30 11:57:02 | 小説
 ごく普通に生きている人が、人の命を奪えるような強い力を手に入れたなら…
 世界を征服する独裁者になりたい等と、大きな野望を抱く人に限らず、自分にもそんな力があったら…という夢を抱いたことのある人は、少なくないでしょう。
 だから、自分の意思で手に入れた訳ではなくとも、そんな強い力を手に入れることができたならば「力を試してみたい」という、野心ともいうべき思いを抱くまでには、それほど時間は必要ないでしょう。
 そして、その力が無限のものでないならば、さらに野心が駆り立てられてしまうのも、必然のことなのかもしれません。
 何度も同じ表現が繰り返されているためか、そんな野心と、普通の人であり続けようとする理性とで、心が揺れる主人公の姿に、やや距離を置いてしまい、あまり共感を持てなかったはずでしたが、いつしか、狂気の域へ近づいていく彼に圧倒され、私は彼の仲間に、いや、彼自身になってしまっていました。
万一、私がそんな力を手に入れることができたなら…さあ、どうしようか…
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「棟梁」 小川 三夫 著 文藝春秋

2009-11-26 18:01:01 | 随筆
 「人を育てる」には、「物事を教える」だけでは成り立たず、教わる者自身が「自ら学ぼう」と意識して努力しないと、幾ら周りの者が教えたとしても、その人は育ちません。つまり、それが「技術を盗む」と言われることなのでしょう。
 小川さんは、職人さんの世界に限らない、王道とも言うべき幾つもの名言を、優しく語りかけてきます。
 最近、そのへんに溢れている下手なハウツー本等を数十冊読むよりも、小川さんの話しを聞く方が、ためになると思います。
 もっともっと、小川さんのお話を聞きたいです。
 ただ、実践できる自信はありませんが…
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「太陽の塔」 森見 登美彦 著 新潮社

2009-11-24 00:40:40 | 小説
 読み始めて直ぐに、私の鋭敏なレーダーは、この物語の独特な雰囲気を察知したので、臨戦態勢を整えて身構えるよう、緊急指令が私の身体を駆けめぐりました。
 しかし…その指令が徹底される前に、私の心は、既にこの雰囲気の虜となっていたのです。
 みな人間臭く、羨ましいくらい自分だけの世界に生き、その生き様がくらくら目眩を起こしそうなくらいに眩しかったからでしょうか。
 彼らの仲間になってみたい…と思いつつも、人並みの幸せを感じたい、とも願っている私では、日々、崇高な戦いに身を削っている彼らからしてみれば、はびこる悪霊に踊らされているだけの存在でしかないのでしょう…
 でも、私は、もっと彼らとともに、深みにはまりたい…私の心は、もう森見さんの描く世界に溺れています。
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「高丘親王航海記」 澁澤 龍彦 著 文藝春秋

2009-11-17 23:57:04 | 歴史物
 単なる不思議な冒険物語というだけには収まらない、不思議なお話でした。
 崇高な目的のために旅をする親王と、彼を警護する優秀な者たち…
予期せぬ出来事、奇異な生き物との出会い…
 親王は、それら全てを自然に受け入れて、旅を続けます。
 私には、そのいずれも、親王が自ら招いたようにしか思えませんでしたが…
 しかし、私は、親王の心を理解していなかったことを思い知らされ、胸が詰まりました。
 そうです。親王は、純真な心で旅をしていただけなのです…
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「ポピュリズムに背を向けて」 北 康利 著 講談社

2009-11-05 22:49:10 | 歴史物
 序章から著者は、読者へ、いや国民に対して、我が国の近代史を正しく認識し、民主主義国家の国民となることで、我が国も真の民主主義国家になれる、と切実に訴えています。
 もう、ここで私の心は見事に掴まれました。
 そうです。まさに今、読むべき本だと思います。
 題名のとおり、地元での選挙活動はもとより、政策について安易に国民に迎合することなく、多方面の人材や情報網を駆使した上で、自分に対するどのような評価をも臆することなく、ワンマン的な印象は拭いきれないものの、日本の国益を優先に考えて決断し、行動する総理。
 読み進むほど、ため息が止まりませんでした。
 そうです。外交の能力のない国は凋落する、とは、まさに今の我が国ではないでしょうか…
 この本の総理は、敗戦国として占領政策をねじ込まれ、極めて厳しい立場でありながらも、運もよかったのでしょうが、相手を正確に見極めることができたからこそ我が国を救ってくれる味方を得た上に、どこまでも我が国に誇りを持って行動しています。
 一方で、今の総理はどうか…
 国民の合意の上に私が決める等と繰り返すばかりで、マニュフェストに縛られ、実務を担う官僚を蔑み、失礼ながら素人同然の大臣たちに仕事を任せ、私見で国際公約をするかと思えば、待ったなしの懸案事項には結論を出せない始末…ましてや、なぜか最も心強い味方から離れて、武装に邁進して日本を馬鹿にしている国に頭を下げんばかりに擦り寄る態度…
 さあ総理、まずは予算の財源が足りないのなら、議員の無駄な諸手当を見直して削減すれば…いや、マニュフェストにあった、議員数の削減を直ちに立法して可決すればよろしいのでは…
 話しが大分それてしまいましたが、私は、先輩方が体を張って掴み取り、築いてきた我が国の歴史を、あらためて勉強したいと思いました。
 今後、同じように考える人が、一人でも増えることを祈ります。
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