読書感想日記

最近読んだ本の感想

『遠野物語、山の人生』 柳田 国男 著 岩波文庫

2008-02-27 23:40:04 | 歴史物
 昔の山村には、不思議な、いや、切ない話しが何と多いのでしょう。
 ドライブしていて、山村を抜ける高速道路を通っていると、その脇に、高速道路が通る前に使われていたであろう、廃道になっているらしい山の斜面に沿っている道を見かけると、初めて見た道であるはずなのに、なぜか懐かく、通ってみたくなるのは、幼い日にそんな道を通ったことがあるのか、それとも前世とやらの記憶なのか…
 そんなことはともかくとして、昔の山村では、女性や子供は一人でいてはいけない、神隠しに遭うぞ…一人で山や沼に近づいてはいけない、恐ろしい物が現れるぞ…などと女性や子供の単独行動を戒めるために、恐怖心を植え付けようとしていたのでしょうが、伝わっている話のすべてが作り話ではなく、その中には本当にあった出来事も含まれているような気がするのは、私だけでしょうか…
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『最終戦争論、戦争史大観』 石原 完爾 著 中公文庫

2008-02-27 23:36:25 | 歴史物
 以前から、石原完爾という人が、どんな人で、何を考えていたのだろう…と気になっていました。
 それは、私にとって石原完爾という人が、日本の近代戦争史の思想面においてとても重要な鍵を握る人物であったと思えたからでした。
 陸軍のエリートの中のエリート、作戦立案部署の中枢にいて、力量のない上司には遠慮せず、現場に出たら率先して行動する、そんな人の戦争に対する考えとは、どんなものか…
 西洋における戦争史の中でも限られた分野しか研究していないと謙遜しているが、その研究結果に、勉強家を現すように様々な分野にわたる豊富な知識、情勢の正確な判断と、信仰する教義を織り交ぜ、更には彼の洞察力、いや勝負の鋭い勘を加えて彼が導き出した「最終戦争」が、正に現実のものとなってしまう。
 軍部の中枢にも、近い将来の最終戦争を正確に予測した人がいたのに、結局その未来を変えられず、日本は泥沼の中へ…
 

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『蝦蟇の油』 黒澤 明 著 岩波書店

2008-02-07 00:11:34 | 随筆
 黒澤監督の自伝。説教でも指南でもないものの、今までの中途半端な自分の人生を深く反省させられ、読んでよかったと思う。
 私は、本を読んでいないどころか、映画もほとんど見ていないので、黒沢監督について特に感心を持ったことがなく、お名前やその作品名くらいしか知らなかった。
 しかし、ある新聞のコラムでこの本の一部が紹介され、興味を持ったのだった。
 それは、「苦しい状況での撮影は、早く終えたいものだが、そういうときにこそ3倍の時間を掛けて撮影する」というような言葉でした。
 その言葉の意味を、また、何がそう思わせるのかを確かめたかったのです。
 映画監督の自伝なのだから、さぞかし映画のことばかり難しい言葉で書いてあるのだろう、と思いながら表紙をめくり、ページをめくった。
 すると、意外にも監督自身の幼少からのことが、ごく普通の文章で書かれているのでした。
 そしてその文章は、私が黒澤明という人と本の中で一緒に同じ時代を生きているように、私を一瞬のうちに引き込んでしまいました。
 そう、この本の中で監督自身が述べているように、助監督時代に多くの脚本を書き上げている人なのだから、文章がとても巧みなのは当然のことだったのです。
 自分は変わるつもりが無くとも、時間というものは、周囲の人や、ましてや大切な故郷までも変えてしまうものであること、厳しい鍛錬を積むことで、どんな状況にも動じない姿勢が保てること、視野を幅広くどん欲にもつことで、考え方や人間自身に幅ができること、どんな相手や批評にも迎合せず、正しいと思うことを通す姿勢など、私にとって学ぶことがたくさんあった。
 そして、私が気になっていたあの言葉の背景は、すぐに妥協してしまう私の目を覚まし、明日からの私を変えてしまうほどに思えるほどのものでした。
 時間があれば、黒沢監督の作品を見てみようかとも思い始めています。
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